だいすき!絵本

初瀬 めぐみ



作・絵:たかどの ほうこ
出版社:福音館書店


 新緑がとても、きれいな季節になりましたね。晴れている日は、心も晴れやかになり、子どもたちの笑顔もますます輝いて見えます。

 今月は、心がはずむ季節にぴったりの一冊『まあちゃんのまほう』(作・絵:たかどの ほうこ、福音館書店)を紹介したいと思います。

 まあちゃんは、まほうの本を読んでいました。その本には、「とても むずかしいので、たいてい しっぱいします」と書いてありました。まあちゃんは、お母さんで試してみました。するとどうでしょう。お母さんがタヌキになったのです。まあちゃんは、心配になり、もとに戻すおまじないをとなえ、お母さんに戻しました。すると、ちゃんとお母さんに戻り安心しました。でも、もとにもどったお母さんはちょっと変。ふだんは、「ダメ」というようなことを、進んで「しよ!」とさそいます。結局そのお母さんはタヌキでした。だから、最後には本当のお母さんにしかられてしまいます。絵本は、こんなストーリーです。

 私は、初めてこの絵本を読んだとき、「あれ?いつの間にお母さんがタヌキに変わったんだろう。」と、とても不思議な感じになりました。そこで、最初にもどって見直しました。するとちゃんと絵に答えが描かれていました。他にも見直すたびに発見がいろいろある絵本で、そのおもしろさに、すぐにとりつかれてしまいました。

 また、絵の他にも、言葉の言いまわしや、やり取り、そして展開がとてもおもしろく、子どもたちも大好きです。例えば、まほうのおまじないをかけるときは、目をつぶり、頭の上に手をのせて、おまじないをとなえます。そして「れろれろ ぷぷんぷん ぺぺんぽん おかあさん なれなれ なんかの どうぶつになーれ らりるれ れろれろの ぽん!」ととなえます。「ぽん」の言葉をいったと同時にページをめくると「ぱっ」とタヌキがあらわれます。そして、びっくりして目をまんまるにしている、まあちゃんも、目に飛び込んできます。はじめて絵本を読んでもらう子は、まあちゃんと同じように目をまるくしている子もいて、とてもおもしろいです。それだけ、絵本の世界に入り込んでいるということですよね。

 それから、お母さんに化けたタヌキとまあちゃんのかけあいを1つ紹介すると、こんな風です。部屋中におもちゃを出して遊んでいるとき、まあちゃんが「あたし、こんなに ちらかしちゃいけないんだと おもってた!」と言います。するとお母さんに化けたタヌキは「そんなこと いったって たのしいもん!」といいます。こんなやりとりが、いくつもでてきます。そのとき、きまって子どもたちは「ダメねー。」と笑っていいます。子どもたちもまあちゃんと同じで「ダメ=しかられる」と思っているけど、楽しそうでしてみたいなというのが、本音のようです。最後に本物のお母さんが出てきてしかられる場面になると「やっぱりね。」という言葉がきかれたりします。でも、あわてて逃げてゆくタヌキ、そして、遠くまで行ってから手をふるタヌキは憎めません。また、タヌキを見送るおかあさんとまあちゃんは、ちゃんと手をつないでいて、おかあさんもまあちゃんのことを許してくれていることが分かります。

 子どもに限らず大人も、ふだん出来ないようなことを、絵本の中のタヌキとまあちゃんがしてくれるので、読み終わったあとは、すっきりして、なんだか楽しい気分にさせてくれる1冊のようです。




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