─「押し付け」ではなく、自ら平和条項を豊富化した論議の全経過 ─
●岩田行雄 編・著
●著者自費出版
●2004年6月出版
●500円
「九条憲法は押し付け憲法」論のウソをあばく、凄い資料をご紹介します。著者の岩田行雄さんはロシア文学、文化社会史の研究者で、その道40年のベテランですが、昨年末憲法九条のロシア語訳を手がけられ、その制定過程研究の為に通った1か月間の国会図書館調査の中で、押付け論の虚構を明らかにする公的資料を山のように発見されました。その白眉が、新しい憲法草案について議論した、「第九十回帝国議会衆議院本会議」、同「憲法改正委員会」、「改正案委員小委員会」、「委員会論議の経過と結果を報告した衆議員本会議」の全22回に及ぶ九条討議の全発言記録です。
(秘密会を含む)
「戦争放棄」という発想は、いわばお誕生日のプレゼントみたいなもの、贈られた方がケーキが大嫌いなのに無理矢理たべさせようとすれば押付けです。ところが1946年、地獄の地を舐めていた一億国民、焼土復興に何がしかの責任意欲を持つ者にとっては、この発想はまさに天啓であったという事が、この箇条だけで3か月22回に亘る国会議事録で手に取るように判ります。一言でいえば提案者内閣総理大臣吉田茂以下政府側担当者と、100名に及ぶ議会側委員の全討議者が、単に日本再生のみならず、やがて世界秩序の理念となるべき展望を以て、与野党の立場を離れた忌憚なき全力投入の討議を尽しています。発想を押付けと感じた人間は、朝野に一人もいなかった事が判ります。訴追を逃れて身を潜めた少数の死の商人以外は・・・。
敗戦後59年経ちました。戦争を知らない世代が人口の過半を占めて来ました。
「憲法改正」が政治課題に上っている、とだけは知っている健全な普通の世間人の中にも「あれは押付け憲法だから再検討も・・・」と無邪気に考えている人が少くありません。しかし確かめてみるとその10人の殆ど10人が、「憲法を読んだことはない」人達なのです。無論政治権力に迎合したメディアの誘導の、単純な受入れで他意はないけれど、国民自身の命運を決める問題が、自分とは関係のない流行のファンタジーとして受取られているのに慄然とします。先の参議院選挙の結果にも、それが端的にあらわれています。「九条憲法押し付け論」の邪悪なウソを、全ての国民に知って貰うことが今絶対に必要です。
自民・民主両党共来年中に憲法改正案を出すと言っています。公明は自民の間借人。国会議員の大半が憲法改悪政党に所属します。目指すところは無論「戦争放棄、戦力不保持」を揚げた第九条を廃棄して、コソコソ水運び自衛隊でなく、大威ばりで戦争できる軍国日本に戻すことにあります。
政府が戦争を始めたら、トタンに国民の権利、財産、自由は全部政府に押えられます。その為の法律はもう出来ています。「国民保護法案」、何と狡賢こい名前でしょう。66年前のアジア太平洋戦争ではもう少し正直に「国家総動員法」といいました。家も財産も仕事も命も、親も子も夫も恋人も、全てを取上げて行ったのでした。
もし国会が九条改悪を議決したら、国会は国民の敵になります。憲法を殺す国会と活かす国民の、最後の決戦場が「国民投票」です。それはもう目の前です。
著者自費出版 A5 172p. 領価 500円
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