常設の「冒険遊び場」が欲しい!

初瀬基樹


 今年も8月28日(土)、29日(日)と江津湖で「冒険遊び場"おもしろ村"」が開催されました。これは基樹が所属している「IPAくまもと」という団体が毎年開催するもので、今年で18回目を迎えました。台風16号の接近に伴い、最終日は予定を切り上げて早めに終了しましたが、夏休み最後の土日、たくさんの親子で賑わいました。
 
IPAとは? 
 IPAは、1959年制定の国連「児童の権利宣言」にある「遊ぶ権利」を守り、豊かな社会になると失われがちな子どもの遊びの機会を取り戻すために1961年に組織された国際機関です。
 現在、世界の約50ヶ国に幅広い会員を擁し、国連の経済社会理事会やユネスコの諮問機関になっています。1990年、世界大会が東京で開催されました。尚、現在の正式名称は  International Play Association: Promoting the Child's Right to Play


 有名なところでは、東京世田谷区にある「羽根木プレーパーク」など、全国各地に「冒険遊び場(プレーパーク)」と呼ばれる遊び場があります。IPAくまもとが主催する「おもしろ村」は、年に1回だけですが、長嶺プレーパークをはじめとして、ここ数年で熊本にも常設のプレーパークがいくつか出来始めました。市による「プレーリーダー育成講座」というようなものも開催されたりして、今、冒険遊び場作りは追い風に乗っていると思われます。

 「最近の子は外で遊ばなくなった。」「友達と遊ぶといってもビデオや、ゲームばっかりで・・・」と言われるように久しくなりますが、こうした子ども時代を過ごした子どもたちが、大きくなり、近年いろんな問題を起こすようになっていると考えられます。これらの原因は言うまでもなく、一昔前のように、外で、しかも豊かな自然の中で、たくさんの友達と思いっきり遊ぶということがなくなり、それによって、さまざまな直接体験、冒険の場も減り、人間関係すらうまく作れなくなってきたということが考えられます。このままではいけないと、ようやく今、こうした冒険遊び場が注目され始めたようです。

「冒険遊び場(プレーパーク)って何?普通の遊び場のどこが違うの?」

 普通の公園などの遊び場と違い、冒険遊び場(プレーパーク)には一切の禁止事項がありません。今や、日本の公園はどこに行っても、「キャッチボール禁止、サッカー禁止、焚き火禁止、木登り禁止、○○禁止・・・」と禁止事項だらけです。安全重視、万が一の責任問題から、そうならざるを得ないのかもしれませんが、冒険遊び場(プレーパーク)は違います。「じゃあ、遊んでいて、もしケガでもしたらいったい誰が責任をとるんだ?」・・・それは、すべてにおいて「自分」なのです。ですから、冒険遊び場(プレーパーク)のモットーは「自分の責任で自由に遊ぶ」なのです。責任は取るもの、取らされるものではなく、「負う」ものなのです。「する」か、「しない」かは、自分で決める。自分で決めたことだから、たとえケガをしても人のせいにはしない。「本当の自由には、責任が伴うもの」という考えが根底にあるのです。また、そうしないと遊び本来のおもしろさや、子どもたちの自由な発想を保障できないのです。

 また、遊び場での「危険」を考えるとき、危険には「リスク」と「ハザード」という2種類の危険があると考えます。リスク(予知できる危険)のある遊びは、時に子どもたちの冒険心をあおり、遊びを通して身体能力、危機管理能力を高めることが出来るものとして、できるだけ目に見える形で残しておきたいものです。しかし、ハザード(予知できない危険)は、可能な限り取り除いておかなければなりません。そうはいっても、現実的にはハザードを恐れるあまり、リスクまで取り除かれてしまい、面白みのない遊び場が多いのも事実です。あれもダメ、これもダメと禁止事項ばかりが多いと遊びの面白みがなくなってしまうばかりか、子ども時代に育てておきたい危機回避能力も育ちません。近頃の子は、転んだときに手が出ずに顔から転ぶなどというのは顕著な例かもしれませんね。
 

 こうした冒険遊び場は、北欧のデンマークで始まりました。子どもの遊び場作りをしていた専門家が、子どもの遊びを観察しているうちに、子どもたちは大人が作った、きちんと整備されたきれいな遊び場よりも、危ないからと禁止されているような廃材置き場や資材置き場での方がはるかに生き生きと遊んでいることを発見し、廃材を集めただけの遊び場を作りました。この遊び場に感銘を受けた人たちによって、冒険遊び場はイギリス、スウェーデン、さらには欧州全体へと広がっていったのだそうです。
 
 そして、70年代の後半に日本でもそうした遊び場が紹介され、79年国際児童年の年に世田谷区にある公園の一角を利用して「羽根木プレーパーク」が誕生しました。そこでは、実際に火を使ってままごとをしてもいいし、水道の水をつかっての派手な泥んこ遊びも自由、小刀やのこぎり、さらにはナタや斧までもが自由に使えるように置いてあり、廃材置き場から木材を運んできて自分たちで小屋を作ったり、高さ3メートルぐらいの屋根の上からジャンプしたりと本当にダイナミックに遊びが展開されているそうです。
ここには「プレーリーダー」と呼ばれる大人が常駐していますが、この人たちは「見張り役」ではなく、むしろ、子どもたちの遊び心を刺激するような、いわば「仕掛け人」のような役であり、同時に「人と人をつなぐこと」や子どもの立場に立って、子どもたちの足りない言葉を補って社会に「代弁すること」、「緊急事態に対応する」などがこのプレーリーダーの役目なのだそうです。
 
 わが園でも、学童保育をするようになって、今の子どもたちには本当に遊ぶ時間や場所がないことを実感しています。たんぽぽクラブなどを通して、火を使う体験や、さまざまな野外体験の場を考えてはいますが、やはり、もっともっと地域の方々を巻き込んで、子どもたちのための遊び場作りができればいいなと考えています。





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