差出人: Osamu Ichiyoshi
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件名: 二十一世紀企業研究会 ; 人間社会の価値の源泉
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人間とは交換する動物である
事は数年前に拙著「ガクモンのススメ」で論じたところです。人間は原始時代から物々交換をしていましたが実は遥か以前からかつ深いところで情報の交換をしていました。それは言語の使用です。言語は脳の構造、舌と口腔の生物学的進化により可能となったもので猿が知恵ある人間へと進化する過程の本質を成していると思います。
等価交換の原則
物々交換であれ、お金を媒介にした交換であれ等価交換が原則です。それは平均的には市場における相場として決まりますが個々の取引においては交換する人の正当と信ずる対価で交換が行われます。
価値の源泉は自然の恵みと人間の知恵にあり
今ある事業家iが原料費R(i)に労働者を雇って賃金CL(i)を払い、生産設備費用CP(i)をかけて生産したものに利益P(i)を乗せて価格S(i)で販売したとすると
S(i) = R(i) + CL(i) + CP(i) + P(i)
となります。国民経済全体ではある製品は次の生産活動の原料になるので
S(i) = R(i+1)
となります。国民経済ではその総和をとると
S = R + CL + CP + P = R + CP + W
となります。ここでRは原材料、例えば農産物、漁獲物、鉱業生産物の売り上げ総和です。
W = P + CLは国民総収入でありSは国民総生産=国民総消費です。
上の式から分かるのは人間社会の経済価値の源泉は原材料生産費Rと生産手段のコストCPである事です。Rは自然の恵みでありCPは人間の知恵の産物です。
等価交換だけでは発展は無い
上のモデルは均衡状態でありそれだけでは社会は停滞してしまいます。経済で言えばもうかるだけ作る、賃金に応じた分だけ働く、働いたら必ず対価を要求する社会の機能です。それは重要なことではありますがそれだけではいわゆるゼロサム(差し引き0,勝者がいれば必ず敗者がいる)社会であり発展性がありません。
自発的活動こそ社会の原動力
対価を無視して自己の内部から出てくる欲求に従って行う自発的活動こそ社会の発展の原動力だと思います。科学技術上の発明や発見、学問芸術の創造、社会的思想の探求と改革運動を推し進めた人達は外なる対価を求めるよりも内なる欲求に動かされて自発的に活動した成果だと思います。M.Faradayの電磁誘導の発見に対してある貴婦人が「それが何の役に立つのか」と問うたのに対してFaradayは「奥様、生まれたばかりの赤ん坊が何の役に立つでしょうか」と答えたそうです。電磁誘導はモーターと発電機の原理ですからまさに現代の機械文明の基礎であり、この問答は学問探求の本質を端的に物語っています。
政府の管理下にある学校教育の問題点
は生徒の(おそらく教師も)自発性を損なうことです。近代産業の礎を築いたJ.Watt, G.Stevenson, T.A.Edison, A.Carnegie, わが国では岩崎弥太郎、松下幸之助、本田宗一郎など多くの近現代産業の創始者は学校教育は少ししか受けず、早くから世の中に出て独学で大成した人達です。
自発的活動とは愛なり
愛とは代償を求めない自発的活動と定義されると思います。親が子供を育て、子供が年老いた親のせわをするのは代償を求めない自発的行動です。人が学問的探求、芸術的創造、社会的運動を行うのも自己の内なる声に従った行動だと思います。
社会発展の源泉は愛にあり
等価交換はいわば川に流れる水のようなものです。水源が枯渇すれば川の流れは消えてしまいます。水源は泉のように水が湧いてくる所です。人間社会でその水源に相当するものは代償を求めない自発的活動でありそれは愛だと言えるでしょう。学問探究の源泉は真理の愛、芸術や社会活動の源泉は人や生命に対する愛だと思います。小さな小川が無数に集まって大河に成長するように人と人とが協力すれば大きな力になると思います。
自ら考えて行動しよう
幸福の青い鳥は世界中探し回った挙句自宅にいたというのがメーテルリンクの作品ですが、さらにその根幹を探れば愛は各人の心にあると言えるでしょう。ならば如何なる問題であろうとも、他人に頼るよりも前に先ず自ら考えてやってみるのが大切だと思います。損得を抜きにしてやるべき事をやる、そのために努力する人は自ら光を発する灯火のようなものです。小さくても自ら輝いている人が増えれば社会は自ずと明るくなるでしょう。
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市吉 修
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二十一世紀を楽しく生きよう会
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