だいすき!絵本       

初瀬 恵美

新年あけまして おめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


『ともだちひきとりや』
作:内田麟太郎  
絵:降矢なな
出版社:偕成社

 皆さん、保育園からの年賀状届きましたでしょうか?近年、保育園の年賀状は、絵本の絵を題材に、主任が作ってきました。今年の干支は「いのしし」。「いのしし」が出てくる絵本って、意外と少ないんですよね。有名なところでは『てぶくろ』(ウクライナ民話、絵:エウケーニー・M・ラチョフ、訳:うちだりさこ、福音館書店)に、でてくる「きばもちいのしし」が、あります。そして他にはないかと考えたところ『ともだち ひきとりや』(作:内田麟太郎、絵:降矢なな、偕成社)のイノシシが思い浮かびました。
 実は、『ともだち ひきとりや』は、2003年のからたちフェスティバルで「からたち一座」が演じたこともあるお話です。この芝居を見たことがある人は、どれくらいいらっしゃるのでしょうか?芝居を見た方は、絵本を読んでなくても、お話は覚えていらっしゃるかもしれませんね。

 まず、この絵本の登場人物を紹介しましょう。オオカミ、キツネ、イノシシ、イタチ、そしてミミズクの爺さんです。もともと、オオカミとキツネが主人公の『ともだちや』がベースにあり、シリーズ化され、現在8シリーズあります。その中で5番目に出されたのがこの『ともだち ひきとりや』です。ミミズクの爺さんはいつも二人を見守っています。

 物語の中では、「オオカミとキツネ」、「イノシシとイタチ」が仲良しグループという設定です。オオカミとキツネは対等な関係で結ばれた友達です。しかし、イノシシとイタチは、イノシシのほうが威張りんぼうで親分子分の関係を望んでいますが、イタチは対等な関係を望んでいます。そして、その価値観の違いから、とうとう大喧嘩をするのです。それをみていたオオカミとキツネは仲を取り持つために、「ともだちひきとりや」を始めるのです。なぜ、友達を「引き取る」ことが、仲を取り持つ事になると思いますか?喧嘩をしているときに、相手の事が憎らしくて、顔も見たくない!という心境になったことはありませんか?そんな心境のとき、嫌いな相手と離れ、冷却期間を持たせることで、相手の大切さを知ったり、自分の高慢な態度を反省したりすることができることがあるからです。そんなことに気付かせてくれるお話です。

 オオカミとキツネは、前作までに、喧嘩して一人ぼっちの寂しさを味わったり、1人の時間に喧嘩の原因を探ったり、反省したりしています。そして、二人で遊んでいる時間の大切さや、楽しさを再確認しています。そんな二人だからこそ、イノシシとイタチを放っておくことができなかったのかなと、思わせる絵本でした。これは、動物の世界に例えているだけで、子どもたちの間でもよく見られることだと思います。また、私たちも体験してきたことではないでしょうか。絵も文も明るく書かれていますが、心の底に響くものを持っている絵本だと思います。また、「ともだち」をテーマにした、子どもたちにも大人気の絵本シリーズです。保育園には6作目までしかありませんが、お時間のあるときに、ぜひ読んでみてください。




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