エル号の一大危機を救ったエピソード
 メリーが、ヤマドリを深追いし山で一夜を明かしたエルを救出したお話

エルが初陣のヤマドリ猟に出猟した日のことです。

それは夜明けに猟場に着き 「エル頼むぞ」 と大沢を狩進み、中程まで来た時ヤマドリの臭いをとり始め極めて急な枝沢へと必死に追跡を開始藪をかき分け登って行き、さすがメリーの子と期待を弾ませ待ち構えていたが、待てど暮らせどヤマドリが飛び出すどころか、エルが戻らなかったのです。
 1時間半が経過しこれは何か異変があったと直感し、枝沢は急坂と藪が深く登れず本沢を必死で登り反対側の幾重にも入り組んだ沢をエルの名を連呼しながら夕方まで探したが徒労に終わり、止む無く沢の近くの農家2軒に事情を話して 「オレンジ斑点のポインターを見かけたら宜しく」 とお願いして帰途に着きました。

 家に着くと直ぐメリーにエルが行方不明になってしまった事を話し明朝エルを探しに行こうと言い聞かせ休んだが眠れず、翌朝5時を待ってメリーと出かけ夜明けと同時に沢へ入りエルと別れた場所へ着きました。
 メリーに 「この枝沢でエルと別れたので頼むから探してきてくれ、俺は何時間でもここに待ってるから」 と言い聞かせると直ぐその枝沢へと登って行ったが、メリーが必ず探して来ると思う反面不安で頭の中は真っ白ぼうっとして1時間が経過した。

 その時沢の奥からかすかな物音がカサカサと聞こえてきたのでハット吾に返り夢中でメリーか?と呼んでみた。が反応はなく何分かが経ち気のせいだったかと思っているとブッシュをかき分ける音が急に大きくなり、急斜面の木立の間からメリーが顔を出してるではないですか! すかさずメリーどうしたと声を掛けると、メリーの後ろで 「ガサッ」 と音がしてエルがチラッと見えたのです。遂にメリーがエルを連れ戻したのです。メリーとエルを抱き締め嬉し涙で声も出なかったことを鮮明に覚えてます。

 エルはメリーが3歳の春3匹を出産した時の1頭で、小さい時からメリーと一緒に近くの河原で毎日散歩をしてる内に自然と猟犬の本能を発揮し、特に教える事もなく一人立ち出来るようになり、その秋から実猟に私の伴侶として行き始め一年生としては申し分のない、追い出しと回収をこなしたのです。

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