ミサイルベーダー
MISSILE VADER
LSI PORTABLE GAME/バンダイ


Written by 史


あの頃は・・・(はっ!)

この電子ゲームの画像を見て「あ、これこれ、なつかしー」というは20代後半〜30代前半の方ですね。そうです、僕達が丁度小学校の時に遊んだおもちゃです。このゲームの原作となったTAITOのインベーダーは、78年に大ヒットしました。
現在のテレビゲームというものの商品文化が一般人に浸透したのは、この作品の功績なのです。インベーダーハウスが商店街に軒を連ね、高校生・大学生・サラリーマンがコインを積み上げてハイスコアを競い合っていましたね。

そして「非行」という言葉が生まれたのもこの頃でした。
「積み木くずし」「不良少女と呼ばれて」「スクールウォーズ」などのテレビドラマが放映されていて、これらの不良達は決まってゲームセンターに出入りしており、僕らの先輩たちもやはり同じでした。僕だってインベーダーがやりたい。しかし、その頃僕らは小学生。学校の規則で、ゲームセンターに出入り禁止になったり、親の財布からお金を失敬してるうちに、家庭内紛争になったり・・・。
見つからずに良かったなぁと思ったら、カツアゲされるか偽造クレジットの見張り番でした。


インベーダーが家庭に!

あのインベーダーを子供の手に

81年、そんな哀れな僕ら小学生に、凄いおもちゃが登場しました。それがこのバンダイのポータブルゲーム「ミサイルベーダー」です。
ゲームセンターでしか遊べないインベーダーゲームが自分の家でできるんです。これは、当時の僕達にとって夢のようなことなんですよ。
何度も言いますが、何十万円もする業務用ゲームが、自分の家でできるんですよ。
僕は、セガ業務用「モナコGP」の電子ゲーム版バンダイ「チャンピオンレーサー」を買ってもらったのですが、壮絶に喜びました。あの感動は、今でも鮮明に蘇ります。

どんなゲームだったっけ?

それではゲームの説明です。
インベーダー1機とUFOを基地からミサイルで撃墜するゲームです。おわり・・・。
インベーダーが1点、UFOが5点です。最高得点は99点(それ以上はスコアの10の位がA・・・・B・・・・とアルファベット表記となる)で、ミサイルは50発(有効ミサイル数49発)という弾数制限があります。基地がインベーダーに破壊されるごとに、弾が減ってしまいます。

操作性は良好で、サウンドも軽快で心地よいです。ディスプレイには宇宙を背景に月面が描かれていてプレイを盛り上げてくれます。また、インベーダーや基地のデザインには業務用の感覚に近づけるためなのか、走査線らしき工夫が施されています。(しかし、なぜ縦に・・・)翌年には、続編ともいえる「スーパーミサイルインベーダー」が発売されました。こちらは本体がふたまわりほど大きく、インベーダーが6匹登場します。しかし、全く売れませんでした。


※上の画像はイメージCGです。実際のゲーム画面とはかなり異なります。


コラム「俺と左手と右手と俺」(T鈴木)

●ところでこの「ミサイルベーダー」、変わったことに、ミサイル発射ボタンが本体横に付いています。
なぜそんなところに付いているのかは永遠の謎ですが、とにかくプレイし辛いことこの上ない(笑)。
一応パッケージには、左手で本体を持って親指でミサイルボタンを押し、右手の人差し指で左右の移動というふうに、持ち方例(?)が書いてあるのですが、これでは左腕がツリそうです(笑
僕は両手で本体を持って、左手の人差し指でミサイル、右手の親指で移動・・・・・というふうに操作していましたが、今度は人差し指がツリそう・・・・。
結局どう持ってもツルわけですが(笑)みなさんどうでしたか?

ミサイル発射ボタンは本体横に


●当時「UFOハメ」という技が全国的に流行りました。画面端でUFOを撃ち、その後タイミングよく弾を撃ち続けると、UFOに次々とヒットして、簡単にハイスコアをGETできるというものです。
ハッキリ言って、あっという間に99点を越えてしまうので、子供たちの間では禁止ルールになったとか(笑
日本初のハメ技!?

●この「ミサイルベーダー」、発売初期は「ミサイルインベーダー」という名前でしたが、なぜ商品名が変わってしまったのでしょうか?
当時はオリジナルの「スペースインベーダー」のコピー基盤が氾濫し、訴訟問題にまで発展したので、さすがにバンダイもタイトルを変えざるをえなかったのでしょうか!?
でも翌年、「ビームギャラクシアン」とか出してるし(笑

●この「ミサイルベーダー」、“伊藤ハムバージョン”というものも存在します。
本体に「伊藤ハム」とデデン!と書いてあるのが何とも呑気ですが、おそらく日本初のノベルティゲームじゃないかと思うんですが・・・・どうでしょ?

「伊藤ハム」の文字がデデン!と



ミサイルベーダーのパッケージ

ため(になる)ばな〜

僕がお世話になっている地元の老舗の玩具問屋さんの昔ばなしです。
当時、ここの店主さんは、いちはやくこのインベーダーブームに目を付けて、なんと1000万円も投資してテーブル筐体ゲームを導入したそうです。それを、地元のゲームセンターにリースするという新しい商売を始めました。
ただの玩具問屋から、ゲームリース新事業へ転向という大冒険だったわけです。身内や同業者からは当然大反対。しかし、これが大成功。僅か半年で、投資額全額を回収できたそうです。これは、凄いことですよね。月に一度の回収日には、その大量の100円玉の重さに、嬉しい悲鳴をあげていたそうです。
ここの息子さんは、「インベーダーのお陰で、大学に行かせてもらったんだよ」と笑っていました。さらにすごいのは、ブームが去った後に、筐体を処分することなく、ちゃんと回収して今でもなお、倉庫にしまってあることです。それは、お宝の山!

ばかばな〜

上級生のKくんは、これを当時持っていたのですが、やはりすぐにで飽きたらしく、変わった遊び方を開発していました。
なんと、インベーダーと基地の表示部分をマジックで塗りつぶしていました。1箇所だけ見えるようにして、他は全部塗りつぶしてたんです。
「緊張感があって良いんだ〜」っていっていましたが・・・、そうなのか・・・。しかし、かくいう僕も、なぜか「チャンピオンレーサー」の表示パネル部分のみをはずして、発光ダイオードの表示だけで遊んでいました。もっとわかんないね・・・。


CG制作:T鈴木



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