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作者: |
リザ テツナー |
訳者: |
酒寄 進一 |
販売元: |
あすなろ書房 |
定価: |
¥1,800 |
出版年月: |
2002/09 |
ISBN: |
4751521241 |
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定価: |
¥1,800 |
ISBN: |
475152125X |
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たよれっと 45号 |
煙突=エントツは誰でも知っていますね。 大きな工場には大抵立っています。 でも煙突掃除は知らないでしょう。
今は燃料に電気やガスを広く使うから煙が出ません。 だから煙突が要らない。 工場などは重油を使うから、煙が出るので煙突が要ります。 昔は石炭か薪だったから、普通の家でもパン屋さんでも必ず煙突が要りました。
煙突はよく火が燃えるように、一階から二階を抜けて屋根の上まで高く突き抜けています。 沢山燃やす家ほど高い。 煙には真ッ黒い煤が沢山含まれていて、煙突の内側にいっぱいつきます。 溜ると空気が通り難くなって火が燃えなくなります。 だから時々煤落しをしなければならない。 それが煙突掃除です。
このお話は今から160年程前の、スイス南部の山岳地帯と、イタリア北部ミラノ地方が舞台です。 その頃ミラノは商業と文化の栄えた大都市で、ピッカピカの馬車にのった貴族達が大通りを往き来し、通りを一歩はいれば町にはその日暮の下層住民が囲いだけの家に溢れていました。
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住民の商売の中に煙突掃除屋さんがあって、はしごやほうきや煤とり道具を徒弟にかつがせて、街を流していました。 「煙突ソージはどうですかァ」 「煙突をキレイにいたすますゥ~~」。 実際に煙突の中には入って行くのは徒弟です。 徒弟は全部子どもです。 小さいから煙突には入りやすいのです。 煤でいっぱい詰まった細い煙突の中を、取手をつかんで一段一段、てっぺんまで登って行きます。
無論頭から鼻、目、口、お腹、身体中煤で一杯です。
身体を洗うのは一日一回、井戸端で水を浴びるだけ。 風呂に入れてもらえることはありません。 半地下室の納屋に放り込まれて、格子戸に錠がカチッとかかります。 食事は朝晩二回、パン一切れ。 売上の少ない時、かみさんのキゲンの悪い時はそれも貰えません。 無論病気になってもお医者さんに見て貰えることはありません。 ★
イタリア北部、スイス南部の山岳地農民は、一寸の天候異変でも家中の食べ物が無くなります。 それを見越してタチの悪い人買いが子どもを買って歩きます。 契約書は期限附きの見習い雇用になっています。 が、苛酷な労働条件で生きて故郷へ帰る子どもは殆どありません。 それは全く、聞く、見る、に堪えないドレイ状態なのです。
いくら何でも余りな暴力メ付けと、信じ難い忍従と諦め。・・・ まァこれは小説だからと、筋書の面白さにつられて読み進めて行く中に、やがてその非常識の世界が決して作り話でない、現実の事だと判って来ます。 160年経った現代でもアフガン、パレスチナのように、強大国の一方的暴力で弱小国民殺戮が目の前で行なわれています。 だが気をとり直して読みつづけましょう、煙突少年達の誰一人地獄から脱出しようと試みた者はなかったのか? やがては1948年の世界人権宣言に至る人間の戦いの、一段一段の礎石を置いた者はいなかったのか?
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