だいすき!えほん  

 初瀬 恵美


月刊かがくのとも8月号
『ぼく、あぶらぜみ』
ぶん:得田之久
絵:たかはしきよし
福音館書店

    
 8月も終わり、朝晩少しづつ涼しくなってきましたね。しかし、もう秋になりつつあるのに、日中は、まだまだ残暑も厳しいですね。今月は、少し季節はずれですが、初夏に泣き始めるあぶらぜみの本を紹介します。 

 この本は今年、福音館書店の『月刊 かがくのとも 8月号』として出版されました。おそらく、ほとんどの人が「あぶらぜみってしってる?」ときくと「うん。しってるよ。」と答えると思います。しかし、この絵本を読んでみると、私たちはあぶらぜみの何を知っていたのだろう・・・?せみの一生ってこんなふうなんだー!!とある種の感激を覚えます。それもそのはず。科学絵本をつくるとき、実際に観察、体験するのが〈かがくのとも〉流、だそうで、本当にそれがあらわれている一冊だと思います。

 例えば、皆さんは、セミの幼虫をみたことがありますか?カブトムシの幼虫はよく見かけるのですが、セミの幼虫って、私は想像がつきませんでした。実は幼虫は地下1メートルくらいのところにいるそうです。だから、想像がつかなくて、当たり前だったのです。編集部の方も苦労して土を掘ってみたそうですが、15センチ以下は根が多くてスコップで掘り進むのは困難。半日格闘の末あきらめたそうです。そして、近所の梨農家の方に相談をしたところ、「11月に梨の木の植え替えをするからきてごらん。いっぱい見られるよ。」と誘われやっと、幼虫に出会えたそうです。このような苦労からできた一冊だけあり、絵もとてもセミの特徴をとらえたものとなっています。

 

 それは、子どもたちと絵本をみているといろいろ発見して教えてくれることからもよく分かります。例えば、最後の方のページに左の挿絵が登場します。つくしぐみのみつきちゃん、としひさくん、ひでとくんは、それを見て「アッ!コレオスダヨ。ダッテホラ、コレガアルデショ。」というのです。(○で囲んである箇所。ここは「腹べん」別名「鳴き袋」というそうです)この右側のページには「ぼくたち せみは、おすしか なかないんだよ。」という文があり、まさにオスが鳴き、メスを呼んでいるページなのです。文を読む前に絵だけをみて、分かるなんて手抜きをせずにセミが描かれている証拠ですよね。挿絵もさることながら、それに気づいたこの3人の子ども達も凄いと思いませんか?きっと、本物のセミを何匹も捕まえ、よく観察していた経験がもとになっているのではないかと思います。

 このように、物知りの子どもがみても、ちゃんと、オス・メスの違いが分かるように描かれていたり、普段は見ることのなかなかできない土の中の幼虫時代や、羽化の様子もきれいに描かれている見ごたえのある一冊です。

 これをみると、来年のあぶらぜみの鳴く時期がとても楽しみになると思いますよ。ぜひ一度、保育園で、お子さんと一緒にごらんになってみてください。




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