-----Original Message-----
From: Mori Etsuro [mailto:etsuromori@jasmine.ocn.ne.jp]
Sent: Thursday, August 18, 2016 2:16 PM
To: 'OsI'; '
Subject: RE: 8.13集会報告と国家の責任について
 
市吉さん
 
こんにちは。相変わらずお元気のようでなによりです。
 
今回も重要な指摘をたくさんされており、本メールのRECIPIENT各位は何度も読み返すようお勧めします。
 
それにしても東京新聞はえらいですね。他の新聞が書かないことを書く。先般申し上げたように憲法第21
条が自民党案にそって改定されれば、東京新聞は公の秩序を乱す新聞として、警察が即刻業務停止を
命ずることが出来るようになります。昔は治安維持法に基づいていたものが、改定憲法では治安維持法が
なくとも同じことが出来るようになります。安倍政権は参院選で憲法問題を大きく取り上げませんでしたが、
選挙結果は国民は戦前のような言論統制を受け入れること圧倒的多数で選択したわけです。
 
「ヘリコプターマネー」とは財政法で禁じられている、国債を直接日銀が引き受けることです。現在は国債
は入札という方法により証券会社、メガバンク、地銀、ゆうちょ銀行、生保によって購入され、発行から2〜3
日後に、今度は日銀が主催する入札で日銀が同じ国債を証券会社等から買い入れるという方法がとられて
います。僅か2〜3日の短期ですが、財政法では適法な行為です。黒田日銀総裁就任以来、日銀は毎年
80兆円の国債を購入しており、就任前に50兆円の保有高が現在は350兆円を超え、既発国債・公債の
3分の1を日銀が保有していることになり、上記のようなやり方で毎年80兆円を買うのは段々と困難になる
と考えられます。これを解決するのがヘリコプターマネーで、面倒な手続きは抜きにして、直接財務省から
国債を買えば簡単です。
 
終戦後の日本は戦時国債による借金がGDP204%残っていましたが、預金封鎖と新円切り替えでインフレ
を起こし、全額を償還しました。現在の日本の国公債残高はGDP249%と終戦時を上回っていますが、
インターネットでは「国債の1000兆円は政府の債務で、国民は1000兆円の債権者」だから財政破綻しない
という意見を多く見受けます。メリーランド大学のCarmen Reinhartとハーバード大学のKenneth Rogoff
昨年出版した「国家は破綻する」という本で、過去500年の財政破綻について報告しています。日本の戦後
の処理(預金封鎖と新円切り替え)についても言及しています。この本の原題は"This Time is Different"「今回
は違う」というものですが、確かに今は日本の終戦後とも第1次大戦後のドイツとも違っています。終戦時の
ように日本が焼け野原になったわけでもなく、フランス軍によるルール地方の占領があったわけでもなく、
逆にデフレで物価は下がっています。
 
ヘリマネーは国民の預金を取り上げる手段ではなく、国債の消化を円滑に行う手段ですが、財政法では原則
として禁止されており、国会の決議により実行可能です。現在は歳入が40兆円ほど不足しているため国債
発行で穴埋めをしているわけですが、他の諸国もドイツやカナダなどを除いては赤字財政で国債発行が増え
ており、世界中がヘリマネーを始める可能性もあります。そのような場合は、日本の国債残高が2000兆、3000
と増えても平穏な生活が続くかもしれません。赤信号もみんなで渡ればこわくない。
 
日本が預金封鎖と新円切り替えを発表したのは昭和21216日ですから、終戦から丁度半年後です。当時
は新円を印刷する材料(紙、インク、印刷機)も無かったため、収入印紙のサイズの証書を印刷し、これを旧円に
貼りつけて新円と交換したそうです。もし日銀が新円を印刷しようとすれば、世の中から紙とインクが無くなるので、
もしそのような事態になったら預金を引き出して金塊を買う、株を買う、財政赤字の無い国(例えばシンガポール)
に移住するなどの方法をとれば良いと思います。私個人はそのような余裕もないので、このままの状態が20
くらい続き、国債残高が2000億円程度まで増加するが、今と同じ平穏なインフレの無い生活が続くように願っています。
 
森 悦郎