ロマンドリップ

GAME

PCゲームの感想

銀色 -Silver-

――かつて、
銀は月からこぼれ落ちた雫を集めて作られたと言われてきた。
それは現実とは異なる美しい夢物語として伝わり、
いつの間にかお話の中だけの世界として消えていった…

(OHPより)




ねこねこソフトの第2作目。
銀色は発売してから1年後に銀色-完全版-として発売されましたが、今回自分がプレイしたのはオリジナルの方である銀色 -Silver-。
プレイする以前からシリアスもので悲しい内容だということは分かってました。

で、実際プレイして感じたこと。
もうまんま聞いたとおりと言うか。
全編にわたってほぼ暗い展開でよく人気が出たものだなぁなんて思います。
でも、そんなことを思った折れでさえ、プレイしてみて何か強烈に印象に残りました。
予想だにしない展開のシナリオとその結末。
そしてもう一つ。

ねーちんは強烈だということ。(笑

それでは少しずつ感想を。




各章は独立

基本的に一つの章で一つのシナリオが完結する形になっており、各章は独立したものになってました。
ただ、章を終えるたびに暗い結末で結構凹みました。もっとも、それがのちのちに重要になってくるのですがね。
そのため、各章同士の繋がりは殆ど希薄なもの。基本的に章毎に時代が違う為ストーリーが連結することがなく、物語を唯一繋いでいたのは各章に登場してくる銀糸。だけど、銀糸の背景で見れば各章の繋がりは全然ない、とは言い切れないです。
むしろこの作品は銀糸があるから成り立っている。そう言えます。(当たり前か^^;)




悲しすぎる第一章

第一章のヒロイン「名無し」は色街から逃げ出してきた少女。
はじめから最後までひたすらに暗い展開でした。
なんたって人殺しの主人公とその主人公を便りに生きている少女の話のどこに生死の機転を見出すかなんて分かったもんじゃないです。
まあ、話の展開や雰囲気からしてそんな感じがバリバリしてますが。
第一章は1時間半程度でクリアできるという、かなり短いシナリオなのですが名無しの少女の話としては、かなり濃縮された内容だったと思います。
ラストのシナリオの演出法がうまく、人によっては涙がブワッとくるかもしれないです。




一番衝撃的だった第三章

ねーちんこと、夕奈の変貌っぷりが凄かったです^^; 唯一の家族である実の妹に向かって死ねだのお前を殺すだの言っていたキャラは未だかつて見たことがありません。
まあ、夕奈が初めからこんなキャラって訳じゃないのですが。普段はどこにでもいる、優しい姉そのものです。それが物語が進むうちに次第に妹を妬み、恨みを持つようになるのですがあまりにも性格が違ってくるから、こっちとしてもかなりショックを受けました。

夕奈の変貌っぷりの原因となったのは、夕奈自身の性格が思い込みが激しいところ。
妹の朝奈が姉の気迫に押されてハッキリと真相を示すことができないというのもあるけれど、どう見ても姉が勝手に激情しているようにしか見えない。そして更に追い込まれた朝奈が、姉に誘導されるかの如く曲がった真相を口にしてしまうとことからしても、黒い夕奈がかなり強烈なキャラだったことが伺えます。
ただまあ、プレイヤーが重度のMっ気を持っているのなら別。
こんなにまで罵倒されると逆に快感に覚えるかもしれないかも・・(ぇ

ところで第三章は結末が銀色の中で一番凹みました。
他の章ならある程度予想がつくであろう展開が、第三章では予告なしに、そして思っても見ない方向へ展開したために、その衝撃はかなり大きかったです。
それは夕奈としての恐怖と姉としての優しさによるもの。ただ、(この章だけではないけれど)終わり方が少々唐突な感じがします。凹んでいるときにタイトルに戻るとちょっとあっけないような感触を覚えました。




最終章は泣いた

別々の物語を少しずつ収束させていくというやり方が否応なしに泣かせてくれました。
特にラスト近くになって物語の切り替わりが頻繁になってくると、それぞれのヒロインの感情やら思いやらが急激に濃縮してくる為、物語が昇華していくとともに涙がボロボロ。
これが昇華したあやめの願いをかけるシーンではリミッターが外れ、そこからしばらくはテキストを読みながら号泣しっぱなし。各ヒロインたちの想いを受け止めながら泣いてました。




システム面は不満だった

・バックログが使えない

直前のテキストが表示されない。また、バックログもわずかしか出ない(せいぜい20〜30行くらい?)ので、読み返しとかしたいときに非常に不便だった。


・音のレベル設定ができなかった。

ゲームではBGMが音声よりも大きくて声が聞き取れないということもしばしば。
自分としては音声はハッキリと聞える程度が欲しい。声を聞くことに集中すると、逆にシナリオへの集中が減衰してしまう。
最近のゲームはレベル設定がデフォルトで備わっているんで、こっちに慣れちゃうと不便に感じる。


・当然のことながら、マウススクロールも使えない

まあ基本はクリックですから、できないものは仕方が無い。


あともうひとつ。
最近のねこねこソフトのゲームは皆ディスクレスでプレイできるのですが、この銀色はBGMを直接CDから流しているんで、ゲームディスクを挿入しないとBGMが流れませんでした。
ディスクレスに慣れていたので、はじめはちょっと戸惑ったりもしました。まあ、慣れればなんて事は無いですけど。




最後に(ちょいとネタバレちっく)

結果的に、銀色としての作品の結末をどう捕らえるかはプレイヤーの解釈次第に関わってくるかもしれません。最終的に全てのヒロインが救われたのか、はたまたそれは第3者の視線から見たただの妄想かは知る由はありません。ただ、言えることとしては、少なくとも第四章のあやめは救われた、そして少なからず最初のあやめも救われた、ということでしょう。

結果に基づきそれまでの過程が変化したのであれば、今までの過去は全てパラレルワールドになるわけです。その考えをするのであれば悲劇のヒロインたちはやっぱり悲劇でもある・・・結局、幸せを得ることはなかった、なんて考えを持つこともできる訳でもあります。
じゃあ任意の時間軸から分岐したヒロインの運命は?という疑問を持つのであれば、そちらのヒロインたちは最終的には救われ、そして幸せを得たものと考えることが出来ます。

結果、どう捕らえるってのは、自分の解釈次第。救われようが救われまいが、その想像は自由なのです。
自分としては最後には皆、幸福を手に入れたんだと信じています。現代にあやめという名を持つ人間が生まれ、そして不幸ばかりをもたらした銀糸の呪縛を開放したのは必然な出来事だったと思います。
そうでなければ、悲しみを背負ったヒロインたちは永久に救われなくなってしまうわけだし。
でなければこの銀色という作品はとてつもない駄作にしかならないですしね^^;

ただ、銀色の世界と銀糸の話というのは。
人の欲望だけでは、決して良い結果は生まれない。
何も失わずに願いを叶えることなんて、不可能。
本当の幸福を願ったときだけ、それが叶う。

そしてそれは、同じ「あやめ」という名を持った人だけが叶えられるもの。

あ、あやめぇ!!
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