相手の態度の読み取り=表情×0.55+声×0.38+ことば×0.07

初瀬基樹

「なに、これ?」と思われる方も多いことでしょう。これは、人が相手の態度(気持ち)を読み取ろうとする時に、何を手がかりに相手の気持ちを読み取るかを式で表したものなのだそうです。

 具体的にいいますと、例えば、子どもが「○○していい?」と尋ねた時にお母さんが「(あなたの)好きにしなさい」と言ったとします。(上の公式よりも、下の図をご覧頂いた方が分かりやすいかと思います。)

このとき子どもは、その「好きにしなさい」という「ことば」だけではなく、同時にお母さんの「表情」や「声」からもお母さんの真意を読み取ろうとするのです。図を見て頂くと分かるように「ことば」の影響力はわずか7%にしか過ぎません。「好きにしなさい」といわれて、言葉だけで判断するなら、自分の好きなようにすれば良いわけですが、子どもは「言葉」よりも「表情」「声」を気にするのです。いくら「好きにしていい」と言われてもお母さんの顔や声が怒っていれば、子どもは「自分の好きにしていい」とは思えないのです。昔から「目は口ほどにモノを言う」と言いますよね。お母さんの顔や声の調子(高い、低い、速い、遅い、大きい、小さい・・・など)から、「本当に自分の好きにしていい」のか、あるいは、「お母さんは本当は僕にそれをしてほしくない」と思っているんだということなどを判断するのです。(実際にするかしないかは、また別の問題ですが)

 時には人を傷つけてしまうこともあるといわれる「ことば」ですが、「ことば」自体の影響力よりも、その「ことば」を発した時の「表情」や「声」の影響の方が大きいのです。これは私たちも気を付けなくてはいけないと思いました。

 よく、子どもに「走ったら転ぶよ」とか「そんな持ち方してると落とすよ」などと事前に注意していたにもかかわらず、子どもは転んだり、落としたりしてしまいますよね。そんなとき思わず「だから言ったでしょう!」と怒ってしまいますが、そんなときは、わずか7%の「ことば」しか子どもには届いていなかったのだといえます。「言った」だけで「伝えた」ことにはなっていなかったわけです。まあ、これぐらいのことであれば、繰り返し経験しながら、子ども達が自ら、状況を判断していくようになっていくので、あまり問題はないと思いますが、これがもし、緊急の場合、例えば、道を歩いていて、子どもが車道に飛び出そうとした時や、お店などに行って展示してある非常に高価なガラス製品などをさわろうとしたら、どんな言い方をするか想像してみてください。それこそ、真剣な表情でしっかりした口調になりますよね?「これはどうしても聞いてもらわないと困る」「これだけは分かってほしい」というようなことを伝える時には自然と言葉だけでなく、表情、声にも心が表れてくるのです。

 「この子は言うことを聞かない、言っても聞かない」と嘆く前に、自分の「言い方(伝え方)」をもう一度振り返ってみる必要がありそうです。本当に相手に伝えたいことは、「ことば」だけでなく、「表情」や「声」もとても重要なのです。心をこめて自分の気持ちを相手に伝えるということをもっともっと大切にしていきたいものですね。

余談になるかもしれませんが、近年、携帯電話、パソコン等の進歩、普及に伴い、便利になった分、直接会って顔を向き合わせての会話(表情、声、言葉)は減り、携帯電話による会話(声と言葉)、さらにはメールのやりとりでの会話(言葉のみ)と、人と人とのコミュニケーション手段が変化してきました。それによって、私たち自身も相手の気持ちを読み取る能力が鈍ってきているのかもしれません。せめて子ども達とは心の通う会話をたくさんしていきたいと思います。




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