ウルトラマンクロノス 第3話【繋がる謎】
登場人物紹介
★★高浪 亜季★田町 香子★相良 俊夫
STORY
バレー部の新任コーチの件は、全く問題とならなかった。
クロノスのFDSのお蔭で、コーチの存在すら、学園内の人々の記憶から消されていたからです。
しかし、機械の記憶までは消し去る事はできないので、何らかの操作が必要でした。
”香子”は、PC関係に詳しい為、学園内のホストコンピューターと堰需市のコンピューターに不正アクセスを繰り返し、情報を操作しました。
”亜季”は、学園内の証拠物件を根こそぎ集め、焼却します。
「なんだか、完全犯罪を目論んだ、犯罪者のようね・・・」
”亜季”の呟きに”香子”も胸が痛まない訳では、無かったのです。
「コーチの情報を検索していて、気づいたんだけど、彼は、あの晩に病院に運ばれているわよ」
「あの晩?病院?」
訝しげな”亜季”の表情に”香子”は、話し続けます。
「あなたが郊外で、初めて事件に遭遇した夜の事よ!行った病院は、堰需シモン病院・・・」
「あの変な・・・」
堰需シモン病院は、総合病院だが、色々な噂があったのです。
「そう、そのシモン病院なのよ。でも一日で退院しているの・・・」
資料を読みながら話す”香子”に”亜季”が尋ねます。
「何故入院したの?」
「え〜っと・・・外傷性の熱傷第V度ですって・・・えっ?」「えっ?」
二人ともその資料の記述に驚きを隠せませんでした。
熱傷第V度で、次の日退院は、考えられません。
「下手すると、真っ黒けよ」「ありえない」
無言になり、お互いを見詰め合う二人。
「なんか怪しいよね・・・」「絶対に怪しい・・・」「一度調べる必要が、絶対あるわ!」
二人は、堰需シモン病院を調べる事にしたのです。

バレー部の練習は,体育館が謎の火事で破損しており、休みになっていました。
それに試験日一週間前という時期も重なり、好都合でした。
でも学生たちの多くは、勉強するわけでもなく、自由な時間を楽しんでいたのです。
”亜季”も”香子”も、それぞれの友達から、遊びの誘いを受けたのですが、都合をでっちあげて、別々に堰需シモン病院へ向いました。
その病院は街外れにあり、交通の便も悪く、人の往来も少なく感じられます。
「大きい病院ねぇ」「ほんと・・・でも人少なくない?」少し、心配顔な”香子”。
「総合病院だから、誰が入っても大丈夫よ。お見舞いに来た振りをして、病室に行きましょう!」
”香子”の心配を”亜季”は、意に介せず、病院へ入ってゆきます。
「度胸があるんだか・・・無神経なんだか・・・」苦笑した”香子”も同じ様に玄関をくぐるのでした。
待合室にある病室の案内図を見る二人。
お見舞いの花束も用意して、病院に潜入しようとする二人。
その姿を静かに見つめる目がありましたが、二人は、その事に気づきません。
二人は、病室よりも地下施設に興味を覚えていました。
「怪しいよね・・・」「そうね・・・隠すなら地下施設でしょう」
二人の会話を盗み聞いていた”謎の男”は、苦笑していました。
「あの子たちが、被験者か・・・」
”謎の男”は、一体何者なのか?
”亜季”と”香子”は、地下へ降りてゆきます。
途中何度か、病院の職員と出会いますが、その場の機転でなんとか切り抜けます。
そして最下層部へ降り立つ二人。
すでにそこは、病院の雰囲気ではありませんでした。
地下に広がっていたのは、研究施設でした。
白衣で忙しく動き回る職員たち。
各ドアの前には、銃を持った警備員が立つその様子は、禍々しいものを感じます。
「やばい!やばいよ!!」「これは、何なの?」
病院だと思っていた施設は、何か秘密の研究施設だったのです。
「これ以上は、危なくない?」「でも、これだけじゃ、なんだか判らないわ」
二人は、次の行動を議論するのに夢中で、警戒感が薄れていました。
突然、複数の男たちに囲まれ拘束される二人。
「えっ?」「え?」
そして”謎の男”に口元を押さえつけられ、二人とも気を失ってしまうのでした・・・

「気がついたようだね」
目が覚めたとき、最初に目に入ったのが、サングラスの男性でした。
年齢は30歳前後、長身の男は、二人に紅茶を差し出します。
とっさに体を動かそうとした”亜季”でしたが、椅子に体が固定されていて、微動だにしません。
「おっと!そんなに怖い顔で睨まないでくれるかな?おとなしく話をしてくれるんなら、外してあげるよ」
相手の物言いが気に入らなかった”亜季”は、強引に引き剥がそうとします。
クロノスのパワーが、それを助けるくれました。
メキメキと音が鳴り、拘束部分が弾け飛びます。
「おやおや・・・力持ちのお嬢さんでしたね」
一気に男に駆け寄り、手刀や蹴りを繰り出す”亜季”。
しかし、その攻撃は、あっさりとかわされてしまいます。
室内の物音で、目を覚ます”香子”。
彼女も状況が理解できませんでしたが、拘束を解こうと必死になります。
「コードNo000、堰需学園高等学校在学、深淵の爆発に巻き込まれるも無傷で存在・・・」
攻撃を受け流しながら”亜季”自身の事を語りかける謎の男。
「C反応があるも、人間的生体は、変化せず。要観察が必要・・・」
いくらクロノスのパワーがあっても、格闘技の経験の無い彼女の攻撃は、相手にかすりもしません。
ついには、疲れで、攻撃が止まってしまいます。
「なによ・・・コードNo000って?」
言い放った”亜季”に当身を入れ、椅子に再度座らせる謎の男。
「グホ!」「”亜季”大丈夫?!”亜季”!」心配する”香子”
「手荒なマネはしたくなかったのですが、こうでもしないと、こちらが危ないのでね」
疲労した”亜季”は、しばらくこの拘束装置から抜け出る事はできません。
「あなたは、いったい誰なの?」問いかける”香子”に男が答えます。
「おとなしく話を聞いてくれる?」
すでに相手の策に嵌った二人に、彼の言葉に逆らえるだけの技はなかったのです。
二人は、目を合わせて頷き返します。
その姿を見て、男は拘束を解除するのでした。
「悪かったね、二人とも。まずは、自己紹介をしよう。私の名前は、相良 俊夫」
「MAITの所属で、君らの護衛かな・・・?」
「護衛・・・?」「?」二人は、訝しげです。
「なんで?護衛ってどういう意味よ?」
”亜季”の問いかけに”相良”は、説明するのでした。
堰需シモン病院は、MAITの秘密基地であり、対C用に稼動している実戦部隊でした。
MAITとは、Mystery Aberrance Investigation teamの略で、超常現象を研究する科学技術局の管理下にある組織でした。
現在は、対C局として活動していたのです。
「対C局ってなによ?」”亜季”の問いかけに”相良”は、問い直します。
「君は、我々に協力してくれるのかい?」
「それは、話を聞いてからよ!」拘束されて痛んだ手を擦りながら返答する”亜季”。
”相良”は”C”について彼女らに語り始めます。
それは、空想の産物と思われた話でした。
3年前、ニュージーランド沖で、海底都市が発見されました。
国際的な海底考古学の一団が派遣されたが、何故かその後報道される事はなかったのです。
「何も発見できなかったと新聞に出ていたわ」”香子”が呟きます。
「そう、何もね。公式には・・・」
その海底都市は、古代の地球に降り立った高度生命体の遺跡でした。
調査の結果、ルルイエと呼ばれる事になったその都市は、古代地球の貴重な資料となりえたのです。
いえ、調査隊もそう思っていただけだったのです。
「そう・・・彼等の不注意な行動が”C”を甦らせてしまった。そのため防衛軍は核攻撃で都市を破壊し尽くした」
「地球防衛軍の核実験ね!世界中が避難したわ!」”香子”の発言にうなずき返す”相良”。
「”C”は、ベイ・オブ・アイランズを壊滅させた。我々は、それ以上被害を広げる事は、許されなかった」
苦渋の選択を強いられた者の苦悩が”相良”の表情に浮かんだ。
「あれは、実験じゃなかったんだ。本当の戦争・・・侵略戦争だったんだ」
”香子”は、驚愕の事実に驚いていました。
”C”は、ルルイエと共に絶滅させたはずだった・・・
だが、奴らは再び地球に現れたのだ!
ルルイエを破壊した時に、宇宙へ発信された一筋の光エネルギー。
それが宇宙の深淵の闇へ送信されたと科学技術局は判断していました。
この間の爆発事故は、その闇が、発信源を辿って降り立ったのが原因と考えていたのです。
だが、防衛軍や各国の首脳部は、その事実に懐疑的だったのです。
”C”の危険性に気づいた一部の科学者や軍人達は、対抗組織を作り上げます。
それがMAITだったのです。
「”C”のコードネームは”Cthulhu”と呼ばれている。君たちの見た異形の者達は、それの先兵に過ぎない」
”相良”の説明に息を呑む二人。
自分達の知らない所で起きていた侵略戦争・・・。それに私達が巻き込まれている・・・。

「ここに入院していた患者の事が聞きたいんだけど!」
"亜季”は、コーチの事を知りたいと、”相良”に質問します。
「君たちのコーチの事かい?それを聞くと、君は、大きな負担を背負う事になるが・・・」
「それを背負う気持ちの準備があるのか?!」
思いもよらない気迫のこもった問いかけに、思わず怯む”亜季”。
「そんなの・・・大丈夫よ・・・」
負けん気の強い”亜季”は、思わず言い切ってしまいます。
笑みをこぼす”相良”。
「彼は、君が巻き込まれた最初の堰需市爆発事件の被害者の一人だった・・・」
驚く二人。
「君たちが思っているように、あの事件での死傷者は1800名に及んだ」
「だが、殆どの死傷した人間たちは、甦ったのだ・・・」
死んだ人が甦る?その事実は、恐るべきものだったのです。
「MAITは、すべてを被験者として、監視体制をとるつもりだったが、状況がそれを許さなかった」
「周辺すべての病院に真相を明らかにすることはできず、監視する事しかできなかった・・・」
「ここへ運ばれてきた人間だけを隔離したのだが・・・」
「我々の警戒を突破して、彼が逃げ出した・・・」
”相良”は、一枚のCDを取り出して、二人に手渡します。
「この中に、あの事件の犠牲者の名簿が記録されている・・・」
CDを見つめる二人。
「そして、その名簿を見れば、誰が”C”なのかわかるだろう・・・」
その真意を見抜いた”亜季”は、”相良”に応えます。
「その名簿の中に、私達が知っている人も・・・」
うなずき返す”相良”
「その通りだ。君には、特別な力があるようだが、果たして親しい人物にも、その力が揮えるのか?」
「・・・そんな・・・」”香子”は、あまりの現実に悲しみの涙を流します。
”相良”は、二人の肩に手を当てます。
「君たちは、あのコーチを・・・”C”に取り付かれた人間を救ってくれた。私からも礼を言うよ」
彼の言葉に、救われた気持ちの二人・・・。
すると”相良”は、部屋の天井に向って声をあげます。
「ルルイエから伸びた光は、君たちの脅威となったのだろう?」
「だからこそ、封じ込めようと、君らは戦った・・・」
彼が、クロノスに話しているのに気づく”亜季”。
「”相良”さん・・・」
彼は、”亜季”の肩に手をかけ、同化しているクロノスの意識に語りかけようと努力したのです。

「それが、君たちと”C”との戦いだったのだろう?ウルトラマン・・・」


予告
”相良”は、ウルトラマンの事を周知していた。そして、彼は、”亜季”達に意外な申し出を行うのだった。
その申し出の中に隠された真意とは?次回”Cthulhu”に御期待下さい。
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