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送信日時: 平成 191125日日曜日 0:51

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件名: 二十一世紀企業研究会

 

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二十一世紀企業研究会とは

「人が全国どこでも学び、生涯現役で働ける企業」を提案し研究

する会です。研究しながら二十一世紀企業を始めましょう。

 

石油や穀物の値上がりに思う

石油が取引市場でついにバーレルあたり100ドルを越え、また穀物の価格が値上がり傾向にあるようです。その原因は需要の増加、生産の不足にあるのではなく、投機に起因する所が大きい様です。実際の需要、生産高によらず投機によって生活必需品の暴騰や暴落が起こるのは実に迷惑な話です。

 

交換こそ人間を他の動物から区別する特長であることは拙著「ガクモンのススメ」で論じたところですが、交換の道具として発明されたお金が道具の分際を越えて人間を苦しめるものに変じているのは文明の矛盾であると思います。1929年の暗黒の木曜日と言われるNew York株式取引所の株価の暴落以来世界を襲った大恐慌は不景気-->失業増-->物が売れない-->不景気の悪循環に陥りました。都会では人々が食べるものが買えなくて困っているのに農村では売れないから折角実った作物が収穫もされず立ち腐れているという実にバカバカしい光景が普通に見られました。不景気の打開策として「持たざる国」の日本は中国大陸への侵略の道を突き進み、ついに第二次世界大戦に突入して大日本帝国は破滅しました。この間の国内、海外に生じた惨害を思えば人間の文明には根本的な欠陥があると言わざるを得ません。

 

その欠陥とは「お金がお金を生む」ことに対する迷妄があると思います。お金が物の流通に役立つ-->経済が成長する-->利子や配当が生ずる-->お金が増える という循環は正常な経済活動ですが、大量の資金を投入して生産物を買い占める-->価格を高騰させる-->機を見て大量に売り、大儲けする という投機は交換の邪魔でしかありません。この前NHKスペシャルで放送され

ましたが米国の農家は市場で少しでも高く売れるものを作るビジネスに徹しており、インターネットで刻一刻表示される農産物の取引価格に一喜一憂していました。

 

お金は極めて便利な手段ですがそれが目的に変わると前述の不便、それどころか不幸の原因に変じます。その弊害から離脱するためには従来の市場に変わる新たな市場経済が必要になると思います。私は経済学には素人なので専門家に教えて貰いたいのですが、世界中の穀物の取引をなぜシカゴの取引所で行い、また原油の取引をNew Yorkの取引所で行わなくてはならないのでしょうか。

最も自然な産業構造は地産地消だという気がします。すなわち無数の地域社会に無数の市場がある状態です。いわゆる相場師が活躍するのは兜町の株式取引所とか堂の島の米取引所などの全国的な一極集中の市場において生ずることだと思います。そのような広域市場経済では売り手と買い手は相互に連絡もなく売り手はできるだけ高く、買い手はできるだけ安く買うという経済原理が貫徹し、そのために食品の賞味期限や建材の耐火特性、住宅の耐震強度の偽装などの不正が生じています。他方地域経済においては買い手と売り手は直接取引きでお互いを知るのでそういう不正を働くわけには行きません。経済の広域化とは通信網の発達によって生産者と消費者が距離

を越えて直接取引きを行うことであり、地域経済の本質は変わらないと思います。地域経済の一つは地域通過、すなわちEco moneyであると思いますがそれは実際上地域限定、生活密着市場だけで機能すると思います。経済の広域化には全国的な通貨は必要不可欠だと思います。

 

私はお金と物の価値について考える時があります。交易においては物とお金が交換されますので、両者は等価であると言えます。ところが物は消費されれば消失しますが、お金は消えることはありません。それにも関わらず両者の価値が一定であるすなわち物価が一定しているのはなぜでしょうか。たんす貯金は経済の流通の外にありますが、その価値が保持されるのは何故でしょうか。

株の取引がZero-Sumである事、すなわち儲けの全体と損失の全体が等しいのは明らかですが、Sum-Sum,すなわちすべての人が儲け、貯金し、豊かになることは可能でしょうか。もしそれが可能ならばどこかで富が創造され、あまねく分配されている筈ですが、富の創造と適当な分配を実現するのは如何なる構造の経済でしょうか。

 

石油、穀物、金属その他の資材の価格はこれから上がる一方であると思われます。その中で日本における我々は如何なる産業を興し、いかなる社会を築いて行けばよいのでしょうか。

 

以上素朴な疑問ですがご意見のある方は披瀝して頂きたいと思います。

 

<続き,12/2発信>

前回の通信に対して何人かの方から返信を頂きました。ありがとうございました。ここで前回の問いに対する私の考えを述べて皆様のご参考に供したいと思います。

 

Zero Sumの限界

株式取引では儲けと損失は総計すると零になるのは明らかです。このZero Sumすなわち「勝者があれば敗者があり」という考えは文明の発生以来長年の間に人間の考え方にこびりついており、

今も極めて多くの社会問題の原因になっているのではないかと思います。

先日収賄容疑で逮捕された元防衛次官は同期の中では最後まで残った勝者であり、他の同期は何年も前に役所を早期退職した事と思います。一般の企業においてもピラミッド型階層組織では狭くなる組織の階段を最後まで上るのは極く少数であり大半の人は早期退職と転職を余儀なくされています。このような出世競争は正にZero Sum、即ち相殺型の社会であり、このため社会的にも損失が大きいと思います。

例えば今の防衛省自衛隊の実力は極めて低いと思います。防衛の専門家集団たる防衛省が設備の調達になぜ商社に頼らなくてはならないのでしょうか。仮に防衛省が従来のようなピラミッド型

階層組織ではなく平坦な仕事本位の組織であったならば守屋前事務次官の同期が夫々の分野で長年積んだ経験と知識を活かして商社などを介さずとも自ら関連メーカから直接装備を調達して、防衛システムを構築することができた筈です。いかなる分野でも専門技術と知識の習得には長年の経験と研究を要します。ところが従来のピラミッド型階層組織はそのかけがえの無い人材を無理やり放逐しているため、無能で無駄の多い組織となり、官僚の天下りによる関連企業と官庁の癒着や腐敗が生じ、今回の事件と同様な犯罪が後を絶つことがありません。

また一般企業においては技術開発とシステム構築の能力の衰退となって現れています。所謂失われた10年と言われる経済の停滞の真の原因はそこにあるのではないでしょうか。

 

富の源泉

前回経済成長の源は何かという問いを発しました。即ち誰もが交易の中で余剰を生じ金を貯め、豊かになれる社会は有り得るのかという問いです。特に交易される物は消費されると消えるのにお金は消えない、それにも関わらず物とお金の相対価値、即ち物価が一定であるのは何故でしょうか。

後の問いに対する一つの答えは物の消費は同時に別の物の生産に他ならない事だと思います。典型的にはある機械と燃料や材料を購入して動かすと機械は減耗し、材料や燃料は消滅しますが同時に新たな製品が生産されています。このように消費と生産とは常に相伴っています。そして諸国民の富が増大するには生産が消費に対して付加価値を生じなくてはなりません。食べ物は消費されると消滅しますが、同時に人間を生産しています。そしてその人間こそ根源的な富の源泉であると思います。

前述の第一の問いに対する答えは次のようなものではないでしょうか。今は昔、学生時代にマルクスの本で「社会の構造を決める究極の要因は生産力である」という事を読んだ記憶がありますが今考えてもその通りだと思います。私は更に生産力の源は知識であり、更にその源は学問であると考えます。更に学問の本は人間そのものですね。

生産力の本が知識であることは技術者としての立場からは自明の事です。私も会社勤務時代に様々な装置を設計して製品化しましたが、設計し、製品開発を行うのは生身の人間であり、その本は学校や仕事で学んだ専門知識です。

知識の際立った特徴はそれがZero-SumではなくSum-Sumであることです。私が学生を集めて代数学についての講義を行い、Galois拡大体の知識を学生に授けたとするとそのため私の知識は減るどころか返って増えています。このように知識の特長はあたかも生物のように増殖して生長できることです。従って学問こそ生産力を通じて人間社会の成長と進化の推進力であると考えています。

以上の論点のより詳細については拙著「ガクモンのススメ」をご覧下さい。

 

二十一世紀を楽しく生きる為に「人が全国何処でも学び、生涯現役で

働ける」企業の研究と実践を呼びかけている理由は正しくそこにあります。

 

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*  市吉 修   

*  二十一世紀を楽しく生きよう会

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