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送信日時: 平成 20年10月12日日曜日 1:37
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金融バブルの破綻の影響
米国発の金融破綻の影響が株価を見る限り1929年の大恐慌の再来を思わせる程の様相を見せています。私は株をやっていませんのでピンと来ないのですが、それが実体経済、特に我々の給料や年金にどんな影響を及ぼすのかが不安です。
新聞等を読むと株価の下落は資産価値を減らして個人消費が冷え、企業の含み資産の減少とあいまって景気が悪くなるようです。
それにしても一日で何兆円もの資産価値が消滅するなどという事は何か変だという感じを禁じ得ません。
私は技術者であり実体経済しか考えられないので今回の金融システムの機能不全の全体像がピンときません。私が金融にお世話になったのは住宅ローンを借りた時です。それまでのアパート暮らしから庭付き住宅に引っ越した時は実にうれしかったですね。それから30年近く経ってローンも完済しました。借りたお金に利子をつけて返済し、その利子が金融機関の利益になり、貸し手も借り手も大きな利益を得ました。
今日報道された大和生命保険の破綻も全く理解困難です。生命保険は言わば互助会であり、会員から集めたお金をプールして不幸にして亡くなった会員の遺族に補償金を払う仕組みが何故破綻するのか理解困難です。
株式は会社を立ち上げる時の資金集めと会社の利益を配当として株主に還元する実に素晴らしい仕組みだと思います。理解できないのはそこから先でその株の価値が短期間に2倍になったり1/2になったりする事です。人的、物的、知的資産の総体である会社の企業価値はそんなに簡単にふらつくものではないはずです。ここに今日の株式資本主義には大きな欠陥があるという感じがします。
虚の世界
私は虚というものに限りない不可思議さを感じています。前回瞬時周波数という論理的矛盾した概念を用いて装置設計をする不思議をお話ししましたが、考えて見ると人間の思考の産物はすべて虚だと思います。数学で虚数というものがあります。英語ではImaginary number,即ち想像上の数と言います。虚数は本職の数学者の中でも定着するまでにかなり長い時間がかかった歴史がありますが今日では虚数は数学の大黒柱に他なりません。既に古代ギリシアで知られていた有理数(rational number)や無理数(irrational number)にしても人間が頭の中で考え出したものです。数学に限らず凡そあらゆる学問は人間の想像の中にのみ存在する人間の創造物に他なりません。絵や音楽もそうですね。如何に本物そっくりに描かれた絵でも物理的には紙に塗られた絵の具にすぎません。しかしその絵が虚の世界で何かしら真実を伝えるから見る者に作者の感動が伝わるわけです。
金融は虚の経済か
よく金融は虚の経済だと言われます。生命保険会社や銀行が大衆から集めたお金を株や不動資産、穀物市場などに投資して運用しますが、今回はその機構の歯車が狂ったわけです。発端は米国の住宅ローンの破綻でした。低所得者に貸し付けたローンは高額所得者に対するローンよりも金利が高いそうですが、まずそこに矛盾があります。よくHigh risk, high returnと言いますが、これは根本的な矛盾ではないでしょうか。低所得者には多少小さな家でも安価な住宅を低利のローンで貸し付けるのが本来の金融のあり方ではないでしょうか。またローンの返済ができなくなれば返済期間を延長するとかすればやがて完済する場合も増え、その間金融機関の利益は一時伸び悩むかも知れませんが、結局は計画していた利益は確保できると思います。現実はローンが払えなくなると債権者に住宅を差し押さえられて住民は自分の家を追い出されるばかりでなく、叩き売りされる住宅が増えるのですから当然住宅価格は下がり、銀行の資産も減り、金貸し自身の経営にもマイナスになります。後は連鎖反応で損失が金融界全体に波及し、やがて実体経済が不況に陥る結果になります。
住宅バブルは我々も切実な経験があります。1970-80年代には住宅価格が値上がりを続け、早く家を建てなければ永久にマイホームが手に入らなくなると焦ったものです。バブルのピーク時には住宅価格は2倍程度まで上がりました。そしてその住宅たるや100m^2そこそこで田舎出身の私から見ると実に狭い。
1990年代にバブルがはじけ、まず住専が破綻しました。その後は住宅価格が下がり続けてデフレ時代に入りました。この間政府は景気対策として公共事業を主にした景気刺激策を続け、リゾート法なるものを作って地方自治体に箱物建設を奨励した結果、夕張市や大阪府に代表される地方の財政破綻と国自身の財政破綻、800兆円という目の眩むような国債残高が国民に重くのしかかっています。
虚の世界は学問が必要
学問の世界と金融バブルは同じ虚の世界でも全く異なります。学問は理論が確りした概念と論理によって体系化されていますが、金融バブルは論理を忘れた所に発生すると思います。根本的には単なるものの売り買いで真の利益を上げることはできないという事ではないでしょうか。私が借りた住宅ローンは貸し手も借り手も共に利益を得ましたが、それは単なるものの売り買いではなく確固とした理論、即ち返済計画と家の手入れ、保守技術に基づいています。これこそ真の金融工学であり債券化に偏った米国式の所謂金融工学は誰かが言いましたがリスクの分散と言いながら実はリスクを拡散していたもので工学と言える代物ではありません。
不況に入ると皆気持ちが暗くなって世の中全体が沈んで来ます。バブルの時は単純に右肩上がりの経済成長が持続するという期待に踊らされ、不況の時は右肩下がりが何処までも続くという不安に囚われて気が滅入るのは大いなる不幸ではないでしょうか。そこで一つ提案があります。不況の時こそ学問をやりましょう。好況の時は残業続きで学問をする時間が取れませんがが、不況の時は収入は減っても、時間は増えますから日ごろできない事をやる事をお勧めします。数学、科学、外国語、歴史、地理、文学、芸術など広大無辺な虚の世界があります。それが現実の世界に合うのは不思議なものです。私は無線技術者ですが通信衛星を介して大西洋の真ん中から世界中に電話を掛けられるのが不思議でなりませんでした。自分でそれを設計したのだから論理的には当然なのですがその分返って玄妙不可思議の感に打たれます。
フロイトは人間の意識の下にはそれよりも大きな無意識がある事を明らかにしましたが、実の世界の下にはそれよりも広大な虚の世界があり、そこを旅するには想像力が必要であり、そこに道をつけるには思考力が必要であると思います。しかしそんな事は忘れて現実の世界の山を歩き、川を渡り、自転車で遠出をするのも良いですね。仲間と草野球で汗を流し、宴会を催すのも良ければ一人でじっくり考えるのもよし、要するに不況の時は徒に悲観的になるのではなく却ってその機会を活用するのは如何でしょうか。
金融バブルがはじけて良い事もある。
実は私は米国経済が破綻して良いことがあると考えています。それはイラクやアフガニスタン、パレスチナに平和が来るのではないかという期待です。唯一の超大国、世界の軍事費の半分近くを占める軍事超大国という米国こそ最大の虚像でありバブルであったと感じています。国際社会の中で米国の影響力は今までより遥かに低下すると思いますがそれによってやっとイスラエルも本気で身の丈にあった生活を始めパレスチナと平和共存する道を求め、イラクやアフガニスタンでも敵対者間で対話を求める動きが本格化してくると思います。
国家の支配力が弱まり、国民の発言力が強まれば世界は自ずと平和になると思います。まじめに働いて自分と家族を養っている一般大衆には他の人間の支配や搾取は全く不必要ですので。
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* 市吉 修
* 二十一世紀を楽しく生きよう会
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