だいすき!絵本
初瀬 恵美
『11ぴきのねこどろんこ』
作・絵:馬場のぼる
出版社:こぐま社
先日の集中豪雨は、すさまじいものがありましたね。自然の恐ろしさを感じました。しかし、一旦雨が上がると、園庭のあちこちに、(泥)みずたまりが・・・。子どもたちにとっては、楽しい遊び場と化しました。
さて、そんなどろんこ大好きな子どもたちも、大好きな一冊『11ぴきのねこ どろんこ』(作・絵:馬場のぼる こぐま社)を今月はご紹介します。
『11ぴきのねこ』は、全6巻のシリーズがあります。毎回、とらねこ大将とねこたちがいろいろなものに出会い、愉快な物語を繰り広げます。今回のお話では、恐竜の『ジャブ』に出会います。『ジャブ』は、からたちの子どもたちと一緒で、どろんこ遊びが大好きです。ある日、崖の下に落ちたところを、11ぴきのねこが助けます。そのお礼に、11ぴきを背中に乗せ、散歩に連れて行きます。しかし、向かった先は、泥沼。ジャブの「はあい、どろぬまー」という明るいかけ声とは反対に、ねこたちはびっくり仰天!とらねこ大将が「プハー、どろぬま やめー」と号令をかけて、陸地にあがるところは、子どもたちが大好きな場面です。ジャブとねこたちの掛け合いが絶妙なことや、泥んこが苦手なねこたちより、泥んこ好きだから、少し上位に立った気分になるからでしょうね。
ねこたちは、こんなふうに、泥んこにされたり、保存食用の魚の干物をジャブにとられたりして、腹を立て、ジャブをこらしめにかかります。寝ているジャブのしっぽにロープを結び、起き上がると崖の上から石が落ちるようにして・・・。その罠にひっかかり、ジャブは、森の奥へ逃げました。さすがにこの場面は、「ねこたちひどいね」「ジャブかわいそう」という声も聞かれます。しかし、この絵本のいいところは、意地悪だけでは、終わらないこと。それから、ぱったりと、姿を現さなくなるという間を与え、じんわり込み上げてくる反省やさみしさも見事に織り込んでいるのです。移り行く季節の中でのねこたちのなんとも言えない表情や哀愁感も絵から伝わってきます。そして1年後、突然ジャブが表れます。何と子どもを連れて!再会はとても嬉しいものでした。そして、お約束通り、再び、ジャブはねこたちを背中に乗せて、「はあい、どろぬまー」と入っていきました。しかし、もうねこたちは、どろんこを嫌がりません。最後は「ウッホッホー。みんな、みんな、うれしい、うれしい」で終わります。
この絵本を読み終わると、とても爽快な気分になります。泥んこ好きの点は、ジャブの方が子どもたちに近いようですが、実は、私は、ねこたちの方が子どもにうーんと近い気がします。優しかったり、欲張りだったり、ずるがしこかったり、ちょっと間がぬけていたり、ものすごくエネルギッシュだったり・・・。だからこそ、このシリーズは人気が高いのでしょうね。このシリーズだけでなく、ユーモアあふれる故)馬場のぼるさんの作品が私は大好きです。
またいつか、別の絵本をご紹介したいと思います。ところで余談ですが、馬場のぼるさんは、手塚治虫さんと親交があり、ご本人が手塚漫画に登場するシーンもあるそうです。その漫画をご存知の方がいらっしゃいましたら、教えてください(^^)