福田・安保理論等に基づく健康法の要点

 

                            市吉 修

                            2017310

生物の略史

46億年前に地球ができ、約37億年前に生命が発生したと言われている。最初の生命は深海の熱

水鉱床などに生息し、硫化水素等の分解によりエネルギーを得ていたようである。当時の地球には空

中にも水中にも酸素分子は無かったが、約30億年前にシアノバクテリアが現れ、光合成を始めて酸

素分子が水中、空中に蓄積し始めた。当時の生物にとって酸素は猛毒であり、ここで生存のための大

きな難題が生じた。

この問題は原核生物から真核生物への進化により克服された。もともとの生物は原核生物と言われる

単細胞生物であった。その特長は遺伝子が細胞の中に散らばって存在し、顕微鏡ではその存在が見ら

れない事である。酸素という猛毒環境を生き残るためにある生物は酸素を原料にして光合成の逆動作、

即ち有機物を分解してエネルギーを得る有酸素呼吸を行う生物に進化した。さらにそのような酸素呼

吸生物を体内に取り込んで発生したエネルギーを貰って生きる共生生物に進化するものもあった。そ

れが真核生物である。真核生物は自己の遺伝子を格納する核を有しているのでそう呼ばれるが取り込

まれた共生細胞はミトコンドリアとして真核細胞のエネルギー発生のための一機構となっている。

真核細胞はエネルギー発生に二つの方法、即ち無酸素呼吸と有酸素呼吸を行う。無酸素呼吸において

はぶどう糖を乳酸に分解して2個のエネルギー分子ATPを得るが、有酸素呼吸においてはミトコン

ドリアにて乳酸をさらに水と炭酸ガスにまで分解して総計36個のATPを得る。原核細胞は条件さ

え許せば無制限に細胞分裂して増殖できるが真核細胞は分裂には宿主細胞と内包されるミトコンド

リアの分裂を共に行う必要がありより複雑な過程を取る。

生物進化の次の飛躍は単細胞生物から多細胞生物への進化であった。多細胞生物が成り立つためには

各細胞が置かれた体内の位置において所定の組織を形成するため、周囲の細胞と連絡して必要な限り

増殖し、あるいは増殖を停止し、更に不要になれば自ら消滅する細胞自殺、アポトーシスの機能が必

要となる。また生物体の内と外を区別し、外部からの進入物を排除するための機能、自然免疫機能が

生じた。

更に大きくなる体を支えるための骨格系、体の各部が情報伝達するための神経系、物資輸送のための

循環器系、化学作用のための内分泌系、酸素を各部に配送し、炭酸ガスを集めて体外に排出するため

の呼吸器系、そして体の内外で発生する自己とは異なるもの、非自己物を認識して排除する免疫系な

どの機構が発達した。

生物進化のもう一つの大きな飛躍は約4億年前に生じた水中から陸上への上陸であった。体重を支

えるための骨格の発達に加えて新たな感染症に対処するための獲得免疫機構が生じた。獲得免疫は外

部から進入する無数の種類の微生物や異物を認識、排除し更に記憶する事ができる。前にかかった病

の病原体が侵入するとそれを記憶している免疫細胞が増殖して特有の抗体を大量に生産して病原体

を破壊する。この作用を利用するのがワクチンである。

人間の際立った特長は脳にある。人間の脳は爬虫類、哺乳類、人類の三層構造に成ると言われる。

爬虫類脳は呼吸や性欲など体の生存、哺乳類脳は記憶や感情、人類脳は思考や意志に関わると言われ

る。人類脳の特長は言語を駆使した仮想的な情報処理を行う所にあると言えよう。

 

人間の生存と健康を守る仕組み

人の健康は自律神経系、内分泌系、免疫系の相互関係の上に保たれている。自律神経系は交感神経系

と副交感神経系の二系より成る。交感神経は生体の活動、興奮を、副交感神経は休息、再生を進める

ように体の各部を制御すると同時に、神経末端にてそれぞれアドレナリン、アセチルコリンを分泌し

て免疫系と内分泌系を制御する。交換神経優位の状態では自然免疫の顆粒球が増殖して細菌などの体

外からの進入者を呑食して殺し膿となって排出される。副交感神経優位の状態では自然免疫のNK

細胞などが癌細胞など体内に発生する異物を排除し、獲得免疫のリンパ球が抗体を造ってウイルス等

の病原体を駆除する。自律神経の源は脳にあるため、人の健康には脳のあり方が非常に大きく影響す

る。「病は気から」という諺は病気の本質を良く言い当てている。

 

人の病気の原因

はストレス、即ち心身の苦悶にある。心身が苦悶すると体は闘争体制、交感神経優位の状態になり、

顆粒球が増殖する。これは数日の寿命しか無く、その死滅する時に活性酸素を放出して組織を傷つけ

る。従って苦悶状態が続くと体のあちこちが傷み、修復が追いつかなくなり、やがて病気になる。

 

人の病気の三大要因

低体温、低酸素、高血糖が人の病気の三大要因である。心身の苦悶により交感神経優位の状態が長く

続くと血管が収縮して血流が滞り、末端まで酸素が行き届かず、低酸素、低体温状態になる。低酸素

状態ではミトコンドリアによるエネルギー生産が困難になるため、そのような部位の細胞は無酸素呼

吸、即ち解糖系のエネルギー発生により生存しようとする。体の活動が低下すると血中の糖分が増加

し、ますます解糖系に頼るようになり、遂には原核細胞への先祖返りの道を歩み始めて癌化する。低

体温は免疫細胞の活動を抑制するため癌細胞が排除されないまま長年増殖を続けると遂に癌が発生

する。癌細胞を殺す担い手のNK細胞(Natural Killer)は心が抑圧された状態では著しく活性が殺が

れる事が知られており、その状態が長期化すれば癌を発症する危険性が増す。

 

人の健康法の要点

以上の事から一つの健康法の要点をまとめると次のようになる。

 

食事

[1] 野菜、果物を十分食べる

体の組織を破壊する元凶は活性酸素である。活性酸素は免疫細胞が病原体を破壊するのにも使われる

し、ミトコンドリアのエネルギー生産にも伴って生成されるが、抗酸化酵素により無毒化される。体

内の抗酸化酵素の不足を補うためにはそれを沢山含む野菜、果物を十分食べるのが良い。市販の野菜

ジュースを飲むのも効果がある。

[2] 海草、キノコ類を食べる

海草やきのこ類には免疫機能を強化する成分が含まれると言われている。また海草、キノコ、野菜、

果物に豊富な繊維質は腸の働きを刺激して便通を良くすると共に、腸内細菌の餌ともなり善玉菌を増

やして免疫力を強化する。

[3] 甘いものを控える

癌細胞はエネルギー生産を解糖系により行うのでミトコンドリアによる有酸素呼吸の約20倍糖分を

吸収し易い。この性質は医療において体内の癌細胞の分布測定にも利用されている。運動不足や甘い

ものの摂り過ぎにより血中の血糖値が高いと癌細胞の増殖に好適な環境となる。

[4] 腹八分

食べ物は活力の本ではあるがその消化自体がエネルギーを消費するので満腹しても利用できる活力

はそんなに増えない。また余った栄養分は体内に脂肪として蓄えられ、肥満を生じる。肥満すると動

くのが億劫でますます運動不足になり更に肥満する悪循環に陥り易い。肥満は脂肪肝や高血圧を招き

やすく、種々の生活習慣病の原因と成る。カロリー制限が寿命を延ばし、健康を増進する事は種々の

動物実験や疫学調査から明らかにされている。食事は腹八分目が良いとされるが、そのための方法は

食事中に箸をおいて口に入れたものを良く噛む事である。噛んだ回数が多いと脳の満腹中枢が反応し

て食べ過ぎを防止する事ができる。

[5] 偏食をしない

生体の活動には極めて多くの元素が必要である。偏食をすると特定の元素が不足し易い。従って多種

多様な食物をバランス良く食べるのが良い。多種多様な栄養を含む食物の一つは玄米である。玄米は

白米に比べて消化がよくないので、よく噛んで食べる事が必要である。

 

運動

病気になり易い体内環境は低酸素、低体温、高血糖であり、その原因は心身の苦悶、生活の無理であ

る。心身の運動は血液循環を盛んにし、全身に酸素を供給し、体温を上げ、血糖値を下げ、更に気晴

らしにもなるので健康増進効果は絶大である。また日中に十分運動すれば夜間にぐっすり睡眠を取る

事ができる。

 

入浴

病気の主要な原因である低体温を治すには適度(3840)な湯につかるのが有効である。ゆったり湯

につかれば副交感神経優位になり血管が緩んで全身に血が行き渡り、低酸素環境が解消されるばかり

でなく免疫が強化され外部から侵入する病原体や内部で発生する癌細胞が駆除される。

 

睡眠

生体は睡眠中に免疫が活性化して病原体の除去、癌細胞への攻撃を行う。夜間に良質な睡眠を取るた

めには日中の活発な心身活動と心に悩みを溜め込まない事が必要である。日記をつけるとその日の事

を外に吐き出す事ができるのでよく眠る事ができる。

 

生活の改善

[1] 病気の原因は心身の苦悶にあり、苦悶の原因はその人の生活環境と考え方にある。前述のよう 

  に人の健康を守る仕組みは自律神経に制御された内分泌系と免疫系の働きにある。自律神経の源

  は脳にあるので健康の本は脳の働き、即ち心にあると言えよう。

[2] 仕事に追われて長時間労働による肉体的疲労や睡眠不足、人間関係における気苦労、仕事や試

  験の失敗、家族の病気や死別、自然災害など、人生は苦難に満ちている。その深い煩悶が長く続

  くと自律神経の失調が起こり、体調を崩したり、感染症にかかったり、癌を発病したりする。

[3] 従って心身の健康を保つには生活の改善、心の成長が必要不可欠である。

 

病気からの回復法

[1] 病気を悲観したり、逆に負けるものかと闘争心を燃やして無理したりすると交感神経優位になり、

  前述の病気を治す体の仕組みが働かず、返って回復が遅れる。そこでまず現実を受け入れ、

[2] 病気は「生き方を変えよ」という体の信号だと考え、生活を見直し、改善する。

[3] 生活の無理や偏った食事を改め適度な運動を行い十分な睡眠を取れるよう生活を改善する。

[4] 医療は対症治療であり、病気を治すのは病人その人の心身の働きである。高熱、咳、鼻水、痒み、

  痛みなどの不快な症状は人体の回復に伴う症状(好転反応)であり、無理に抑制しない方が良い。

  例えば40度もの高熱は不快ではあるが、免疫系の活動に伴う自然な体の反応である。また

  その温度では癌細胞は死滅すると言われており、癌の温熱療法の根拠となっている。

[5] 病状については医者の説明を良く聞いて病人自身が納得できる治療法を選ぶのが良い。

[6] 感染症も癌も病原体を駆除するのはその人の免疫の働きである。漢方医療、鍼、灸、按摩、足裏

  マッサージ(リフレクソロジー)、爪もみ(手足の爪の生え際を強く圧迫する)療法などは免疫力の

  強化により効力を発揮する。

[7] 前述のように免疫系も内分泌系も自律神経系により制御されるので脳の働きが心身の活動の源

  である。笑いは百薬の長(Laughter is the best medicine.)と言われるように笑いの治療効果は実

  践的にも理論的にも十分証明されている。

     人間の心と体は一つなり、こころよければ体もよくなる

     楽しみが心に満ちれば苦しみは、心の隅に消えて行くなり

     苦しきを笑いて楽しむユーモアは、万薬に勝れる薬にぞある

     人間は心と体を動かして、こころよければ体もよくなる

[8] 心の持ち方

  脳の働きが健康の本だとすると心の持ち方が重要になる。人間の心の特長は何であろうか。前述

  の如く人類脳の特長は言語による現実を越えた思考力にあると思う。人が過ぎ去った事を悔やん

  だり、未来の事を怖れたりするのはこの人間特有の思考能力による。人の最大の怖れは自己の死

  であろう。特に癌などの難病にかかるとそれは圧倒的な苦悶となる。前述のごとく苦悶は免疫力

  を弱めるので更に治癒を遅らせる悪循環に陥りがちである。この悪循環の輪を断ち切る鍵は人が

  その思考力により肉体の桎梏を越えて自己を拡張できる能力にあるのではあるまいか。

  世の中には余命宣告され、ホスピスに入ってから癌などの難病を克服して健康を取り戻した人々

  も多数ある。その人たちに共通するのは病気の原因となっている生活の無理に気づき、ものの見

  方、心の持ち方を変え生活を改善した事である。毎日ありがとうと唱えて癌が治った人もある。

  例えば下記URL(がんの辞典)を参照の事。

  http://www.gan-jiten.com/

 

参考文献

[1] 安保徹                                  「安保徹のやさしい解体新書」   実業の日本社

[2] 福田稔                                  「病気が治る人の免疫の法則」    WAVE出版 

[3] 寺山心一翁                                「がんが消えた」         日本文教社

[4] 長友明美                               「がん、五人の名医に活かされて」

[5] 伊丹仁朗、サトウサンペイ     「笑いの健康学」                           三省堂

[6] 済陽高穂                                 「今あるがんが消えて行く食事」     ビタミン文庫 //