新しい保育に向けて(補足)
初瀬基樹
新年度になり、環境や保育の形態が変わって1ヶ月になります。先日のからたち会総会で資料と共に新しい保育についてのお話を致しましたが、なかなか話だけでは充分なご理解は難しいかと思い、もう少し具体的に子どもたちの様子をお伝えしようと思います。
新年度が始まってすぐの子どもたちは、環境が変わっての不安というよりも、大きくなった喜びとクラス単位の動きが減ったためか、「解放感」でいっぱいという感じでした。おもちゃの使い方も乱雑になり、好き勝手に使っては放りっぱなし、また、昨年度までは、ほとんどつくし組(5歳児)にしかさせていなかったモースケの散歩や木工などにもひばり組(3歳児)が「やりたい!やりたい!」と押し寄せて来たりしていました。そうした意欲は大変うれしく、大事にしたいのですが、正直なところ、特に3歳児に関しては、「やりたい気持ち」ばかりが先行しすぎていて、自分の体力、能力が伴っていないことも多々あるため、危険ではないかと心配でもありました。現に、朝のモースケの散歩では途中から、保育者の声を無視して自分たちだけで先に走っていってしまうこともあり、その都度「約束が守れないのなら一緒に散歩にはいけないよ。」と厳しく叱らなければならないような状況で、やはり3歳児も一緒にというのは無理なのだろうかと思ったこともありました。
新年度になってからは、とにかく保育者同士の話し合いをよくするようにしています。子どもの姿を伝え合うこと、子どもへの対応、配慮をみんなで考えるためです。せっかくコーナーを作っても、そのコーナーで遊んで欲しいおもちゃや道具をあちこちに持ち出して、そのままほったらかしになってしまっていたり、ゴミが落ちていても知らん顔だったり、「あとでまたする」というのを口実に片付けから逃げたり、といった状態に「これではいけない」と話し合った末、まず「子どもの動線(子どもが動く道すじ)」を見直し、それに合った環境構成をすることにしました。これを使いたいときに、わざわざあっちまで取りに行かなければならないとか、片付けに行くのが面倒くさい、ということがないように、取り出しやすく、片付けやすいような、おもちゃや道具の配置を考え、「ここは○○を置くところ」というのがわかりやすいように絵などを貼っておくようにしました。
これまで園庭の端から端まで道具の持ち運びがされていた外の砂場道具なども、砂場のそばに道具小屋を作ったことで、遊びたい時にすぐに使えて、片付けも楽になりました。また、細かいことですが、室内の製作のコーナーなどでも、はさみやペンなどの道具を机の奥に置いておくと、終わってから次の遊びに移ろうとするときに片付けを忘れてしまいがちなので、コーナーの出口付近に道具置き場を設置し、使った道具は片付けてから、他のところへ行くということが自然に出来るようにしました。
ブロックなどでも、作りかけのものは、そのコーナーに置いてある空きロッカーに飾っておいて良いことにし、「使っていないブロックは片付けてからコーナーを出ること」とか、「ままごとの道具は、よほどのことがない限り、ままごとコーナーから持ち出さないこと」、特に料理の具にしているウッドビーズなどは、小さい子が口に入れたりするといけないので、「落ちていたら見つけた人が拾う」といった約束を決めました。そして、何より、「子どもに言う前に、まず私たち保育士自身が気をつけよう!」ということを何度も確認し合い、徹底することにしました。大人が気を使わなくなると、子どももだんだん気にしなくなっていってしまうからです。「ゴミが落ちていたら拾う」「おもちゃ、道具の使い方などは、使う前に丁寧に子どもたちに教える」「机や椅子などがゆがんでいたらきれいに並べる」「壊れたものがあったら気づいた人が修理するなり、別の場所にどけておくなりする」などなど、常識といえば常識ですが、まずはここからしっかりやっていこうということにしました。
その甲斐あってか、少しずつですが、子どもたちの姿も変わってきました。おもちゃや道具の使い方にも気をつけるようになってきましたし、子どもたち同士で「片付けてから行かなんばい。」と声を掛け合っていたりする姿も見られるようになってきました。
また、年長さんたちも新しい生活に慣れてきて、下の子たちを見る余裕が生まれてきたのでしょう。モースケの散歩のときなどにも、自分たちから小さい子と手をつないであげ、「走っていったらあぶなかけんね。」と声をかけたり、小さい子が転んでしまったときでも保育者より先にその子のところへかけて行き「だいじょうぶね?いたかったろ?」といたわってあげたりする姿などが、よく見られるようになってきました。
まだまだ始まったばかりですが、少なくとも私たちの園が目指している「自然な形での異年齢交流」や「一人ひとりが大切にされる家庭的な雰囲気を持った園に」といった目標に近づいているように感じています。