究極の泥だんご

初瀬基樹

 先日、私(基樹)が次回のたんぽぽクラブで行なう「泥だんご作り」のために、泥だんごの見本を作っていると、「なんしよっと?」と子ども達がのぞきにきました。作りはじめのただの泥だんごのときには、あまり興味を示さなかった子ども達も、泥だんごが磨かれてだんだん光り始めてくると「何それ?」「どがんやってつくると?」「俺も作りたい!」「私も!」と次々に集まってきました。その日、泥だんごを作り始めた子ども達は、給食の時間になってもなかなかやめようとせず、お昼寝やおやつ、帰りの会等の合間のほんのわずかな時間を利用してまで泥だんご作りに熱中し、お迎えの時になっても「まだ続ける」とビニール袋に入れて持ち帰ったほどでした。一月ほど前の新聞に泥だんごの記事が掲載されていたのを見て、「これは、ぜひ子ども達に伝えたい」と思っていたのでちょうど良い機会となりました。

 その新聞の記事というのは、京都教育大学の助教授(加用文男氏)が、幼児の遊びを調べるために、ある保育園を訪れた際、その園の保育士が作った「光る泥だんご」を見て感動し、以来、その保育所に通い詰め、どうやったらそんな泥だんごが作れるのかを学びながら研究し、どうしてそのように光り輝くのかを科学的にも調査して、そのメカニズムを解明したという記事でした。そうした研究の末に、その助教授が作成したという「大宇宙の神秘」と名づけられた泥だんごの写真も一緒に掲載されていたのですが、確かに光っていました。「これが本当に泥だんご?」と疑いたくなるぐらい、しかも、ただ光っているだけでなく、顔が映るぐらいにツルツルのピカピカだったのです。(新聞に掲載されていた写真では、そこまではっきりとは見えませんでしたが、ホームページ上の画像ではカラーではっきり写っています。)これには私も驚きました。

また、その助教授(加用氏)はインターネット上で「日本泥だんご学会(ANDS)」なるものを発足させているとのことなので、さっそく、インターネットで閲覧してみると、泥だんごの作り方やいくつかの作品(泥だんご)の画像が掲載されていました。それを見て、私も園の土で「光る泥だんご作り」に挑戦してみたのです。

 小さい頃(保育士として働くようになってからも)、私もよく泥だんごを作っていましたが、私の場合、固さを競うものが中心で、だんご同士ぶつけ合って割れなかった方が勝ち、というようなルールで遊んでいました。ですから、この光を競う(?)泥だんご作りに関しては、実は私もまだ初心者なのです。夕方、お迎えにいらしたお母さん方が何人か、「なつかしい。わたしもよく作っていたんですよ」と声をかけてくださり、当時の作り方などを話してくださいました。ここでは詳しく述べませんが、光る泥だんごを作るには、相当な忍耐と集中力、そして手先の器用さ(丁寧さ)、熟練した技術(少々大げさかもしれませんが)が要求されるのです。あせって作ったばっかりにひび割れを起こしたり、表面がでこぼこになったり・・・。興味を持って一緒に作りはじめた子ども達の中にも、あせって失敗してしまう子が何人かいました。でも、やはりそれも経験です。失敗を重ねてこそ、知恵や工夫が生まれるのです。

 私も、1日かけて初めての作品を作った(まだ未完成ですが)ときから、「ただの土と水だけで、こんなにも美しい玉が出来上がるのか」と泥だんご作りの不思議さと面白さにすっかり魅了されてしまいました。大人でも充分楽しめるのですから、子どもたちが夢中になるはずです。以前のからたち便りで「砂、土、泥、水などは可塑性があって、子どもの創造力、手先の器用さ、その他にも様々な能力を高めていく素晴らしい素材である。」というようなことをご紹介したことがありましたが、はっきり言って、私自身、土、泥、水が、ここまでスゴイとは思っていませんでした。

 また、苦労して、丹念に作り上げた泥だんごには、何とも言えない愛着が湧き、ずっと大切に保管しておきたい気持ちになります。これは、今の子ども達にぜひとも経験させたいことです。こうした遊び文化は、これからの子ども達にも、ぜひ残していってあげたい。いや、私達には残していく義務がある!そんな気持ちで現在も「大宇宙の神秘」を超えるような究極の泥だんごを作るべく、日夜励んでいるところです。たかが泥だんご、されど泥だんご。「子どもの遊び」と馬鹿にせず、よかったら、子どもといっしょに泥だんごを作ってみませんか?きっと夢中になりますよ。

※ パソコンをお持ちでインターネットが出来る環境にある方、ぜひ一度ご覧になってみてください。
 URL(http://www2.ocn.ne.jp/~tutimizu/




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