だいすき!絵本
 

初瀬めぐみ


『かいじゅうたちのいるところ』
作・絵:モーリス・センダック
訳:じんぐうてるお
出版社:冨山房


 新緑が美しい季節になりましたね。ゴールデンウィークが過ぎると、やってくるのが「母の日」。日頃家事、育児、仕事におわれ、本当にお疲れ様です。この日ばかりは、いろいろな煩わしさから、開放されたいものですよね。でも、それが無理なのが現実・・・。「母の日」であろうと、時には、子どものいたずらに本気で怒ってしまうことだってあると思います。そんなときにおすすめなのが、『かいじゅうたちのいるところ』です。(2〜3歳くらいからが目安です。)読むと、子どもも大人もスッキリしますよ。

 この絵本にでてくる男の子マックスは、ある晩、おおかみのぬいぐるみをきて大暴れを始めます。その結果、お母さんに夕ご飯抜きで、寝室にほうりこまれます。すると、不思議なことがどんどん起こり、なんと「かいじゅうたちのいるところ」についてしまいます。初めて読む親子にとっては、ここが一番ドキドキし、緊張が走るところです。気の優しいお子さんなら、マックスが心配で絵本の怪獣をバンバン叩いて、追い返そうとしたり、怪獣が怖くて泣いてしまうかもしれません。

 しかし、ご安心して先にお進みください。マックスはあることをして、怪獣たちの王様になります。そして、踊ったり、いろいろなことをして遊びます。

 この絵本の最も楽しいところは、この怪獣たちと踊ったりするクライマックスのシーンです。見開き3場面に渡り、なんと一切文字を入れていないのです。文字があることに慣れている私たちは、初めて読むとき「あれ?文章はどこに書いてあるんだろう」と探してしまいがちですが、ない箇所があるのです。文字をなくし、怪獣たちのいる世界を場面いっぱいに描くことで、文字より多くのものを伝えてくれています。ここは、ぜひお子さんと一緒に、怪獣たちのいる世界を楽しんで下さい。

 この場面を楽しんだ後は、いよいよ最終章へと向かいます。マックスは王様なのに、寂しくなり、「やさしい だれかさん」のところへ帰りたくなるのです。そして、そのとき、遠い遠い世界の向こうから、おいしい匂いが流れてきて、その匂いをかいで、王様をやめることを決心するのです。そして、自分の部屋へと戻ってきました。するとそこには、「ちゃんと夕ご飯がおいてあって、まだほかほかとあたたかかった」のです。マックスはすごく子どもらしくてかわいいですよね。また、お母さんとけんかをしていたはずなのに「やさしい だれかさん」とするところが、とても素敵だなと思いました。マックスのお母さんも怒っていてもちゃんと夕ご飯を用意しているところがいいですよね。親子って、怒ったり、けんかもするけど、本当はお互い大好きで、歩み寄れる関係であることを伝えてくれているように思います。   

 最後に、最終場面の寝起きのようなマックスを見て、夢だったんだろうなと思った方、この絵本の最初から「月」に着目して見ていって下さい。すると、不思議なことに「夢だけど、ゆめじゃなかったの・・・かな」と錯覚に陥るかもしれません。保育園では幼児クラスにあります。興味を持たれた方は、ぜひお子さんと一緒に読まれてみて下さい。 




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