ノーテレビウィークにチャレンジしてみませんか?

初瀬基樹

 これまでも何度か、この『からたち』を通じてテレビやビデオ、ゲーム、パソコン等のメディアが子どもたちに及ぼしている害についてお知らせしてきましたが、今年度は私たちの園が属している西部保育士会でも「子どもとメディア」を研修テーマにし、同会が中心となって熊本市保育園連盟加盟園に対し、「子どもの実態調査」を行っています。(先日、当園においても実施し、各御家庭にご協力頂いたものです。)このアンケートは、今回このノーテレビウィークを呼びかけている福岡のNPO「子どもとメディア」が以前に実施したものをお借りし、こちらで独自項目を加えたりしたものです。昨年、このNPO「子どもとメディア」の代表理事をされている清川輝基さん(NHK放送文化研究所)の著書『人間になれない子どもたち』(竢o版)を読み、実際に講演を聞いて、「これは早いうちになんとかしなければ」という思いがあったのですが(その内容については、今年の2月、3月号の『からたちだより』、もしくは園のホームページ「副主任のページ」をご覧頂けると幸いです)、同じく「子どもとメディア」の代表理事をされている山田真理子先生(九州大谷短期大学教授)が8月に出版されたばかりの著書『子ども・心・育ち 機微を生きる』(エイデル研究所)を読み、思いを新たにしました。

 長崎で起きた小学生の同級生殺害という痛ましい事件にも、加害者の少女が「バトルロワイヤルの大ファンだった」とか、「インターネット上での書き込みが原因でトラブルになった」とか、メディアが大きく関係していました。メディアへの低年齢からの長時間接触や、内容に関する規定の低さなど、いろんな問題や危険性が叫ばれながら、国内ではこれといって解決策は見出せないままのようです。

 数年前に「ポケモンショック」という事件があったのを覚えておられるでしょうか?テレビでポケモンを見ていた子ども達が各地で一斉に気分が悪くなったりして病院に運ばれました。原因は強い光刺激によるものだったらしいのですが、その事件以来、最近のアニメでは「部屋を明るくして、テレビから出来るだけ離れて見ましょう。」といった注意がテロップで流れるようになりましたよね。これは、裏を返せば、「テレビを暗い部屋で見たり、近くで見たりしていると体に害を及ぼすぐらい危険な光刺激が出ていますよ。」ということです。10〜15秒置きに強い光刺激や音刺激を入れると子どもは簡単に中毒症状になり、目を離せなくなるという話もあるらしいのです。確かに、私たちが子どもの頃に見ていた一昔前のアニメ等に比べると、スピード感や音、光、あらゆる刺激が強くなっていることを感じますよね。『世界名作劇場』や『日本昔話』のようなのんびり、ほのぼのしたものは少なくなり、リアルな暴力、殺人の場面等が、子ども向けの番組にも増えているように思います。

 日本小児科医会からも「子どもとメディアに対する提言」というものが出され、注意が呼びかけられていますが、近年起きている様々な問題、事件の背後には、必ずといっていいほど、直接的、あるいは間接的であれ、テレビ、ビデオ、ゲーム、パソコンなどのメディアが関係しています。すでに手遅れに近い状態なのかもしれませんが、このままではますます悲惨なことになりかねません。今からでもメディアとの付き合い方を真剣に考えるべきではないでしょうか。

 さて、テレビやビデオ等の害は数え上げればきりがないほどですが、かといって、これからの時代、子どもたちからそれらを切り離してしまうことは不可能ですし、良質な番組や必要不可欠な機能などがあるのも確かです。私自身、テレビ、ビデオ、ゲーム、パソコン等、メディアそのものが「悪」だとは思っていませんし、「無くしてしまえばいい」とも思ってはいません。しかし、それらとの付き合いかた、特に子どもたちに見せたり、使わせたりする際には細心の注意を払う必要があると感じています。

 では、実際どうすればいいのかといえば、テレビやビデオを見るのも見ないも「主体は自分にある」ということを再認識することです。「本当に見たいものだけを見て、見ないときは消す。」・・・そんなの当たり前!と思われるかもしれませんが、朝から時計代わりにテレビをつけたり、なんとなく静かだと寂しいからとついつけてしまったり、テレビやビデオがついていれば子どもが静かだから・・・などなど、自分でも意外と気付かないうちに中毒になっているものです。まずは、それに気付くのがこの「ノーテレビウィーク」へのチャレンジなのです。1週間、テレビ、ビデオ、ゲーム、パソコン等に触れないで過ごし、次の1週間は2時間まで、選んだ番組を見てもいいという週を過ごすのです。(この取り組みは「子どもが中心」なので、子どものいない時間帯や、子どもが寝た後でなら、大人がメディアに接触しても構わないそうです。)
 
 こうした運動に参加した方々の体験談などを聞くと、ほとんどが「やってよかった」と答えるそうです。「家族の会話が増えた。」「いっしょに遊ぶ時間が増えた。」「食事の時間が早く済む。」「時間がゆっくり感じられる。」「お手伝いをよくするようになった。」「じっくり遊べるようになった。」などなど・・・。チャレンジするのに不安なのは大人の方で、やってみたら子どもは平気だったというのもよく聞く話です。「うちの子落ち着きがなくて・・・」「もう少し何にでもじっくり集中してほしいんだけど・・・」「食事に時間がかかって困るわ・・・」「全然言うことを聞いてくれなくて・・・」「もう少しお手伝いもして欲しいなあ・・・」「夜が遅くて、朝起きられないのよね・・・」「家族の会話がなくて寂しい・・・」などなど、なにか思い当たることがあれば、ぜひ、このノーテレビウィークにチャレンジしてみませんか?
 
 ただし、テレビ、ビデオのない生活を「罰」として与えるのではなく、「一回そんな生活を体験してみよう!」といったチャレンジ精神でやってみることが大事なのだそうです。

 詳しい内容は、NPO「子どもとメディア」のホームページ(http://www5d.biglobe.ne.jp/~k-media/)等をご覧下さい。





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