全国各地から直接放送可能なCS放送とその応用事業の提案

市吉 修            2007/1/6

提案の概要

完全同期TDMA技術の応用により沖縄から北海道まで全国各地から直接衛星に向けて送信し、既存のCS放送端末で受信可能な直接衛星放送網を提案致します。衛星報道車(SNG)により遠隔地の現場からの直接衛星放送も可能です。衛星中継器当たり最大10チャネルのTV放送が全国各地から実施可能です。

 

放送事業の発展性

従来の直接衛星放送は全国何処でも直接受信できる利点はありましたが、送信が一箇所に限られる事が欠点でした。全国各地からの放送を行うためには先ず現地から首都圏の衛星送信局までの長距離接続回線を設定しなくてはならず、送信費用も高くつきました。

本提案は既存のCS放送市場に対して全国各地から直接送信することを可能にします。従来全国各地の放送局の電波の到達範囲はだいたい県の範囲に限られましたが、それが一気に全国に広がるわけです。このことにより全国各地の放送事業者には新たな顧客の開拓の道が開かれ、全国各地の地場産業には直接全国向けの情報発信の手段が与えられる事により全国的な事業展開の道が開けてきます。

 

放送ディジタル化投資の有効活用

現在進められている地上波放送のディジタル化投資は各社50億円から60億円かかると言われています。全国的には一兆円近い膨大な資金が投入されますが、その効果は単にアナログ回線がディジタル回線に置き換わるだけでは非常に小さなものになります。地上放送と衛星放送とは映像、音声の符号化には共通部分が大きく、違いは単に電波様式の部分ですので容易に共用できます。衛星地球局は超小型地球局(VSAT)で十分であり、追加投資は相対的には極めて小で、その効果は放送地域の一挙全国拡大と極めて大、であるばかりでなく、地上波ディジタル放送の不感地帯の解消にも効果的です。

 

放送事業形態

全国各地の放送業者、ISP,ASP,一般企業、個人等の皆様に事業組合( 直接衛星放送事業組合、仮称)を作って頂き、組合がCSの一中継器を借りて共同で運用します。一中継器あたり、標準TV10チャネル程度取れますので各社が時間率1/10で用いるとすると100社が共用できます。

事業化に到る開発段階

事業組合の先駆体として開発組合を結成し会員が共同負担で開発を行います。事業化検討の上、システム設計、装置開発、導通試験、試放送を行います。 技術確認の上で事業組合を樹立して運用に入ります。

 

放送事業の発展に寄与

全国各地から直接全国向けの放送ができるとまず発信源が一挙に拡大するでしょう。通信分野においてインターネットの出現が果たしたのと同様の変革が起きると思います。放送業者の役割はISPと類似の機能になり放送の主役は発信者になると思います。例えばある地域の地場産業者がその地域の放送業者の設備を用いて直接全国に自社製品の宣伝を行う事ができます。試算によるとTV一時間当たり2,3万円の通信費用ですので毎日15分放送しても月額費用は15万円程度です。一日3回5分ずつ放送するとかなり詳細な製品の説明が可能です。インターネットはゴミメールや有害サイトの弊害がありますが、提案システムではそのような問題は防止できます。なぜなら何億というメールが飛び交いしかも発信元を偽るのが簡単なインターネットとは異なり本提案のシステムでは全国の送信局は高々数百で発信元は容易に特定されますので無責任な情報発信はできません。各国とも従来の全国放送は少数の業者で占められチャネルが狭い為、放送される内容の情報源が狭く、往々にして重要な情報がもれる事がありました。本提案のシステムでは全国各地の多種多様な情報源から信頼度の高い情報が発信されるので放送事業の一層の発展に有効です。

 

新たな応用分野の拡大

全国各地に多数の放送局ができると各地のISP,ASPが各種のサーバを放送局と直結してインターネットと直接衛星放送網を結合することにより従来不可能であった種々の応用が可能になります。

(1)   全国各地の離島、山間僻地からインターネットへの高速接続

(2)   離島、山間僻地を含む全国へのデータ一斉配信

(3)   離島、山間僻地を含む全国へのインターネットからのマルチキャスト、放送

(4)   離島、山間僻地を含む全国からの参加が可能な遠隔会議、公聴会、講演、授業など

最後の遠隔会議システムは本提案を最も特徴づけるものです。即ち全国どこからでも参加者の発言が全国どこでも聞こえますのでこれは全国が一つの村になり、この通信網が一つのLANになるようなものです。その意味でこれを直接衛星LANと名づけています。

直接衛星LANは地方の過疎高齢化と東京一極集中の弊害を是正して地方の活性化と均衡のとれた国の発展に寄与するものと思います。

 

提案者紹介

1973年に日本電気()に入社。以来衛星通信システムの開発に従事。1980年代に電電公社により実用化された完全同期TDMAのクロック同期部の開発を担当。2007/4NECを定年退職予定。その後はNEC在職34年で培った技術を社会に還元する事業を行う予定。詳細については下記URLを御覧下さい。

http://www5e.biglobe.ne.jp/~kaorin57/