だいすき!絵本

初瀬 めぐみ



『おてだまのたね』
秋田・向陽幼稚園の実践記録より
 絵:織茂恭子 
かがくのとも傑作集
福音館書店


 いつもは、事務仕事ばかりしている私ですが、今年の夏は、人手不足から、午前中は学童の担当をしていました。ご存知の方も多いと思いますが、夏期学童は、保育園の2階を利用していました。2階は教材室も兼ねているので、いろいろなものが身近にあります。その中に「おてだま」もありました。ある日、誰かがお手玉をし始めたのをきっかけに、お手玉の輪が広がり、気づいたときには、その日の出席者全員の17名で、「大お手玉大会」をしていました。そんな、楽しかった夏の日を、思い出しながら、今月の絵本を選びました。

 今月の絵本は『おてだまのたね』(秋田・向陽幼稚園の実践記録より 絵:織茂恭子 かがくのとも傑作集) です。

 秋のある日、おひさま幼稚園に小さな段ボール箱が届きました。開けてみると、中には88個のお手玉が入っていました。それは、近くにすむおばあさんが元気に米寿の誕生日を迎えることができたお祝いに贈ってくれたものでした。子どもたちは、冬の間中、先生に教えてもらいながら、いろんなお手玉遊びをします。春になったあるひ、そのなかの一つがほどけました。すると、子どもたちは、「うわあ、おてだまの たねがおちてきたよ」「これを まいたら おてだまが なるの?」と先生に質問します。そこで、実際にまいて育てるのです。できたのは、「あずき」だったのですが、育つまでに、子どもたちはお手玉の花や、お手玉がなっている様子を想像し、絵を描いて成長を楽しみにしています。しかし、実際に成長していく中で、想像していた花と違ったり、枯れたさやからでてきたのは、もとの「おてだまのたね」で少しがっかりします。でも先生は子どもたちの期待を裏切りません。何と「たべれる おてだま」を作るのです。そう、それは「おはぎ」です。そして、そのおはぎを、お手玉をくださったおばあちゃんに、「おすそわけ」しにいくのです。

 この絵本の先生は、とても素敵だと思いませんか。その素敵な要素として、@いろいろな、お手玉の遊び方を知っていること、A中からあずきがでてきたときに、「おてだまのたね」という子どもの言葉を尊重し一緒にそだてること、Bあずきを収穫できるまでに育てられること、Cあずきの特性を生かし、「食べれるおてだま」にしたことがあげられます。そしてふと身近な人たちで考えると、多くのおばあちゃん(もしかしておじいちゃんも)も子の素敵な先生の要素をたくさん持っていると思いませんか?今月は敬老の日もあるので、絵本を通してぜひ、「おてだま」に花を咲かせてみてはいかがでしょうか。



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