全国から全国へ同報可能な新たな直接衛星インターネット網とその応用

市吉 修        

放送のディジタル化に伴い地上と衛星の統合による新な放送と通信の可能性が開けます。衛星DVB回線の上にIP信号を搬送して各種インターネット応用を提供するIP/DVB方式が今後の衛星通信の主流となると期待されます。従来のIP/DVB方式の問題点を明らかにし、新たな通信網の構成とその応用を提案します。

 

1.              総論

[1]  従来の衛星インターネットの問題

(1)   IP/DVBの伝送回線を提供する衛星DVB網は一箇所から送信する方式であるため、情報源と衛星送信局の距離が大きい場合には地上中継網や衛星回線等の長距離伝送路が必要であり、実施が困難でまた通信費用が高くなります。例えば直接衛星インターネット実況放送は実施困難となります。

(2)   従来の衛星放送は各国とも一社又は二社の寡占状態にあるため新たなIP/DVB通信事業を開拓する事業環境が狭く、また自由競争の欠如のため回線費用が高止まりするという問題があります。

(3)   広域放送メディアの集中はコンテンツの不足を来し、衛星放送および通信事業の全般的な発展の阻害要因ともなっています。

(4)   従来の衛星インターネットは衛星回線の特長を活かす事ができず、事業的には停滞傾向にあります。

 

[2]  解決の必要条件

上の問題を解決するためには次の条件を満足するシステムの開発が必要です。

(1)       全国どこからでも複数の小形地球局から衛星に向けて衛星DVB信号の同時送信が可能な事。

(2)       既存の衛星放送受信端末(CS放送)で受信可能な事。

 

[3]提案システムとその特長

本提案のシステムは上の必要条件を満足することができます。その特長は

(1)   一個の衛星中継器(30Mbps27MHz)を複数(10程度まで)の衛星DVB送信局で共用できます。

(2)   送信局は全国どこにも容易に設置する事ができます。車載SNG装備も可能です。

(3)   独自の技術により衛星からの信号は既存のディジタル衛星放送と殆ど同じ形の信号にする事ができるので従来のCS放送受信設備で受信可能です。

 

[4]新たな応用が可能

(1)   衛星DVB送信局を全国どこにでも設置でき、しかも一挙に全国向け同報が可能です。

(2)   そのため直接衛星IP/DVB通信網の事業環境が一挙に拡大します。

(3)   衛星DVB送信局に各種サーバを設置してインターネットで接続可能とする事により通信と放送を融合した新たな通信(全国的な万人会議やセミナー等)の開拓が可能です。

 

[5]市場性と社会的意義

(1)       既存のDSB受信端末で受信可能であるため、円滑な市場の立ち上がりが可能です。

(2)       衛星通信と地上通信、通信と放送を融合した新たな通信が実現可能です。

(3)       地方から全国に直接通信可能であるため、地場産業の振興に有効です。

(4)       放送及び通信メディア集中排除の原則を確実に実現できます。


2.直接衛星インターネット網の応用分野

 

上記サーバによってデータ配信システム(DS-CDN),遠隔会議(DS-TCN),在宅生涯学問網(DS-ACN),直接衛星インターネット接続(DS-IAN),直接衛星インターネット放送(DS-IBN)等を提供する事ができる。

 

各種DSxNの応用分野一覧

利用者

データ配信システム

DS-CDN

遠隔会議、

共同作業室 

DS-TCN

直接衛星学園

在宅学習

DS-ACN

インターネット衛星放送

DS-IBN

個人

電子図書館、電子博物館、電子音楽堂から好きな絵や書物、音楽を購入。

Web Browsingをして小さなデータはインターネットで即時入手、大きなデータは衛星網で予約配達を利用。

 

 

 

国民の一人として全国規模の公開討論に参加。

国会議員立候補者の立会い演説会に遠隔参加

住民自治の一環として地域住民会議に参加

地方選挙の立会い演説会に自宅から参加

全国規模の行事に参加.

・教養講座。

仕事のために新たな分野の学習。求職者に必要。

専門分野の最近の進歩を吸収。

自己の経験と研究成果を伝授。

生涯学習

登校拒否児童に学習環境を提供

週休二日の学校生徒に自主学習環境を提供。

 

多数の専門チャネルから選択して視聴、教養、娯楽。

国会、地方議会の審議を監視(国会TVの拡張)。

個人もしくは小企業ジャーナリストが全国向けに放送

大道芸人、素人楽団、劇団の演芸、演奏、上演を全国向けに放送。

芸術家後援

中小企業、SOHO

電子図書館、各種のデータセンターから仕事に必要なあらゆるデータをダウンロードし仕事に活用。

書斎を図書室、資料室、仕事場に変える。

 

 

公開入札

事業提案、公募

案件説明

契約交渉。

設計打合せ。Design Review.

進行中の事業の進度管理

共同設計作業

問題報告、解決のための打ち合わせ。

仕事に必要な分野の体系的学習

最新の先端技術を学習。

仕事に有効な関連分野の学習

自らの経験と知識を後進に伝授

遠隔学会

 

自社の特長を全国にPR.

新製品のPR

関連分野の放送を視聴して情報収集。

文化芸術後援

大企業

全国の支店に全社資料を一斉配布。

社内教育資料の一斉配布。

全国の支店間で営業会議。

その他あらゆる問題について全社の関係者が会議。

 

社内教育に活用。

顧客に自社製品について教育訓練を実施。

全国に自社の直接PR.

インターネット放送のスポンサーとして自社のPR.

大学、

専門学校、

研究機関

直接衛星学園の教材の定期配布(深夜帯)。

特殊な文献を入手

極く専門的な分野の成果を電子図書館に蓄積。

 

全国的な遠隔授業やセミナー

全国的研究会

遠隔学会

日常的情報交換

研究成果の事業化検討

(起業Frum

学園の提供主体、

学校教育を補完する自由な教育体系の構築。

学問立国

活動範囲を地域へ拡張

 

公開講座

公開実験

研究紹介

政府、

地方自治体、

 

官報、白書、広報その他公的文書の一斉配布。

特に画像音声、映像資料の配布。

住民の要求に応じて保管文書の配信。情報公開

利用者の予約に応じて電子書籍の配信

 

公的問題の公開説明、討論。

選挙立候補者の立会い演説会。

住民自治会議。

遠隔医療講演

非常災害時通信

 

公的な学科の公開講座。

衛生講演会

公務員教育

市民講座

 

公共機関の広報、PR.

国会、地方議会の放送、

地域関連の定期放送(朝夕)

地域関連の実況放送(競技会、その他行事の実況放送)

 

地域、団体

各種同人誌、同好会、同窓会等の会報等を定期配布。

新聞その他の報道誌の定期配布。

地域ニュースの全国配布。

NGONPOの全国活動

宗教団体の全国礼拝会。

各種団体の全国大会、会議、共同作業。

地域問題の全国公開または非公開の会議。

 

同好会の情報交換、セミナー等。

地域特有の文化、技術、特産物の研究。

極めて特殊な分野の研究団体の活動

 

地域から全国への情報発信

地域ニュースの全国報道。

各種団体の成果発表会。

特殊分野の専門放送。

NGOの活動広報

特殊な競技会の実況放送

 

 

 

 

 

 

 


3.本提案の直接衛星放送通信網の市場性 

 

3.1.既存の巨大市場の上に追加する新規応用

 

  提案DSBの市場性

l         従来の衛星放送網をそのまま活用できるため、事業の円滑な立ち上がりが可能。

l         我が国のCS放送受信者は約300万、

l         世界の衛星放送加入者数は約一億。

  提案DSxNの市場性

l         既存のインターネットの上に構築するため、利用者の費用負担を最小化できる。

l         ブロードキャスト及びマルチキャスト機能を有するインターネットを実現。

l         衛星通信、インターネット単独では不可能な新規事業を実現。

 

3.2.                           自立を求められる地方放送局

l         地方放送局とキー局は従来持ちつ持たれつの関係にあったが、衛星放送によってキー局は地方放送局に依存しなくても全国放送が可能になった。そのため

l         地方局は自立を求められているが、本提案の直接衛星放送はその有力な手段と成り得る。

− 放送地域の一挙全国拡大に伴う広告事業の拡大

− 地方放送局間でContentsの交換、相互利用

− 多数の独立した視点からの報道が可能。

l         マスメディア集中排除の原則を実現可能。

 

3.3.                           自立を求められる地方自治体、地場産業と地域住民

地方自治体

l         地方から全国に直接発信可能、観光案内、特産品紹介等を通じて地元産業振興に有効、

l         類似の問題を抱える地方自治体が情報交換、連携強化、例;離島間連携網など。

l         地域行政への住民参加の促進、例;国民あるいは県民規模の住民会議等。

l         遠隔地域の住民にも中央地域と同等の公報サービスを提供

l         行政の透明化、費用削減等、

地場産業

l         地方の企業が営業地域を地域から全国に拡大するのに有効、

l         生産者と消費者の直接交流による品質改善、輸入品に対する競争力強化。

l         中小、個人企業が全国規模の連携により共同で市場開拓、技術開発、生産力を高度化。

l         地方人口の増加により地産地消が進み、地場産業が発展。

地域住民

l         全国どこでも働ける環境の整備によりSOHOが全国展開可能、

l         均衡の取れた人口と産業の配置による生活環境の向上、少子高齢化の鈍化、逆転、

l         全国どこでも学べる環境の整備により、全国的に産業が高度化、国際経済の中で繁栄を持続。

l         議会の傍聴、各種公聴会、講演会にへの参加、e-Japan計画の目的を実現。

l         学問芸術の興隆、伝統文化の継承、新たな文化の創造、文化国家として発展に有効。


4.e-Japan計画の目的を実現

 

本提案で実現可能となる我が国の姿;

l         全国どこからでも容易に全国向けに同報が可能なことから多角的な情報社会が実現。

l         DSxNを活用して全国どこにおいても大量なデータを安価に入手、遠隔セミナー、在宅学習が可能なため、高度な知識の普及、学問研究の隆盛、伝統文化や技術の継承と発展が可能。

l         在宅でも地方議会や国会の傍聴、各種公聴会、国民会議や住民会議への遠隔参加が可能なため、民意の反映が容易になり政治の透明化、行政費用の削減が可能になる。

l         全国どこでも学び、働く環境が整い、起業風土が盛んになり、生涯現役社会が実現。

l         全国的な個人の連携により、目的を共有する多種多様な団体が勃興し、多元的な社会となる。

l         DSxNの上で全国の中小個人企業が情報交換、事業提携して技術水準を高め、生産力を強化。

l         その結果国内産業の空洞化問題が解消し国際経済の中で繁栄を持続。

 

以上の効果として我が国の抱える多くの課題が解決される。下表参照。

我が国の課題と解決への道

分野

課題

解決

 

農山漁業と地方

農山漁村の過疎高齢化と財政赤字の深刻化

SOHO等、新たな産業の地方展開とそれに伴う地方人口の増大により根本的に解決。更に少子化傾向も鈍化する。

東京一極集中と地方の過疎高齢化問題の構造改革が緊急に必要

同上

輸入農産物との価格競争に曝される地場産業の困難な状況

顔の見える生産者と消費者、産地直送と地域間交流、地産地消、新鮮で安全な食品の供給等により国内農林漁業が競争力を回復。

輸入木材による国内林業の衰退と国内外の環境破壊の進行

熱帯林、シベリア原生林の過剰伐採の禁止、地方人口の増加により国内林業が回復。国内森林環境の保全を全国で推進。

BSE、不当表示など食の安全問題

定期的な専門セミナー、産地と消費地の交流により情報公開と製品追跡技術が進歩し、新たな疫病の予防と食の安全が確保される。

減反政策による農地の荒廃

地方人口の増加により地元生産の競争力が復活、作物の多品種化も進み補助金依存から脱却、減反は不要となる。

原生林の消滅,杉、檜の過剰植林による花粉症公害

国内林業の回復と共に杉、檜の成木が伐採、利用され後に保水力に優れた広葉樹が植林され、毎春の花粉症公害が下火となる。

酸性雨による立ち枯れ等の環境破壊

地方人口の増加により奥地の林道まで入り込む自家用車が減り酸性ガスが減少。酸性雨の減少には国際的な環境保全の進展も必要。

棚田、里山の復活が急務

地方人口の増加と地場農林漁業の回復に伴い自然に復活。

製造業

国際競争の激化、工場の海外移転と国内産業の空洞化

国内産業の高度化が進み、海外の工場と分担する形で事業が国際的に発展し、我が国の繁栄を持続する。

国内失業率の高止まり

在宅学習網とコンピュータ通信網の活用により全国規模で分業と協業が進み、起業風土が勃興し、国内失業率が低下。

若年失業者が多いことによる技術の伝承の途絶

DS-ACNを活用して在宅で生涯学習を持続。全国規模で多種多様な学習過程が提供され、技術と文化が伝承される。

社会的問題

健康保険制度の保持が課題

生涯現役環境の整備により、熟年層の自立と健康増進により解決。

年金保険制度の保持が課題

生涯現役が普遍化して基本的に解決。

財政赤字

 

e-Japan計画の推進により行政費用を削減。上述の如く自立の風土が盛んになれば、個人消費が堅調に増加し経済成長が持続して10年程度で解消する。

特殊法人の赤字

特殊法人は毎月国民会議に事業報告させ、国民が事業を監督する。