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件名: RE: あるべき社会とInternetの活用
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あるべき社会とは
現在の社会の深刻な問題を解決できる社会でしょう。それらは
[1] 国家権力に起因する問題
現在のシリアやアフガニスタンの悲惨な内戦、イスラエルによるパレスチナ人の抑圧、歴史的にはついこの間の世界大戦など数え切れない虐殺や人権侵害は国家権力に起因するものです。古代における国家と権力の発生は明らかに歴史的必然でしたが同時に人類の不幸の最大の原因でもあったと言えるでしょう。この問題の解決は民主主義の確立にあると考えます。
[2] 個人の不幸
毎年3万人近い自殺者が出る日本は決して幸せな社会であるとは言えないでしょう。昨日東京で起きた17歳と18歳の少年による犯罪は遊ぶ金欲しさに「誰でもよかった」と何の関係も無い女の人を刺殺して金を奪ったものでした。被害者には気の毒で言うべき言葉もありませんが加害者にもまた言うべき言葉がありません。全く人間の業とは思えません。この問題の解決は何でしょうか。
以下人間の不幸の原因と解決方法について考えてみましょう。
人間の不幸の原因
昨日National geographicの歴史番組でA.ヒトラー特集を見ましたが浮浪者同然の身から政治運動に乗り出し天才的なデマ戦術を駆使してドイツの首相に上り詰め、直ちに一党独裁、総統と称して名実ともに独裁政権を確立するのに要した時間はほんの十数年です。その後の悲惨な戦争、就中ユダヤ人迫害と大虐殺(holocaust)の歴史を辿るとつくづく国家権力の恐ろしさを感じずにはいられません。
翻ってその権力の根源を辿ると軍隊や官僚などが上からの命令に盲従する所にあります。それは一つには洗脳されて命令に対して疑問を持たない事と二つには疑問を持っても食う為や出世の為には止むを得ないと自分自身を欺くことです。ナチスドイツの最盛期においてはナチス党への入党志願者が多すぎてヒトラーが制限せよと指示を出す程でした。戦後においてはその大半の人々は自分の戦中の行動についてどう考えた事でしょうか。時には救いにも成り得るのかも知れませんが他人ばかりでなく自分をも欺くその独特の能力が人間の不幸の原因にあるのではないでしょうか。
このように考えると国家による巨悪も前述の二少年による凶悪犯罪と同じく畢竟個人の無知と欺瞞に起因すると思います。
無知と欺瞞からの脱却法
具体的には対話に尽きるのではないでしょうか。
上の不幸の二大源泉は個人レベルだけでなく国家レベルでもあり得ます。「満蒙は日本の生命線」という戦前のスローガンに反対したのは石橋湛山など極く少数でした。鬼畜米英と教えていた学校の先生が戦後くるりと態度を変えて民主主義を唱えだした事は当時の多感な子供に深い人間不信の念を植え付けたと思います。国家の戦争により生じた最もか弱い被害者である戦争孤児に対して日本国は全く責任を果たしませんでした。少数者や弱者の声がかき消されるところに国家レベルの過ちの原因があると思います。
無知の原因は卑近な言葉で言えば勉強不足です。これは必ずしも学校での勉強に限りません。また勉強の字義は強いて努力する事ですが他から強いられるのではなく自ら勉強する事が重要です。日本のスポーツ界での指導者の暴力や学校でのいじめが問題になっていますがこれらは外から強いられる勉強に起因しています。言葉の通じない動物の調教にはそれしかありませんが人間に対しては逆効果です。人間に対してはあくまでも対話の外に道は無いと思います。
自己欺瞞についてはどうでしょうか。人間はどんな論理でも組み立てられます。おそらく前述の凶悪犯罪を起こした二人の少年も自分なりの論理を持っているかも知れません。ドストエフスキーの小説である貧乏学生が質屋の老婆を殺害しましたがその論拠は超人崇拝思想でした。現実にA.ヒトラーは誰にも増して狂信的なヒトラー主義者であり、その度を越したユダヤ人憎悪は権力奪取の過程でデマ戦術として役立ったばかりでなく権力奪取後は人間性を疑わせる残酷なユダヤ人迫害と数百万人の虐殺をもたらしました。如何に珍妙な論理でも小説の枠を遥かに超える現実を起こし得ます。他方どんな論理でも組み立てうる事は人間の深い創造性を示しています。世界には何千という言語があり、幾何学には無限に多くの論理体系があり得ます。ユークリッド幾何学と非ユークリッド幾何学は平行線の定理では相互に相矛盾しますがそれぞれの体系の内部には矛盾はありません。ポアンカレ先生の言うよう、どれが真理かではなく、どれが便利かの違いしかありません。その他の学問分野にも無数の理論があり得ますが生き残るのは現実の現象を正しく説明できるものだけです。また論理的には相互に矛盾する理論でも現実の現象に合うものは共に生き残って行きます。このように考えると人間の自己欺瞞を論理的に破る道は無いのかも知れません。最後は各人が何を信ずるかという問題になると思います。そうなるともう論理は歯が立ちません。信仰の真髄は「疑うな、ただ信じよ」であり、学問の真髄は「疑え、証明せよ」ですから戦う意味がありません。ただ二つとも人間には必要なものであると思います。
従って他人の考えを変えさせるのは土台無理な話で人ができるのは互いの考えは尊重して必要に応じて対話を重ねるしか無いのではないでしょうか。
共生社会の構築
同じ漢字を使いながら日本語の人間(にんげん)と中国語の人間(じんかん)とは少しく意味が違います。中国語の人間とは日本語では世間という意味です。世という言葉も私は好きです。日本の古代においては世という言葉は専ら男女間の愛を指していたというのも素晴らしい事ではないでしょうか。以上の特徴から推理すると日本人の概念では人は畢竟人間すなわち世間に生きる動物だという事だと思います。これは約一世紀前にインドで発見された狼に育てられた二人の人の子アマラとカマラの例が明確に実証しています。二人の幼児は発見当初は狼そのものでした。四足で素早く動き、手を使わずに生肉を食らい、夜は長々と遠吠えをしました。眠る時は狼の巣穴でしていたように二人で折り重なって眠っていました。形は人でも動きは獣でしたが人間に負けない心がありました。小さい方のカマラが病死した時のアマラの悲嘆は見ている人の涙を誘うものでした。一日中身じろぎ一つせず暗い所にじっとしていました。言葉に出せない悲しみはどんなにかつらかった事でしょう。献身的な養父母のせわのおかげで何年かしてアマラは立ち上がり、服を着るようになりましたがその歩行はまことにぎこちなく、覚えた言葉もママ、パパ程度の極くわずかなものでした。惜しい事にアマラもまた子供のうちに死んでしまいました。アマラとカマラの例は人間と動物の本性について多くの事を教えてくれます。狼が人間の子を育てたのは狼が社会的な動物だからだと思います。シートンの動物記にある狼王ロボの物語が人の胸を打つのは狼が家族の結びつきの強い社会的な動物であるからでしょう。行動は狼でも優しい心を持っていたアマラと比較すると形は都会人でも何の罪もない他人を金が欲しかったという利己的な動機で無慈悲に殺害した二少年の心は如何なるものだったのでしょうか。
今日の社会における人の不幸の原因の一つは人間性を養う場すなわち共生社会の喪失だと思います。本来人間社会は職業の分化により生じたものでありその本質は社会的分業、相互補完および相互補助です。現在は社会的分業が進みすぎてこれが見えにくくなっています。田舎を知らない都会人にとって食べ物は八百屋で金を出して買うものに過ぎず、自分が毎日食べるものが農家によって作られた人と自然の恵みである事に気づきにくいのではないかと思います。おそらく現代人に最も欠けているのは感謝の心ではないでしょうか。江戸時代には火事と喧嘩は江戸の華、生き馬の目を抜く江戸などと言われたように都会人の特色は自己主張です。西洋の諺では都会は人を自由にするというのがあります。農家の次男、三男は家を離れて都市に出て何らかの商売をして身を立てる必要がありました。自己主張は生存のために必須であり、西洋における市民革命のように歴史発展の原動力の源でもありました。しかし人は自己の利益ばかり追求すると他の人間との間に溝ができて孤立してしまいます。自己の利益追求そのものが大切なものの喪失につながっているのではないでしょうか。今日の深刻な少子化の原因もそこにあるのではないでしょうか。
インターネットの活用
人間復活の鍵が対話であればそのためにはインターネットが極めて有効です。HPは世界への情報発信に、電子メールは個人間及び仲間の間の連絡に極めて便利です。
政治活動におけるInternetの活用
今年の夏の参議院選挙においてはインターネットを用いた選挙活動を解禁する準備が進んでいるようです。ここで指摘されている弊害はなりすましによる虚偽、誹謗、中傷です。米国は政治活動にInternetの使用は無制限だそうですがその実態は上述のような弊害が多いようです。
私は国民がインターネットには虚偽の情報もある事をよく自覚して信頼できる公的HPを作る事を提案します。今までも選挙ポスターは公的掲示板に貼るように法的に決められていますが同じ事をInternetでもやれば良いのではないでしょうか。
二十一世紀社会におけるインターネットの活用は今後実践的に研究して行きたいと思います。
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市吉 修 Osamu Ichiyoshi
二十一世紀を楽しく生きよう会 Human Network for Better 21 Century http://www5e.biglobe.ne.jp/~kaorin57/
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