突然、謎の異星人と精神融合体となった高浪亜季の生活は、大きく変化しました。
元々、学業も運動も良い彼女だったが、クロノスの融合で、彼女の身体能力も著しく向上したのです。
為に、意識して力を抑えないと、不審な疑念を周辺に与えかねなかったのです。
「あ〜あ。こんな凄い力が持てたんなら、バリバリ使ってみたいものよね♪」
一人、体育館でバレーボールの練習をしながら呟く”亜季”にクロノスが、語りかけてくる。
≪だが、使えまい。もし力の解放を無制限にすれば・・・≫
彼女の打ったスパイクで、床に叩きつけられたボールが無残にも破けてしまいました。
「そうね。これじゃボールがいくつあっても足りないわ・・・」
自宅では、深夜に及ぶネット検索で、クロノスが、地球の状況を把握できる手伝いをしている”亜季”
その情報検索の中で、クロノスは気になる項目を彼女に伝えるのでした。
≪やはり”闇”は、この星に来ているようだ。各地で異変が起きているようだ≫
クロノスの言葉に”亜季”も心配になります。
「ええ、事件の報道も変だし・・・」
クロノスと融合した時、彼女の目の前で起きた事実とは、全く違う報道がなされていました。
”誰も死ななかった・・・”その報道に違和感と、何かしらの恐怖を感じる”亜季”。
不安げな心を感じたクロノスは、彼女を安心させるように語りかけるのです。
≪心配するな”亜季”。私の力は失われた訳ではないようだ。先の戦いでも、私は奴らにわたりあえている。だが・・・≫
クロノスの心配は、”亜季”にも分かっていました。
「そうね、あなたが、私から解放される方法が、謎なのよね・・・。ねぇ何か無いの?ほら、子供番組なら変身アイテムとかあるじゃん」
無邪気に喜び、変身ポーズをとる”亜季”
そこにお母さんから呼びかけがあるのでした。
「”亜季”御飯ですよ、降りてらっしゃい。あんまり部屋で暴れないでね」
思わず自分のこっけいな姿に恥ずかしさを感じた”亜季”だったのです。

「アキ〜」声に振り向いた”亜季”の目に飛び込んできたのは、バレー部の友人”田町 香子”
”亜季”とは、中学以来の友人で、セッターの名選手として期待されていました。
「アキ、最近練習サボりすぎじゃない?体どうかしたの??」
クロノスとの同化で力の制御ができない”亜季”は、部活動を休んでおり、心配した香子が練習前に声をかけてきたのです。
「ううん、違うけど・・・」煮え切らない態度の”亜季”に”香子”は、彼女を体育館に引っ張って行くのでした。
「今度、赴任してきたバレー部のコーチ、ちょっとかっこいんだ〜〜」
引きずられるように体育館に連れて来られた”亜季”
懐かしい練習風景に、思わず笑みがこぼれます。そんな彼女を見て、他の友人達も集まってきました。
和気藹藹と仲間達とお喋るする”亜季”。
その彼女に、鋭く刺す様な感覚がありました。その感覚の流れを探ると、そこには、新任コーチの姿が・・・。
心の中で、”亜季”に注意を促がすクロノス。仲間と会話しながら、注意してコーチを観察する彼女。
≪別に変な所は・・・≫≪いや、何か感じる。何かを・・・≫
そこに新任コーチから騒いでいる皆に掛け声がかかります。
「さあ、練習を再開するぞ。皆、最初からもう一度だ!」
殆どが練習に戻ると、コーチは”亜季”へ振り返り、瞳をみつめるのです。
「君は・・・?」
その目の冷たさに、背筋が寒くなる”亜季”。おもわずクロノスの意識に語りかけてしまいます。
≪やばいよ・・・やばいよこいつ・・・≫
そんな様子を、人見知りと勘違いした”香子”が、助け舟を出します。
「”アキ”、今日は、一緒に練習しよう♪ねっ」
”香子”に促がされ、”亜季”は、ユニフォームに着替えるのでした。

地区大会の近い為、練習にも力が入り、チームも良い状態に仕上がっているようでした。
久しぶりの練習で、心地よい汗をかいた”亜季”も、気分が高揚していました。
「今日は、これで練習を終る。但し、”亜季”と”香子”は、フォーメーションの確認のため、少し残ってもらう」
コーチの指示に目を合わせる二人に、友人たちは哀れみの言葉をかけて、その場を去ってゆきます。
「あら〜残念」「久しぶりに”アキ”が合流したから、皆でパフェでも食べようかと♪」「代わりに食べてくるねぇ」
口々に声をかけ、帰宅の途につく仲間達。
「あ〜ん薄情者〜」「鬼、悪魔」「私達も連れて行って〜」
でも、懇願する二人の目の前に立ちはだかるコーチ
「さて、チームの要である君たちに、大会の命運がかかっているのだからな!
言い切ると3人の特訓がはじまったのでした。
繰り返し行われるフォーメーションの確認。
コーチから繰り出される、正確なサーブとトス。
それを真正面から受け止める”亜季”。
その姿に驚きを隠せない”香子”
「ねぇ、一体どうしたの?なんか、以前と違ってない?」
「えっ?なんか言った?」”香子”の声が届かなかったのか、彼女はコーチから繰り出されるサーブを受けるのに必死の様子でした。
しかし、それが5分、30分、1時間と連続して行われると、”香子”も不審に思い始めるのです。
コーチに練習を休むように進言する彼女。だが、コーチは、黙々とサーブを”亜季”に打ち込んでいます。
「コーチ!もうやめてください!!」
”香子”の制止も無視して、コーチの打ったサーブは、その異常な回転で空気をかき回し、摩擦熱で燃え上がります。
「えっ?なに・・・」絶句する”香子”
熱球に当たれば、人間などひとたまりもなかったでしょう。
しかし、”香子”に当たる瞬間、その熱球を、受け返す”亜季”
「ついに正体を現したわね。このバケモノ!」」
”亜季”の指摘が理解できない”香子”。
「”アキ”?何なの?何故・・・」
”香子”は、パニック状態となり、状況が把握できません。
「オマエモ・・・ナカマ・・・チガウナ・・・」
ぐもった口調で、彼女らに問いかけるコーチの姿が変化し、異形の者に変化してゆきます。
「えっ?え・えええ・・・」
驚く”香子”を庇いつつ、彼女を逃がそうとする”亜季”
しかし、それを見越したかのように、異形の者は、”亜季”を絡めとります。
動きの封じられた”亜季”
異形の者は触手を伸ばして”香子”を絡めとり、取り込もうとします。
響き渡る恐怖の叫び。
その瞬間でした。”亜季”の体が一瞬硬直し、光り輝き始めると、クロノスに転身します。
≪キサマ・・・ウルトラマン・・・≫
クロノスは、捕らわれの”香子”を救い出すと、光の渦で周辺を囲んでゆきます。
これは、FDS(Four-dimensional space )と呼ばれる異次元空間でした。
擬似空間を重ね合わせる事で、もとの空間を保護し、異物を排除する能力。
クロノスの必殺技でした。
≪なに?この変な、もやみたいなの?≫
≪この擬似空間を通して、君たちの世界をみているからだ。これで戦っても、君たちの世界の被害は、最小限にとどめられる≫
異形の者は、唸りながらクロノスに迫ります。その姿は、徐々に巨大化し、30mを越えようとしていました。
≪ツァトゥガニ、サカラウモノハ、シノセイサイヲ!≫
押しつぶそうとする異形の者を払いのけるクロノス。クロノスも相手に合わせて巨大化したのです。
組み合う二つの巨体。
異形の者の口から垂れる涎が、クロノスの体にかかります。
≪きったないわね!こいつ!≫クロノスの体感を、自分の体感として感じる”亜季”
異形の者を振り払うクロノス。
途端、カラータイマーが点滅を始めます。
≪点滅を始めたわ!時間が無いわ、クロノス!≫
”亜季”に指摘されるまでもなく、それはクロノス自身が理解していました。
最後のエネルギーを使って、スラッシュボルトを開放するクロノス。
異形の者は、倒されたのでした。

気絶した”香子”を部屋に送り届けるクロノス。
その姿は、もう一度光に包まれ、”亜季”の姿に変化してゆきます。
≪クロノス・・・、あいつの最後の言葉の意味って・・・≫
彼女は、異形の者の最後の言葉が気になっていました。
≪ルルイエカライズレ、ツァトゥガサマガ、フッカツサレル。スデニ、オマエモ、ソノミギテガシメスヨウニ、ワレラトオナジ・・・≫
すでにクロノスの右手は、侵食が激しくなっていました。
必殺技クラッシュボルトを使うほど、同化侵食の度合いが、激しくなっていたのです。
≪確かに、奴の言うとおり、時間が無いようだ。腕の同化が著しい・・・≫
クロノスへの不用意な発言を恥じる”亜季”
≪ごめんね≫
≪いや、心配をかけてすまない。なんとかしないといけないのは、同じことだ≫
≪コーチの事は、どうしょう?≫
すると、クロノスが”亜季”に語りかけます。
「心配しなくいい、私がFDSで、周辺の人々の記憶を操作してある。だが、内側にいた君の友人には、効果が無い」
「つまり真実を伝えないといけないって事よね・・・」
その時、目覚める”香子”
記憶が甦り、恐怖におののく”香子”をなだめる”亜季”。
徐々に、自我を取り戻す彼女に、”亜季”は、すべてを話します。
必死で説明する彼女の言葉を、なんとか理解しようとする”香子”。
「いいわ、”亜季”。あなたは私の親友だもん。あなたの事を信じるわ。そしてあなたの守り神の存在も・・・」
「守り神?」
クロノスの存在を守り神と称した事に笑みする”亜季”
その笑顔につられて、”香子”も笑顔になったのでした。
学園内にも魔手をのばしてきた異形の者たち。
彼等は、一体何者なのか?
そして、寄生侵食されるクロノスに打つ手はあるのか?
時間は、彼らにとって無情な存在だったのです・・・