チャンピオンレーサー
CHAMPION RACER
LSI Portable Game/バンダイ


Written by 史


ハンディー・モナコGP!
現在でこそ公道レースやラリーが人気を博していますが、僕達の少年時代は、なんといってもフォーミュラカーが子供達の憧れの的でした。プラモデルやラジコンカーなども良く売れた時代で、僕も御多分に漏れず、田宮の「タイレルP34」を作ったりしていました。剥き出しのエンジン、聳えるウイング、そして個々のパーツが洗練された造形美を産み出しています。走る芸術作品とはいったものですね。
ところで、美的嗜好を満たすものがプラモデルであっても、あの風を切るスピードを体感するのは無理というもの。しかも、ラジコンカーは、骨川スネオにしか手に入らないとても高価なものです。かといってニッコーのミニラジコンを買ったらバカにされます・・・。そうなるとやはり、電子ゲーム?
そんな訳はないのですが一応今回は、
セガの体感ゲーム「モナコGP(’79)」を彷彿とさせる、日本語に直訳して”レースの覇者”というバンダイの名作レースゲームをご紹介しましょう。


キャラは全てLED表示だ
 
技術の進化を体感

このゲームが発売される少し前は、「エレメカ」といって「モーターを動力にして、フィルムを流す」という単純な構造のゲームしかありませんでした。
「レッドミサイル」
「ブラックレーサー」などがそうです。中には「得点を自分で表につける」という虚しいのもありました。また「ペイントアートで子供騙し」というパターンもありましたが、似て非なるものとはまさにこのこと。僕は「ベーダーチェイサー」をやって「こんなのインベーダーじゃないよっ!」と飛び出す拳を何度押さえたか知りません。
子供は5分で飽きますから、次回の新ゲーム導入までの残された364日23時間55分間をどう過すのかというと、万引きに違法クレジット行為!。そんな状況を玩具業界は重くみたのでしょうか、マイコンを搭載した新しい表現をする玩具、すなわちLSIゲームを開発しました。
これによってゲームの得点は自動デジタル表示、キャラの動作はモーターでなくプログラムになりました。サウンドも小気味良いビープ音にパワーアップ。「ブラックレーサー」も「チャンピオンレーサー」も内容はほとんど一緒ですが、刺激に飢えた子供達に業界の新商品がうまく呼応する形で、電子ゲームビジネスが成立していったわけです。ようやくの
デジタル玩具時代の幕開けでした。


エレクトロトイもマイコンの時代へ


素早くシフトチェンジ!
ライバルに差をつけろ!

左側面のパワースイッチをONにしてゲームを開始します。ピットから自分の車を本線に出すと得点が増えていきます。ギアとハンドルを駆使してライバルカーを次々と負い越し、制限時間内に(*)最高走行距離150km(満点)を目指します。
 
ハンドルボタン
操作系が右にありますが、違和感はほとんどありません。すばやく親指で操作しましょう。慣れてくると
タイミングを読んで、僅かな隙間をすり抜ける高度な技も可能です。
 
スピードコントローラー(ギア) 
前の車に追突しそうな時は、シフトダウンすると車間距離が広がります。しかし、L(ロー)までスピードを落とすと後続車に追突される恐れがあります。高いスピードポジションでは流れがはやくなりますが、その分高得点が狙えます。
 
●ゲーム時間
時間は最高100秒です。衝突のたびに2秒ずつ縮まっていきます。
 
(*)経験からいうと、ハイスコアをマークする為には、少なくとも4速以上で一度もミスせずに100秒走行すればなんとか行けるかもしれません。しかし“ヨガの秘法 水魚のポーズ”で精神統一して、”エレクトリックサンダー”を習得した者でないとムリ


ほのばな〜


実は、僕はこれを持っていました。誕生祝に今は亡き祖父に買ってもらったんです。確か、F1ミニカーセットを買おうと思って売り場へ行ったら、このゲームを発見したんですね。発見した時の衝撃は凄かったです。
こういう「モナコGP」みたいなゲームは、お金を払ってしかできなくて、まさか家で遊べるとは思っていませんでしたからね。「オイラの欲しいのはこれだ!」という物欲レベルは、僕の今までの人生の中でもMAXを誇ります。買ってもらった夜には抱いて寝ましたね。翌朝も、夢じゃないかと不安に目覚めたものでした。
ところでこのゲーム、本当に良く出来ていると思います。操作性は抜群に良いし、パターン配列と速度の関係をうまくリンクさせて表示してありますしね。スピード感もかなりあって、流れる赤いLEDランプはすごく綺麗なんですよ。布団の中に入って「トンネルプレー」なんて工夫して楽しんだりもしていました。テレビゲームのレースにも劣らないと思います。
同シリーズで「ミサイルベーダー」というのもあって、それを持っていた近所の子とよく貸し借りしていました。こちらもかなり面白かったですね。ああ、いとおしい我が愛機「チャンピオンレーサー」。
しかし、あれほど情熱を注いでいたはずなのに「好奇心→分解→改造→失敗→ゴミ」という電子ゲームのお決りの経路を辿ってなくなっていってしまいました。まだ、僕がお鼻を垂らしている頃のお話でした。



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