直接衛星LAN事業研究会

                                                                      2008/9/27

                                                                      市吉 修

1.       目的               

全国何処からでも直接発信可能でかつ双方向の通信が可能な直接衛星放送網を実現する。

 

2.  システム           

 

(1) 完全直接衛星放送 (Complete DSB)  

全国何処からでも超小型衛星地球局(VSAT,車載型も可能)で直接CSに向けて発信し、既存のCS放送端末で受信可能なシステム。一中継器当たりTV10Ch相当。ちなみに衛星には中継器が30台程度搭載され現在半分は遊んでいる。このシステムは放送業者レベルの直接衛星LANになる。完全直接衛星放送の意味は送信も受信も全国どこでも直接に衛星と通信する事である。従来のCS/BS放送は受信は直接であるが送信は東京一極集中であり地方からの発信は東京を介した間接通信になっている。

 

(2) 直接衛星LAN

上記完全直接衛星放送の送信局にサーバを設置してインターネットと直接衛星放送を結合する。衛星放送回線はIP/DVB方式で衛星放送回線を用いてIP通信を行う。IPアドレスはLocal IP addressを用いる文字通りの直接衛星LANである。前記サーバはIP Masqを用いたNAT変換を用いてIP信号を衛星放送回線で伝送する他にApplicationとしては

- 番組表制御 ; 利用者はインターネットを通じて番組表を読み出し、空いている時間に予約を入れる。予約した時間に次のようなサービスを受ける。

- 蓄積番組放送; 利用者が予めサーバに蓄積しておいた番組を時間と共に放送する。

- 一斉データ配信; 利用者はサーバを通じて電子図書館でデータを探索し、目的のデータの配信を予約する。配信サーバはそのデータの一斉配信時刻と受信に必要な情報を与える。利用者の衛星受信装置は時刻と受信情報を記憶する。その時間の少し前になると受信装置は自動的に受信準備をして待ち受ける。予約時間になると配信サーバは予約されたデータを衛星回線で一斉配信する。

- インターネット放送 ; 直接衛星LANを一つのLANとしてインターネット放送を衛星回線で行う。

- 衛星インターネット ; 遠隔地の利用者が電話回線を用いてサーバに接続してインターネットに入りインターネットからの帰りは衛星回線でデータを利用者に届ける。

- 遠隔会議  ; 会議サーバによって発言者の信号はインターネットで衛星放送送信局に運ばれるように制御され、サーバに届いた発言者の信号は衛星放送回線を通じて全国に同報される。

既存のインターネットの会議システムに対する特徴は極めて多数の参加者による会議が可能な事である。政府による各種公聴会、タウンミーティング、講演会、遠隔講義などが可能である。

 

(3) 地域放送LAN

身近な所から始められるものとして県域の地方放送、市町村地域のCommunity放送とインターネットを結合するシステムがある。システムの構造や応用分野は直接衛星LANと同様である。

 

3. 社会的な意義

 

Mass MediaからMass Im-mediaへの発展

新聞に始まり、ラジオ、テレビと数世紀を重ねて発展して来た報道機関はMass Mediaである。即ち放送事業者(Broadcaster)が取材して集めた内容を自らの責任で編集して一般大衆(Mass general)に配信する。これは間接的な情報配信である。即ち 情報源 – Media –公衆 のように間接的な情報交換網である。

 

Mass Im-mediaの時代

インターネットは正にMass Im-mediaである。即ちインターネットの利用者はHome Pageを作り、そこにデータを公開する。一般利用者はインターネットを通じてHPに接続しそこから直接情報を得る。図式的に描くと 情報原 – 公衆 である。この直接性がインターネットの大きな特長であり、事業に応用されると所謂中抜きによる大きな効果を発揮している。

 

BroadcasterからBSPへの進化

本提案はインターネットで既に起こっている事を放送分野で起こすものである。

 

完全直接衛星放送

各地の地方放送局が完全直接衛星放送を始めると地方の地場産業は身近な所に全国向け放送網が来ることになる。そこで地方発全国向け営業が容易になる。しかも従来の放送に比べて遥かに安価(TV放送が一時間当たり5万円程度で可能)なので従来の秒単位のイメージ売り込み型のコマーシャルから分単位で自社製品の特長をデータを交えながら丁寧に説明するインフォマーシャルが主体の販売促進になる。視聴者も製品の特長がよく分かるので安心して買う事ができる。インフォマーシャルにおいては放送の内容を作るのは製造者であり、それが直接全国の公衆に向けて放送される。即ち 情報源 – 公衆 である。ここでは放送事業者は単に物理的な放送網を提供しているBSP, 即ちBroadcast Service Providerとして機能している。

 

放送LAN (直接衛星LAN,地域放送LAN)

ここではISPとBroadcasterが協力してBSPとして機能する。放送やデータ配信、遠隔会議などを行うのは情報の発信者と受信者である。遠隔会議においては発信者も受信者も同じ団体の成員である。放送内容に関する責任は発信者にありBSPは物理的なインターネットと放送網を公衆に提供するだけである。

 

Mass Immediaの社会的意義

Mass Im-mediaとは公衆の中で直接的な情報交換が行われる通信網である。産業分野においては全国から直接全国に相互に同報ができる事から地方の地場産業の発展、都市と田舎の交流、普遍的な学問、参加型の民主政治、直接民主制への進化など深い社会的な可能性を有している。

 

世界平和

ここでは特に提案システムが世界平和に有効である事を強調したい。今日でもAfghanistanからZimbabweに至るまで世界の各地で人間の殺し合いが続いている。アフガニスタンにおいては米国を始めとする有志連合国が最先端の軍備でカルザイ政権を援助しているにも関わらずタリバンが圧倒的に優勢であり、首都のカブールにおいてさえ治安は最悪になっている。ドイツや英国は兵士の損害が大きくなるにつれて逃げ腰になっており、米国は日本にもアフガニスタンの陸上活動を強く求めて来ている。今やパキスタンすら反米的な姿勢に転じつつあり、アフガニスタンの問題は解決の糸口が見えない。米国はイラクから引き上げた兵力をアフガニスタンに投入しようとしているが他ならぬ米国の空からの爆撃で一般住民が死傷し米国に対する敵の拡大再生産が際限なく続いている。もはや軍事的にアフガニスタンの問題を解決する事は不可能であると思う。

我が国が為しうる最大の支援は直接衛星LANをアフガニスタンに援助しアフガニスタンの各地から生の声を全国に届かせる事だと思う。タリバンとカルザイ政権の主張が全国民に届けばその正否も自ずと明らかになるし、最初はののしりあいになるかも知れないが、全国国民会議を辛抱強く続ければやがて和解の芽が出て来ると思う。記者やカメラマンが行けない所からも現地の生の情報が直接全国に届けば年月とともに必ず相互理解が進み紛争は解消して行くものと思う。

直接衛星LANを世界中に普及させる事は民主的で平和な世界の実現に必要不可欠であると信ずる。

 

--以上--