だいすき!絵本

初瀬恵美



『あかちゃんのむかしむかし にんじんさんがあかいわけ』
文:松谷みよ子 絵:ひらやまえいぞう
 童心社


 今月は、私にとって、とても思い出深く、かつ運命的な出会いをした一冊、『あかちゃんのむかしむかし にんじんさんがあかいわけ』(文:松谷みよ子 絵:ひらやまえいぞう 童心社)を紹介します。

 まずは、私の思い出話から…私は、2〜3歳頃まで、祖母と一緒に住んでいました。その後、歩いて5分くらいのところに祖母は移り住み、離れて暮らすようになりました。離れて暮らしても、私は祖母のことが大好きだったので、よく遊びに行っていました。遊びに行ったついでにお風呂に入れてもらっていたのですが、お風呂に入りながら、いろんな昔話をよくしてくれたものです。中でも、人参や大根やごぼうがお風呂に入る昔話が大好きでした。

 長女を出産したとき、お祝いにきてくれた祖母に、「小さいとき、お風呂でよく話してくれた昔話きかせて。人参や大根やごぼうがでてくるお話。」と頼みました。でも、祖母は思い出すことができませんでした。私は、絶対に今も覚えていると確信していたので、すごくがっかりしました。そして、もう2度とあの話が聞けないのかと思うと、心にぽっかり穴があいたような気がしました。
 
 しかし、それから1年後、娘の1歳の誕生日プレゼントを選びにお店に行ったとき、運命的にもこの絵本にであったのです。『にんじんさんがあかいわけ』このタイトルを見た瞬間ビーンとくるものがあり、手にとりながら、「あのお話でありますように…」と祈りながら絵本を開けてみました。すると、まさしくあのお話だったのです。すごく嬉しかったです。そして、絵本を読んでみて、松谷みよ子さんの文の、やわらかであたたかなところは、まるで、おばあちゃんの昔話を聞いているように心にしみました。また、ひらやまえいぞうさんの絵も文と同じくらい、やわらかで、あたたかなものでした。この絵本に出会ったとき、心にぽっかりあいた穴がふさがり、娘にもこのお話を伝えられる喜びをとても嬉しく感じました。
 
 それから、もう1年後、私は河内に来ました。そして、保育園用にもこの絵本を購入しました。今では、子どもたちにすっかり定番の絵本ですが,私にとっては、とても思い出深い1冊の絵本です。昔話を語り継げる人が少なくなった今、こうして絵本をたよりに、昔話を伝えてゆくのもいいものだと思いませんか?

 松谷みよ子さんの『あかちゃんのむかしむかし』のシリーズは、他にも『きつねとたぬきのぱけくらべ』『ふくろうのそめものや』『おとうふさんとこんにゃくさん』等々あります。どれも、なつかしかったり、思わず笑ってしまったり、何ともいえないユーモアがあります。お時間がありましたら、ぜひ読んでみてください。




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