「風の本屋と本屋の風と」@ 《見える千人、見えない千人》

おじいちゃんのエッセイが新聞赤旗に連続掲載されました。(8月1日掲載分)
「あーら、こんな所に本屋さんがあるの知らなかった。」若い女性が二人、話しながら店の前を通り過ぎたのには少々頭にきました。まる53年間、ここを一歩も動かず商売しているのです。昨今多少「やせても、枯れても」きているが、レッキとした駅前商店街、なのです。


 ここは大阪市旭区森小路。大阪市の東北隅にある旭区は、昔はちょいとした経済自立地域でした。その後、大阪の正面玄関梅田まで直結10分間の交通網が四通八達して、昔日の面影は薄くなりました。働くこと遊ぶこと、ショッピングも全部市中で充足し、夜マンションへ寝に帰る族にとって、地域で目に入るのはコンビニぐらいです。


 見える千人見えない千人。見える方の人はどう見てくれているのだろうか?


 風の本屋って変わった店だと聞いて取材に来られるメディアの方が時々ある。

記事になったものの中から一、二かいつまんでみます。 


「オリジナルのイラストが描かれたガラス扉の向こうに、子どもの心を育てる絵本や童話などざっと5千冊を超える児童書をはじめ、教育書、社会科学書を充実した書店。開店50年以上がたつ。ご主人の池田節夫さんは教育者、作家、編集者たちと広く交友し、自らも実際に熟読した新刊書を紹介する『風のたよれっと』を発行する。B4判の裏表に温かい手書きで、本に対する情熱をぎっしりつづった“お客さんへの手紙”で大好評を得ている。 良書がそろう広さ15坪の文化基地だ」(大阪日日新聞とOsaka C Workから抜粋)


 これだけ誉めてもらったらもう最高。本屋みょうりに尽きる、のだが・・・ 当人は、(こんな小さな店で)という語が省かれていると自覚しています。 



 文部科学省が本庁舎の正面に屋上から下まで届く垂れ幕で、サッカーくじトトゴールの宣伝をしています。犯罪的ハレンチ商魂です。売れる本を1冊でも多く売るのが本屋の正道であるけれど、“売るべき本”“売りたい本”にこだわる頑固者もいるのです。



 風の本屋に垂れ幕はないが、間口4メートル一枚ガラスの正面に、「ムリが通ってもドーリは引っ込まない」と大書した下に、有事法制やイラク派兵法に反対する書名が並んでいます。お客さんに渡す包装紙に刷り込んだ「憲法をあなたが見捨てた時、戦争があなたを捉えます」という呼びかけは、40年前から使っているものです。

                  

                 
(風の本屋名誉店長)