ロマンドリップ

GAME

PCゲームの感想

星合いの空

  • メーカー:Earth Well(同人)
  • ジャンル:大作ノベルゲーム
  • 発売日:2002/08 コミックマーケット62発売 
8年前の夏の日、原因不明の火事によって主人公正紀の家族は帰らぬ人となってしまった。
正紀はそれから北海道の親戚の家に住んでいた。
しかし8年後のある日、死んだはずの妹から一通の手紙が届いた。
そこに書いてあったのはただ一言


「おにいちゃん、たすけて」


死んだはずの妹から届いた手紙。正紀はこの真相を確かめるべく、昔住んでいた街に戻ってきた。
8年ぶりに訪れた街。そこは、梅雨の最中で雨の降りしきる灰色の街だった。

そして雨の降る中、一人の少女が正紀に傘を差し出した―――
(星合いの空紹介ページより要約)


同人サークルEarth Wellのデビュー作。このサークルとの出会いはとある雑誌に載っていた同人ゲームの特集から。
概要は上記のとおり。8年前に住んでいた街に主人公が戻ってくるところからはじまります。


それで、全体的な感想を。

まあ、凄いの一言ですね。
キャラクターの絵には若干の同人の色が隠せませんでしたが、シナリオのクォリティや、楽曲など、それでも総合的な内容としては自身がCDケースの帯に書いてある「商用ソフトをはるかに凌ぐクォリティ」と豪語するように、良いものでした。

折れ自身は他の同人ゲームをやったことがないので一概には比較できませんが、他の商用のゲームと比較した場合でも、さほど遜色はないと思います。


しかしまあ、やはり同人というか。
上にも書いたとおり、ちとキャラの絵だけはまだまだという感じです。
なんというか、全体的に「甘さ」というのが感じられます。立ち絵ももう少しそのシチュエーションに合うようなものが欲しかったし、また髪の色が統一されておらず、立ち絵によって全く色が違うのもありました。

エフェクトに関してですが、個人的には良かったと思います。他のゲームでは分かりませんが、OPの導入シーンや日付のシーンなどにムービやら演出やらを持ってきて、ただ単に単調に物語を進めるのではなく、ある程度クッションの役割を果たしているというか。ある意味ではこの演出によってクォリティ上げしている部分もあるかと思いますが、ただそれがゲームの完成度を高めているのもまた事実です。


一番肝心なのはやはりシナリオは、これは一部のキャラを除いて、素晴らしいものでした。
やや水増しされたような感も若干ありましたが、基本的にはしっかりと書き込んでおり、悪くありませんでした。妥協していないところがあるということに、Earth Wellの意気込みを感じました。
この内容で価格が1000円から2000円くらい?(よく覚えてない)なわけだから、かなりお徳かと。
またこのゲームは全年齢版でであるために、老若男女問わず誰にでも自信を持って進められる一本かと思います。

そいじゃ、以下各キャラの感想を。

相沢みなと

「こうしていると聞えてくる気がするんです、星の詩が・・・・・・」

このゲームのメインヒロイン。
主人公が住んでいた街「日ノ出町」のお屋敷に住む女の子。
正紀の妹と同じ名を持つ少女「伊代」と同居している。
性格はいたって温和、家事全般をこなし、まるで小学生のようにはしゃいでいる伊代を支えながら生きている。
典型的なパターンの娘・・です。見た感じ、簡単に言うと、シスプリの可憐を大きくしたような。


以下感想。
さすがメインヒロインという位置付けか、非常に練りこまれたシナリオという印象を受けました。
まあ途中から、浮かび上がってくる謎の答えというのは分かってしまいましたが、しかしそうと分かっていながらも感動してしまいます。
後半はひたすら悲しい物語でしたが、それをいかにプレイヤーに飽きさせずに続けさせるか・・・というのがうまいというか。
幾度か涙が来るわけですよ、ググッと。一つ一つ伏線を張っていき、それをラストで少しずつ紐解いていくのが感動の涙を誘うわけです。

最後のシーンはプレイしていても分かると思いますが、お約束的展開。でもこういうのが折れにとってはいいんですよ。

感動できるのは事実なのですが、ひとつだけ指摘したいことがあります。 出来としては一番いいとは思うのですが、みなとルートはこのゲームとしての本質を突いているわけではありませんでした。 むしろうまく雰囲気に流したという感じが。もともとは主人公が、妹である伊代を助けに来たためにこのようにして締めた、という感触が無きにしも非ずです。


あ、一つだけ言っておきます。上とは全く関係ないのですがね。
みなとの怒ったときの立ち絵、もの凄く可愛い(´∀`)

これだったらもう毎日でも怒られたいよボクは。 (ぇ
もちろん、一番可愛いのは彼女の笑顔です。幸せになれて、本当に良かった。

双海ユリカ

「私は、私の為にこの試合に挑む」

双海家、真双海流十代目の少女。
剣の家柄で、とある事情により日ノ出町にやってきた。

いつも和服を着ており、下手をすると剣が振り下ろされることもしばしば。
しかし実際は人付き合いが苦手な方で、引っ込み思案な傾向。
強いと思われがちだが、彼女自身はとてもロマンチストで“普通の”女の子に憧れを抱いている。



美人で長髪に黒髪・・・いわゆる典型的な日本女性といった身なりの娘です。
まあ、ありがちなパターンの娘といいますか、普段は男勝りな振る舞いでも、ちょっと中身を崩せば恥ずかしがる・・という感じです。

シナリオ自体はメインヒロインであるみなとに比べるとサクサクと進みました。
内容的には、当然みなとに比べれば薄いです。それでも要所要所ではプレイヤーの気持ちを少しずつ昂ぶらせており、悪くは無かったかと。
サブキャラであるために、当然物語に深く突っ込んでくるような立ち位置ではないため、雰囲気としてはある程度予想がつく面も見られました。

良くも悪くも、ふつー、といった印象を受けました。それでも折れは涙が誘われましたが。

個人的にはこういった性格のキャラも嫌いではありません。強さの中にみられるかわゆさを持つキャラってのは、萌え萌えばかりしている折れにとって、こうスパイスの効いたキャラと言うのかな。刺激を与えてくれる意味で気に入ってます。


あとひとつ。
ユリカルートではアレに対する伏線が張られてましたね。しかもさりげなく矛盾してないのも。
でもそれってある意味では凄く悲しいことなんですけど。



最後に一言。
相沢みなとを本気で怒らせるんじゃない。

ユリカどころじゃない。下手するとが待っている恐れも((((´Д`;))))

美空華月

「じゃあ、ばいなら〜」

日ノ出町にあるもちもちベーカリーの前で出会った少女。
おさげ髪のメガネっ娘という典型的なタイプの子で、根が優しく思いやりがある。
ところがアルバイトにはことごとく落ちまくり受かったことがない。

絵を描くことが好きで、将来は絵描きを目指している。


いわゆる「っぽい」少女です。
設定の上では全く普通の子なのですが、主人公がはじめて華月と出会ったもちもちベーカリーの前で、彼女と衝突した瞬間いきなり3メートルも吹っ飛ばされたという事実があり、絶対に何かしらの格闘技をたしなんでいるとしか思えません。(しかも彼女は無意識)


折れは、目が悪い女の子はコンタクトにすべきだ!というくらいの全くのメガネっ娘属性ではないため、華月ルートのシナリオは別にこれといった期待は寄せてませんでした。
シナリオもなかなかシリアスな展開にならないため、ストーリー自体もかなりライトな内容だと思っていたのですが、それが間違いでした。
まずシナリオの長さが他のキャラと比べて非常に長かったです。このゲームのヒロインであるはずのみなとよりも越えていると思われる長さ。これでそろそろ終わるかな?と思っていても全く終わる気配が見られませんでした。

長編に及ぶ華月シナリオですが、折れとしては一長一短だった感じが。
シナリオが長いという点から、途中でかなりダルくなりました。特に華月が倒れてしばらくしてから入る回想(夢?)シーンですが、全くこちらの感情が揺さぶられないまま小一時間ほどずっと続くのですよ。直前でちと泣いていたんで、これで一気に締めるのかな?と思いきやひたすらダラダラと回想が続くもんで、こちらとしてもやる気が無くなってひたすらマウスを連打。さらに、回想シーンも含めてその他のシーンでも同じセリフを多用したり、「幸せ」という単語を連発したりで、ある意味では水増しされたシナリオという点が否めませんでした。

ストーリ上では回想シーンは必要であるのは分かりますが、別にこんなに描かなくても・・・というのが正直な感想です。


しかし、華月シナリオ、正直泣けました。
はじめからナメてかかったのが失敗でした。「幸せって何?」 問い掛けている内容は単純なものであると思われても、正紀と華月が見出したその問いかけに対する答えと、ラストの展開が泣かざるを得ないものとなりまして。
途中から主人公と華月の二視点の展開が交互に続くのですが、ラストの最も盛り上がる場面で切り替えの感覚を次第に短くしていき、そして最後にその視点(と、二人の想い)が収束するというやり方がこれが本当に泣けまして。

これは来るな来るな。と思っていたら案の定涙がボロボロ。シナリオの内容としては正直大して深くは無いのですが、この描かれ方で一気に感情が高まりました。


結果としては合格点を上げられるものでした。いやもう本当に。
だからといってメガネっ娘になったわけではありませんがね。

小早川春奈

「わたしは超天才考古学者、春奈様よ!!」

自称天才考古学者の女性。
主人公が8年前に住んでいた家の焼け跡で出会った。
いろんな知識をもっているみたいだが、たまに知ったかぶりをする。
鈴鳴山に存在していた「力」を探してる。
そいでもってかなりの腹黒。笑点の楽太郎もカナワネェ。


春奈ルートはこのゲームではおまけシナリオでした。
攻略チャートでも、基本的には伊代ルートを進んで最後の方の選択肢で分岐するようになっているため、かなりの部分で伊代と被っているような感じです。

おまけということもあってなのか・・はっきり言ってしまうと春奈ルートのシナリオはとんでもなく不良消化でした。伊代ルートではきちんと最後まで描かれるであろう“儀式”もその終わり方がとんでもなく適当だし、そして回想シーンだってただ流れるだけで全く持って不必要。
いろんな意味で中途半端になっていて、感情移入もほとんど出来ず流しながら詠んでいるうちにいつの間にか終わってしまいました。

しかもまだ伊代ルートをクリアしていないのにも関わらず、ゲーム自体のEDも流れてしまって中途半端な感じ。おそらくプログラムをしくって、春奈ルートで終了しても伊代をクリアしたことと認識されてしまうんでしょうかね。

それに春奈ルートでは、本質を突くと伊代はバッドエンドなわけであって、「今の」伊代はいいとしても本当は報われてないわけだからどうも微妙・・・

春奈ルートは“どうでもいい”って感じです。まるでPS2版みずいろの石川冬佳先輩を見ているようだ。

川上伊代

「・・・・・・ごめんね。お、おにいちゃん」

8年前の火事で亡くなったと思われていた、主人公川上正紀の実の妹。
みなとに拾われて、一緒に住んでいる。
小さかった頃の性格とは全くの正反対で、かなりのお転婆。
とてつもなく明るい性格で、ちっとも人の言うことを聞かなかったりとかなりのお子様。
その割にイベントCGではとてつもなく可愛いんで将来美女決定。
その容姿に似合わず花札と麻雀が得意。
通称人間核弾頭


最後の伊代ルートなのですが。
正直言って、最後の方は普通に感動できました。

前半は上の性格のとおりかなりあっちこっちかき回していますが、後半になってからは全くその雰囲気すらなく、暗い展開に。
ただ、ストーリの展開、構成なんかは思ったよりも歯切れがよくいい感じ。
特に回想シーンなんかは適所的確に配置されていて、ストーリーが途中で途切れることはなく自然に感情を高めることが出来ました。

伊代の中で渦巻いて日々大きくなっていく問題と、それを解決に導くまでの兄妹としての過去の記憶と強い絆。その辺がうまく表現できていたと思います。

その展開がバランスよく出来ているのは確かだったのですが、ひとつだけ問題点・・・というか、言いたいことがあるのですよ。
春奈邪魔。いろんな意味で。

彼女は彼女で役目としては重要なキャラだったのですが、2度目の儀式のときの現われ方ははっきり言って高まっていた気持ちを途切れされてしまい、ちと残念でした。


それ以外は合格点を与え得るに十分な内容でした。ぶっちゃけ言うとお気楽感動コースと言えてもしまうのですが、素直に泣けるといえばそれは否定できません。
人によっては表面上の感動に過ぎないかもしれません。シナリオの程度が深いと言い切ることも出来ないのもまた事実なのですが、自分としてはそれでもラストは一歩踏み込んだところで感動できました。

特に伊代ルートではこのゲームとしての本質をつくものであるが故にちとじっくりとプレイをしてました。


作品のあらすじとゲームの内容を比較した場合、みなとルートが「星合いの空」としてのトゥルーエンドだとすれば、伊代ルートは「作品内容」としてのトゥルーエンドになります。

他ではあまり見られないの妹ですが、これもまたよしかなと。そう思いました。



そして最後に一つ。麦藁帽子がかなり泣けます。これでかなりググッときました。
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