運動会

初瀬基樹

 今年も無事に運動会が終わりました。変な話ですが、わが園の行事、特に運動会で天気の心配をしなくて済んだのは、ここ数年でも珍しいことでした。天気にも恵まれ、子ども達だけでなく、たくさんのお家の方々に来て頂いて楽しい一日を過ごすことが出来ました。役員さんをはじめ、クラス役員さんやたくさんの方々のご協力に心から感謝しています。本当にありがとうございました。

 さて、子ども達、今年も取り組みの時から様々なドラマを生み、当日もたくさんの感動を与えてくれました。ハンディを抱えた子どもたちも本当に一生懸命、そして何より楽しんで参加している様子がうかがえ、心からうれしく思いました。昨年まで一人で立って歩くことさえ困難だった烈史(つよし)くんが、今年は観客の声援に応え、ニコニコして手を振りながら一人でコースを走る姿に、体だけでなく、心も大きく成長していることを実感し、目頭が熱くなりました。
また、今年のつくし組も「さすが年長児」と感心することばかりでした。跳び箱、組体操、リレーなどに取り組む表情は「真剣」そのもので、うらやましいぐらいにカッコよく、さらには自分たちの競技だけでなく、他のクラスのお手伝いなども意欲的に取り組み、ワニや海賊になって雰囲気を盛り上げてくれたり、司会等も堂々とこなしたりする姿は本当に頼もしく感じました。

 運動会が終わって数日たった今も、子ども達は興奮冷めやらぬ様子で、朝から「とびばこしよ〜!」「リレーしよ〜!」と走り回っています。わが園の運動会に対する思いや取り組みについては、プログラムと一緒に配布したお便りなどで詳しくお伝えしておりますので繰り返しませんが、本当に、子ども達がいきいきと取り組み、運動会が終わってからも、こうして子ども達自ら取り組む姿が続いているというのは、この運動会への取り組みが成功しているに他ならないと、とてもうれしく思います。

 こうした取り組みが、子ども達の「生きる力」につながっていってくれることを望んでいます。世界でも群を抜いて「自己肯定感(自分のことを認める、自分のことが好き)」が低いとされる日本の子ども達。競争社会の中で絶えず他の人と比べられ、周囲からの過度な期待をかけられ、がんばってもがんばっても、そのがんばりを認められることよりも、次なる課題を与えられることの方が多い社会。自分の存在を無意味に感じ、人とのかかわりを避け、引きこもってしまう人が増えるのも分かる気がします。せめてこの乳幼児期は、生きていること(毎日)が楽しい、自分のことを大切に思い、自分のことが大好きと思えるような生活を保障してあげたいものです。そうした思いを今のうちにたっぷりと蓄えておいて欲しい。そんな時期です。
 そういう点では、運動的な取り組みは「はじめは出来なかったけど、練習したら上手にできるようになった。」という上達の過程が、子ども自身の感覚として分かりやすく、出来た時の達成感、成就感も感じやすいのではないかと思います。「出来た喜び(達成感)」は「自信」へとつながり、次なる課題に向かって「自ら挑戦する力」となります。これはこれからの人生の中で「生きる力」の原点になるものではないでしょうか。

 ただし、こうした取り組みに於いて、私達まわりの大人が注意しなくてはならないことは、結果が「出来た、出来なかった」ではなく、その「出来かた(できるようになっていく過程)」がどうだったのかということです。
まず、「やりたい!」という意欲を子ども自身がどれだけ持てるか、そして、「出来るようになりたいけど、失敗したらどうしよう」と心の中で葛藤しながらも「やってみよう」と思う自分を選ぶことが出来るか。また、「自分だけが出来ればそれでよし」ではなく、「他の友だちが、どうすれば出来るようになるか」を教えることができるか、反対に自分が出来なくても、出来るようになった友だちのことをしっかり認め、よい友達関係を築きながら、友達のアドバイスを素直に聞けるか、などに着目していく必要があります。
単なる個人の技能の習得だけなら、各種のスポーツ教室やスポーツ指導の先生を雇って行った方が効果はあがるでしょう。しかし、保育園で取り組む際には、このように個人的な視点、集団的な視点の両面から見る必要があり、さらに運動面だけでなく、精神面に目を向ける必要があるのです。そのためには継続的に子ども達とかかわり、子どものことをよく知っている担任がかかわるべきです。あくまで日常の保育の延長線にあるべきなのです。もちろん、園のいろんな大人の人がかかわり、助言しながら進めることもありますが、当然そこには技能の修得だけを目標とするのではなく、先に述べたような、その子自身の意欲をどう引き出すかとか、子どもが葛藤する時間も大切にし、さらには友達関係を含めた精神面、「心の育ち」を大切にしていかなくてはならないのです。

 少し、話が難しくなってしまいましたが、今年も、子ども達やおうちの方々の表情を見る限り、本当に楽しく、心に残る良い運動会だったと思います。
 おうちの方々のご意見、ご感想など、ぜひお聞かせください。




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