FLザクソン |
FL ZAXXON |
LSI PORTABLE GAME/バンダイ |
Written by T鈴木 |
エピローグ |
いつもの帰電スタッフ会議。
と言っても、ただダラダラと世間話をするだけのことが多いのだが、今回はいよいよレビュー第100回目とあって、議題の中心も「何を取上げるか?」の一本に絞られていたような気がします。
「第100回に取上げるのに相応しい、何か記念になるようなゲームないですかね〜?」
などとナゲヤリな会話が続く中、「じゃあFLザクソンでいいんじゃない」の一言でアッサリ決ってしまったワケですが、ハッキリ言ってあまり乗り気じゃなかったわけですよ。
だってそうじゃないですか?いくらFLザクソンが「幻の電子ゲーム」と形容されていても、所詮はレアってだけ。どうせゲーム内容はショボショボで、コレクターは「FLザクソン」という名前だけをありがたがっているだけでしょう?
・・・・そう思ってたいした期待もせずに、おもむろに「FLザクソン」の電源を入れてみたのだが、次の瞬間、目の前に飛び込んできたその映像に、筆者はすぐにその考えが間違いであったことに気付く。
「・・・・これは凄いゲームだ!」
脅威の立体FL |
ザクソンと言えば立体。立体と言えばザクソン。
・・・・と言われるように(言うのか!?)、オリジナルの「ザクソン」(セガのアーケードゲーム)は、クォータービューによる立体的な視点が特徴の、ちょっと不思議な感覚なゲームでした。
その後発売された電子ゲーム版LCD「ザクソン」。こちらも液晶画面ながら、ダブルスクリーンを用いることで高低差を再現するという斬新な発想によって、オリジナルの立体感を再現しました。
・・・・で、この「FLザクソン」ですが、みなさんの興味は「FLで立体画面なんか再現できるの?」に尽きると思います。
結論から先に言うと、立体に見えます!
これは上下の画面を交互に移すといったチープな手法ではなく、本当にリアルタイムで上昇面と下降面が同時に動いているのです!
プレイヤーはハーフミラーの向こう側の画面と、 反射した画面を同時に見ることになる。 |
で、実際にどういう原理になっているのかと言うと、蛍光版が2重になっている・・・・わけはなく(笑)、秘密はハーフミラーにあります。
ハーフミラーとはマジックミラーとも呼ばれる半透明の特殊な鏡のことで、普通の鏡のように物を映すだけでなく、目を近付けると、向こう側も薄っすらと見えるという物です。
これを上の図のように蛍光版の中心に挟むことで、ミラーに反射した画面と、ミラーの向こう側にある画面を同時に見ることができ、プレイヤーの目には、さも立体映像のように見えるわけです。
凄い発想ですね!
ただ、残念ながら、アーケード版やLCD版のようなクォータービュー(斜め視点)は再現できませんでした。
ただの縦スクロールシューティングになってしまったわけですが、無理に斜め視点にしてゲーム性を壊すよりは、この方が安定して遊べる・・・と思います(ちなみにコレコという海外メーカーもFL版ザクソンを発売していますが、一応斜め視点なものの、これが凄い出来で・・・・苦笑)。
これではザクソンというより「ワイバーンFO」(知ってる?)に近いですね。
ステージ1:空中戦 |
「FLザクソン」は3つのステージで成り立っています。
ステージ1は敵ファイターとの空中戦。
敵ファイターが上昇面、下降面からそれぞれ飛来してきますので、自機を上昇、下降させながら撃ち落していきましょう。
基本的に自機は左右にしか動けませんが、立体的に動くことによって、敵の弾を上昇(下降)してかわすという芸当が可能なわけです。
これぞまさしく「ドッグファイト!」って感じですね。
また、レバーを奥に倒すと下降、手前に引くと上昇という、なかなかオツな操作感となっています(笑)。
上下面で空中戦だ! |
上の画像は再現CGですので、もちろん実際のゲーム画面とは異なりますが(本当はもっと迫力ある立体映像なんだよ)、スピード感は本当にこのくらいあります!
特に背景の星の動きは驚愕の一声です!
アーケードゲーム「ギャプラス」よろしく、上昇面、下降面織り交ぜてビュンビュン飛んで来るんですから、そりゃもう迫力満点でしょう!
ステージ2:敵基地潜入 |
ステージ2は敵の基地内部での戦いです。
上昇面、下降面それぞれに張りめぐらされたバリアをかわしつつ、敵基地を破壊して進みましょう(アーケード版にもあったシチュエーションですね)。
途中、敵ファイターが現われますが、何とこちらの動きに合わせて上昇下降してきます。これがホーミングミサイルのようでカッコイイのだ!
バリアを上下にかわせ! |
ステージ3:ボス戦 |
ステージ3はいよいよ敵司令船との戦い、いわゆるボス戦です。
ボスは上昇面だけを移動し、下降することはありません。従って、こちらが下降していれば戦うことなくやり過ごせるわけですが、倒せば100〜1000点のボーナスなので、何が何でも倒したいところです。
なお、ボスには耐久力があって(電子ゲームにしては珍しいですね)、2発当てなければ倒すことが出来ません。1発当てると点滅するという表現で耐久力を現しているのがなかなか泣かせますね?
また、ボスはミサイルを連射してきます!単発でピュンピュン撃って来るのが基本の電子ゲームの中にあって、弾幕を張って攻撃してくる辺り、「さすがザクソン!」と思わずにはいられません(なんだそりゃ)。
あと自機の爆発のグラフィック・・・必見!
ボスと1対1での戦いだ! |
■帰電くんアドバイス 時間内なら何度でもボスを倒せるぞ。できるだけ早く撃墜しよう。 |
幻の電子ゲーム |
「FLザクソン」のパッケージ 上が国内版で下が海外版。 微妙に違うのが分かるかな? |
というわけで、この「FLザクソン」が単なるレアゲームではない、技術とアイデア溢れる、良質ゲームだということが分かっていただけたでしょうか?(欲を言えば、もっとステージ数が多かった方が良かったですが)。
このような素晴らしいゲームが殆ど市場に出回っていない・・・・電子ゲームの世界ではよくあることですが、本当に残念ですね。
「殆ど出回っていない」・・・・と書きましたが、それにしてもこの「FLザクソン」のレア度は半端ではありません。・・・って言うかもはや正式発売されたかどうかも怪しいぐらいです。
当時の児童誌の記事から、おそらく1983年頃に発売されたと思われるのですが(丁度「FLバーガータイム」や「FLペンゴ」と同じ時期ですね)、確かにこの時期に発売された機種は、前年に発売された機種比べとても出荷台数が少ないです(電子ゲームブームが既に下火になりつつあった為)。・・・・が、それにしても少なすぎます!
売っているところはおろか、オークションサイトに姿を見せることも全くありません。
これが「幻の電子ゲーム」と呼ばれる由縁なのですが、一体なぜなのでしょうか!?
最初から海外メインで売ることを前提に開発されたのか?
それとも何か致命的な事情があって、出荷を停止せざるをえなかったのか!?
今となっては理由は分かりません。
ですが、当HPが今回記事を制作して、ベールに包まれていた「FLザクソン」の、そのかなりの謎の部分が解明されたと思います。
あとは・・・・貴方がこの「FLザクソン」をGETするだけです!
「本当に欲しいと思っていればいつかは手に入る」・・・・そう信じて、いつの日にか、必ずGETしてください。
そしてそのとき、頭の片隅にでも今回の記事で筆者が書いたことを思い出してもらえば幸いです。
記事制作協力:史