どんな子どもに育って欲しい?

初瀬 基樹

 私が子どもの頃、某ハム会社のCMで「わんぱくでもいい。たくましく育って欲しい。」というのが、ありました。当時も、教育熱心な家庭は多かったと思うのですが、今思うと、「勉強は出来たほうがいいけど、世の中にはもっと大切なものがあるんだよ。」というメッセージみたいなものを、周りの大人からはもちろん、テレビやマンガなどのメディアや、色んなところから、たくさん感じていたように思います。勉強よりも大切なものというのは、もちろん、「心」であり、「仲間を大切にする」とか、「人に優しくする」とか、「世のため、人のため」とか、「貧しくても幸せはすぐそばにある」とか、そういったことです。ところが、いつの間にか、世の中の風潮は「自分がよければ、それでいい。」「だまされるやつが馬鹿なんだ」「金持ち=偉い人(幸せ)」「勝ち組になるためには、人を蹴落としてでものし上がれ、そのためには小さなうちから勉強、勉強・・・」と全体的に自己中心的になってきている気がしませんか?

 「神なき教育は、知恵ある悪魔を作る。」(ガリレオ・ガリレイ)という言葉がありますが、今の世の中、本当に知恵のある悪魔がわんさといるような気がしてなりません。世界でもトップクラスの学力を誇る日本なのに、新聞、ニュースは暗い話題ばかり・・・。子どもの頃から、大人になるまで、何のために教育を受けてきたのかと疑問に思いませんか?

 多様な価値観が渦巻く今の世の中で、これからの子どもたちに、どんな子どもに育っていって欲しいのかを今一度考えてみたいと思います。


「ピグマリオン効果」について
 ピグマリオン効果というのは、1960年代にアメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールによって実験されたもので「人間は期待された通りに成果を出す傾向がある」というものです。

 その実験というのは、ある小学校で、実験者が特別な検査を行なったように見せかけて、その学級の担任の先生に、「これから成績が伸びてくる子どもたちはこの子たちです。」とクラスの名簿から、ただ適当に選んで伝えたのだそうです。その結果、適当に選ばれただけの子どもたちが、その後、本当に成績が伸びたというのです。つまり、担任の先生は「この子達はこれから成績が伸びてくる」と期待して、その子達に接してきたことで、その子どもたちもその期待に応えたのだろうということが推測されるのです。
 
 これらは、おそらく逆もありえるでしょう。「どうせうちの子はだめよ。できるわけがない。」「どうしてあなたはこうなの?」というメッセージを与え続けたら・・・そこで、「なにくそ!」と一念発起してがんばれる子なんて、ほんの一握りいるかいないかで、大半の子どもは、本当は出来る力を持っていたとしても、その力を発揮することが出来なくなってしまうでしょう。今の日本の子どもたちは、世界でも群を抜いて「自尊感情(自分を大切に思う。自分のことが好き)が低い」と言われています。それは決して子どもたちが悪いのではなく、大人たちがそういう子どもたちにしてしまっているのです。「自分のことを好きになりなさい。」「自分を大切にしなさい。」「自信を持ちなさい。」なんてことを100万回言ったところで、そのようにはなりません。周りの人から愛されることで、自分のことも好きになり、周りの人から大切にされて、自分のことを大切に思うようになり、周りの人の励ましがあって、自信を持てるようになるのです。
 
 やはり、子育ての基本は「愛」であり、「心」であってほしいと思います。
 

 
  批判ばかりで受けて育った子は 非難ばかりします。
  敵意にみちた中で育った子は だれとでも戦います。
  ひやかしを受けて育った子は はにかみ屋になります。
  ねたみを受けて育った子は いつも悪いことをしているような気持ちになります。
  心が寛大な人の中で育った子は がまん強くなります。
  はげましを受けて育った子は 自信を持ちます。
  ほめられる中で育った子は いつも感謝することを知ります。
  公明正大な中で育った子は 正義心を持ちます。
  思いやりのある中で育った子は 信仰心を持ちます。
  人に認めてもらえる中で育った子は 自分を大事にします。
  仲間の愛の中で育った子は 世界に愛をみつけます。

          作・ドロシー・ロー・ノルト/訳・吉永 宏
             アメリカインディアンの教えより





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