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送信日時: 201378月曜日 0:19

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件名: 自民党の憲法改変案を問う

 

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自民党の憲法改変案を問う。

先に東京新聞では自民党の憲法改革案を現憲法と並立して分かりやすく解説していました。今回参議院選挙にあたり自民党のHPでそれを探しましたが見当たりません。 https://special.jimin.jp/political_promise/i/constitution.html

 

ただ選挙向けにか、以下のように自民党案の要旨だけ記述してあります。

 

憲法は、国家の最高法規。

まさに国の原点です。

既に自民党は、現行憲法の

全ての条項を見直し、時代の要請と

新たな課題に対応できる

「日本国憲法改正草案」を発表しています。

憲法を、国民の手に取り戻します。

 

自民党「日本国憲法改正草案」

(平成244月発表)の主な内容

 

@ 前文では、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の3つの基本原理を

継承しつつ、日本国の歴史や文化、国や郷土を自ら守る気概、和を尊び家族や社会が互いに助け合って国家が成り立っていることなどを表明しました。

 

A 天皇陛下は元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴であることを記し、国や地方公共団体主催行事へのご臨席など「公的行為」の規定を加えました。国旗・国歌・元号の規定も加えました。

 

B 自衛権を明記し、国防軍の設置、領土等の保全義務を規定しました。

C 家族の尊重、家族は互いに助け合うことを規定しました。

D 国による「環境保全」「在外邦人の保護」「犯罪被害者等への配慮」「教育環境

整備」の義務を新たに規定しました。

E 内閣総理大臣の権限や権限代行を規定しました。

F 財政健全性の確保を規定しました。

G 地方自治の本旨を明らかにし、国及び地方自治体の協力関係を規定しました。

H 武力攻撃や大規模な自然災害などに対応するための「緊急事態条項」を新設

しました。

I 憲法改正の発議要件を「衆参それぞれの過半数」に緩和し、主権者である国民が「国民投票」を通じて憲法判断に参加する機会を得やすくしました。

 

自民党は、広く国民の理解を得つつ、「憲法改正原案」の国会提出を目指し、憲法改正に積極的に取り組んでいきます。

 

以下上記説明文について意見を述べます。

 

憲法を、国民の手に取り戻します。

==>自民党は現日本国憲法は国民のものではないと考えているのでしょうか。

日本国憲法は最後の帝国議会で審議、採択され時の首相吉田茂を始めとする政治家によって署名され、昭和天皇の名で発布されたものです。まさに国民の国民による国民のための日本国憲法ではないでしょうか。

 

A 天皇陛下は元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴であることを記し

==>元首とは行政の長であり、「国民主権」の下では国民により選挙されたもの以外ではありえません。自民党の案は論理的に矛盾していると思います。

  明治憲法では第一条において「大日本帝国万世一系天皇、コレヲ統治

とありました。この場合の天皇は明らかに元首です。元首であれば皇軍が犯した戦争犯罪について全責任を取る必要があったはずです。昭和天皇ご自身はその覚悟であったようですが、GHQのマカーサー司令官は天皇との会見でその意を知り、天皇制を保持する方針に考えを変えました。その結果昭和天皇は人間宣言を行って天皇制から神話的擬制を剥ぎ取り象徴天皇制を確立されました。

自民党案はこの昭和天皇のご努力をないがしろにするものだと思います。私は古事記を通読して天皇が実力を持っていたすなわち元首であった時期にはあらゆる権力と同じく血で血を洗う骨肉の争いが続いた事を知りました。歴史時代以降では壬申の乱、大化の改新あたりまでがそれです。藤原摂関政治以降は天皇の位を巡ってそれほどの流血はありませんでしたが、それは天皇が元首としての地位を失い、象徴として機能してきたからです。象徴天皇制は米国の押し付けなどではなく千年に及ぶ日本の伝統なのです。

 

自民党案についての全般的な所感は一見まとも、内容は浅薄、書き手が無責任という事です。具体的には以下に説明します。

 

主語が日本国憲法は「日本国民は」ですが自民党案は「日本国は」です。これは極めて無責任な書き方です。日本国民と言えば紛れも無く私達自身ですが「日本国」とは誰の事でしょうか。自民党案は明治憲法にならったのでしょうが、大日本帝国を無責任な政府にした(例えば国力にそぐわない軍備拡張のため農民に重税を課し、農民の大半を悲惨な小作人に転落させた)原因は明治憲法第一条にあります。特に軍部は天皇の統帥権を盾に帝国政府に従わず中国大陸において際限なく戦火を拡大して平和的な問題の解決を不可能にしました。大日本帝国において形式的には元首とされても天皇も一個の人です。中国大陸における皇軍の暴走を止めるはできませんでした。しかしながら昭和天皇は2.26事件や第二次世界大戦の終結場面においては無能な政治家や無責任な軍人に対して身を賭して元首として決断、行動されました。更に戦後の人間宣言と日本国憲法の発布によって昭和天皇は帝国主義から民主主義への日本国の歴史的発展に不朽の役割を果たされました。

「日本国民は」と「日本国は」とは文字は些細な差ですが意味は上述のように根本的な違いがあります。

 

B 自衛権を明記し、国防軍の設置、領土等の保全義務を規定しました。

==>これは言うまでもなく憲法9条の否定です。

人と同じく国にも自衛権がある事は自明の事であり、憲法に記するほどのものでもありません。

日本国憲法第9条は

@日本国民は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する。

A前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない。

とあります。これは「帝国主義の終焉」を宣言したものです。日本国憲法の前文と合わせて読めば日本国憲法が第二次世界大戦の痛切な反省の上に成ったものである事がよく分かります。

9条第二項の「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない。」だけ取り出せば自衛隊は違憲となりますが9条全体を読めば自衛隊の機能が自衛の範囲に留まる限り違憲とはなりません。

自衛隊を国防軍とする事は単なる名前の変更に留まりません。中国の土地で中国人と戦争をする事を「侵略ではなかった、学問的に侵略の定義は定まっていない」と強弁する安倍自民党であれば矛盾を感じないのかも知れませんが、シナ事変という言葉で隠蔽された日中戦争は「日本の権益を守る」、「日本の生命線を守る」などの「国防」名目で際限なく拡大された事を忘れてはなりません。

 

C 家族の尊重、家族は互いに助け合うことを規定しました。

==>これも内容は当たり前過ぎて憲法に載せるほどのものではありません。否むしろ有害です。先に大日本帝国だけでなく基本的人権を尊重し、国民主権の民主国であるはずの現在の日本国ですら国が行った戦争の最もか弱い被害者である戦争孤児、満州や中国に遺棄された日本人の幼児の救出努力を怠った事を紹介しましたがそのような恥ずべき無責任はここに自民党案が示すような家族思想に基づいていると思います。

このような家というものが如何に個人に対する重荷になるかは我が国の歴史を通じて数多の実例があります。「嫁して三年、子無きは去る」という諺は何と非人間的ではありませんか。第二次世界大戦以前のどの文学にも家というものが如何に人間を苦しめるものであるかを明らかにしています。夏目漱石の「道草」、森鴎外の「安倍一族」、伊藤左千夫の「野菊の墓」、更にさか上れば戦国時代には無数の家とその家族が滅び、筆舌に尽くしがたい辛酸をなめました。

日本国憲法は「日本国民は」「すべて国民は」、「何人も」などの表現によって「個人」を基にする考えに基づいて各条文を記述しています。それは上述の歴史の反省の上に立っているのだと思います。

 

自民党案を批判するには選挙目当ての説明文ではなく、原案そのものに当たる必要があります。自民党のHPにそれは見当たりませんでした。どなたかそれに至るURLをご存知であれば連絡願います。

 

以下余談です。

自民党政権によって自衛隊を国防軍に改変し、戦争できるようにすれば北朝鮮、中国、ロシア等が日本を恐れて日本に譲歩するでしょうか。実際は日本に対する安心感や信頼が失われ、徒らに国際緊張を高めるだけでしょう。現在日本と中国は国際会議においても外相同士が目も合わせないという最悪状態にあると言われていますが、そのため日中関係は危機的状況にあるでしょうか。私にはそうとは思えません。日本全国には多数の中国からの観光客が来ています。東京の街を歩くと至る所で中国語が聞こえます。私は中国の友達と普通にeメールを交換しています。日々多数の人々が日中間を行き来し、日本の大学では多数の中国人学生が学び、また中国人の教師が教えています。「戦略的互恵関係」は安倍首相の専売特許ではなく1973年の日中国交正常化以前から民間の努力によって種が撒かれ、今や何人も押しとどめる事ができない所まで成長して来ました。直接民間交流は既に国の範囲を遥かに越えて進んでいます。インターネットと航空網により世界が一つの地球村に縮小した現在、直接人間交流による国際平和は今やいかる反動政治屋も押しとどめる事はできません。

 

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* 市吉 修   Osamu Ichiyoshi

* 二十一世紀を楽しく生きよう会

* Human Network for Better 21 Century

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