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議会の多数を得ての革命


不破 哲三 著 
新日本出版社 
●2004年7月出版
●1400円+税  
●ISBN:4406030956
 

 レーニンは人間が歴史上初めてなしとげた労働者革命、ロシア革命の最高指導者でした。社会主義革命は全て、資本主義国家機構をその議会制もろ共ブッ壊してしまわねば達成できない、とレーニンは主張しました。これはヨーロッパで一番遅れた幼稚な資本主義国で、しかも先進列強の革命干渉戦争と死に者狂いで戦わねばならなかったロシア革命という現実の上に立った、事実上の少数者革命論でした。マルクス・エンゲルスの国家論から導きだしたにもかかわらず、マルクスとエンゲルスが考えていた「議会の多数を得ての革命」の道とはかけ離れた結論でした。

レーニンの死後ソヴエトを私物化したスターリンによって、東欧其他世界の共産党は事実上従属化を余儀なくされ、以後コミンテルン、コミンフォルムの30年間を通じてレーニンの国家と革命論は不滅のテーゼとして伝統され、その誤った断定に気付き、発言した党は皆無でした。それを発見し、敢えて誤りを指摘することが出来たのは、他ならぬ日本共産党だけでした。
 スターリンのソ連、毛沢東の中国、2大共産党からの、日本で直ちに暴力革命を起せという極左冒険主義の押付けをキッパリ拒否し、陰険な党分裂策動を克服して、1980年、歴史的な第8回党大会で、議会による多数者革命を明らかにした綱領と、いかなる外国の干渉も許さない自主独立の方針を内外に宣言した日本共産党だけだったのです。

 著者の不破哲三さんは当時書記局長として、宮本顕治委員長と共に党の中枢部にあって、科学的社会主義の理念を守り抜いた当事者ですが、事レーニンに関する研究については、世界の指導的学識者というべきでしょう。例えば一作々2002年には北京の中国国立社会科学院で、全国の研究者を集めて、「レーニンと市場経済」という講演を行っています

 この本にあってもレーニンが千九百何年には何をいい何を書き、何年には何を行動したかをメモの端に至るまで調べ尽くして立論しています。学問とはこういうものである、と襟を正さしめるものです。だけでなくこの人ならではの文の判り易さが抜群、並の推理小説など及びもつかない「読む楽しさ」に満ちています。

 レーニンの少数者革命論の誤りは、これを悪用したスターリンによって世界の運動に深刻な影響を及ぼしました。しかしレーニン自身は間もなくその誤りに気付いたのではないかという徴候があります。歴史に「もしも」はないけれど、人間に「もしも」はいっぱいあります。彼の天寿にもう10年の加算が欲しかったと思うのは、必ずしも「草花の匂いのする機関車」への郷愁だけではありません。

2004.09.01(Og)
 
検証・憲法第九条の誕生  

 ─「押し付け」ではなく、自ら平和条項を豊富化した論議の全経過 ─


岩田行雄 編・著 

著者自費出版 
●2004年6月出版
●500円
  

 「九条憲法は押し付け憲法」論のウソをあばく、凄い資料をご紹介します。著者の岩田行雄さんはロシア文学、文化社会史の研究者で、その道40年のベテランですが、昨年末憲法九条のロシア語訳を手がけられ、その制定過程研究の為に通った1か月間の国会図書館調査の中で、押付け論の虚構を明らかにする公的資料を山のように発見されました。その白眉が、新しい憲法草案について議論した、「第九十回帝国議会衆議院本会議」、同「憲法改正委員会」、「改正案委員小委員会」、「委員会論議の経過と結果を報告した衆議員本会議」の全22回に及ぶ九条討議の全発言記録です。 (秘密会を含む)

 「戦争放棄」という発想は、いわばお誕生日のプレゼントみたいなもの、贈られた方がケーキが大嫌いなのに無理矢理たべさせようとすれば押付けです。ところが1946年、地獄の地を舐めていた一億国民、焼土復興に何がしかの責任意欲を持つ者にとっては、この発想はまさに天啓であったという事が、この箇条だけで3か月22回に亘る国会議事録で手に取るように判ります。一言でいえば提案者内閣総理大臣吉田茂以下政府側担当者と、100名に及ぶ議会側委員の全討議者が、単に日本再生のみならず、やがて世界秩序の理念となるべき展望を以て、与野党の立場を離れた忌憚なき全力投入の討議を尽しています。発想を押付けと感じた人間は、朝野に一人もいなかった事が判ります。訴追を逃れて身を潜めた少数の死の商人以外は・・・。

 敗戦後59年経ちました。戦争を知らない世代が人口の過半を占めて来ました。
 「憲法改正」が政治課題に上っている、とだけは知っている健全な普通の世間人の中にも「あれは押付け憲法だから再検討も・・・」と無邪気に考えている人が少くありません。しかし確かめてみるとその10人の殆ど10人が、「憲法を読んだことはない」人達なのです。無論政治権力に迎合したメディアの誘導の、単純な受入れで他意はないけれど、国民自身の命運を決める問題が、自分とは関係のない流行のファンタジーとして受取られているのに慄然とします。先の参議院選挙の結果にも、それが端的にあらわれています。「九条憲法押し付け論」の邪悪なウソを、全ての国民に知って貰うことが今絶対に必要です。

 自民・民主両党共来年中に憲法改正案を出すと言っています。公明は自民の間借人。国会議員の大半が憲法改悪政党に所属します。目指すところは無論「戦争放棄、戦力不保持」を揚げた第九条を廃棄して、コソコソ水運び自衛隊でなく、大威ばりで戦争できる軍国日本に戻すことにあります。

 政府が戦争を始めたら、トタンに国民の権利、財産、自由は全部政府に押えられます。その為の法律はもう出来ています。「国民保護法案」、何と狡賢こい名前でしょう。66年前のアジア太平洋戦争ではもう少し正直に「国家総動員法」といいました。家も財産も仕事も命も、親も子も夫も恋人も、全てを取上げて行ったのでした。  

 もし国会が九条改悪を議決したら、国会は国民の敵になります。憲法を殺す国会と活かす国民の、最後の決戦場が「国民投票」です。それはもう目の前です。
               著者自費出版  A5 172p. 領価 500円

2004.08.05(Og)
茶色の朝   


●フランク・パヴロフ 物語 ヴィンセント・ギャロ 絵
●高橋哲哉 メッセージ 藤本一勇 訳
●大月書店 ●2003年12月出版
●1000円+税  ISBN:4272600478

こんなにさりげなく重く、こんなに軽やかに深く、人生と世の中の関わりを描き出した本は、一生に何冊も出会わないことでしょう。これはフランスの心理学者フランク・パヴロフの書いた、実に優しく美しい詩文学です。ここには、世にも優しい言葉で世にも恐しいこと、心臓がのけ反るような歴史の事実が書かれています。
子ども・大人、学生・家庭〜社会人、凡ゆる日本人全部が、今、この詩人学者の訴えを聞いて欲しい。ほんの軽い風邪だと思って放っています。これくらいの熱はと思ってガマンして働いています。けれどお医者さんに見て貰った時は、もう取返しのつかないSARSだったのです。私もあなたも、家も町も国も亡びてしまう茶色の新型肺炎SARS・・・

後に添えられた哲学者高橋哲哉さんのメッセージがまた素晴らしい。働いてマジメに生きている市民が、その善良さのためにしらずしらず落込んでゆく奈落への道筋を、突き放さず、お為ごかしでなく、憂いと願いをこめて書かれています。高橋哲哉さんは現代日本の良識の代表と目される哲学者の一人です。

先ずこの本を買って(風の本屋でね)、表紙の帯から最後の47頁著者の紹介まで、一字も洩らさずゆっくりと読んで下さい。その上で、国民が政府に課した至上命令である平和日本国憲法前文に白を黒といいくるめる濡れ衣を着せて、正月早々日本軍隊を、イラク侵略の手伝いに送り出した物取(ブッシュ)純一郎政府の、「茶色化計画ダイヤ」を見ましょう。

※総理大臣靖国元日参拝     1/1
 ・遺族年金のこともあるんでねえ・・・
※陸上自衛隊先遣隊をイラクへ派兵 1/15
 ・軍服じゃ危ないって知ってるんだ・・・
※通常国会へ自衛隊海外派兵報告 1/19
 ・国会事後承諾、国民聾桟敷の試運転・・
※自衛隊イラク出兵反対デモをやめないと、札幌雪まつりに協力しないと威嚇。
 ・天神祭は自衛隊主催になるらしいよ・・
※来年度予算案、7兆円の国民負担増。
 ・年金80才まで生きてもまだ損・・
 ・医療費=年寄り、難病患者早く死ぬ方が
 ・所得税=貧乏人増税・金持大企業減税・・
※消費税大増税の予約取付け。
 ・1%で2兆5千億円、ホホやめられない
※国民保護法案、今期普通国会後半に提案。
 ・保護とは厚釜しい、戦争へ国民強制動員
 ・トイレットペーパー先ず配給制・・・
 ・隣組復活、壁に耳あり、くちびる寒し・・
 ・命令は全部町内会長から来る・・
 ・都市の木造住宅は解体疎開、行先なければ難民収容所へ・・・
 ・戦争の役に立たん商売・町工場自然廃業
※憲法改悪の為の国民投票法案、今国会提案
 改悪風汐盛上げにかからなくちゃ・・
※自民党の憲法改悪試案決定  今年11月
 ・叩き台があれば話が早くなる

2004.02.07
ちひろ美術館の絵本画家たち

松本猛 著
●新日本出版社
●2003年10月出版
●2000円+税  ISBN440603031X

エリック・カール、モーリス・センダック、長新太、いわさきちひろなど21人の絵本画家たち。絵とはまた違ったそれぞれの人間の内面とメッセージに新鮮な光を当てる。

2004.02.07

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