ヒカルの碁
番外・倉田厚編
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倉田さん、まるいっ!まるいぞっ!
まるかいてまるかいてまるかいてっと。それはともかく。

倉田さんがどうやって囲碁に興味をもったのか、その前になぜ競馬だったのか・・・は、テレビじゃないかなあと思ったりする。
むしろテレビぐらいでちょうどいいんじゃないか、とも思う。
誰かに勧められてはじめる方が私としては違和感を感じるので。

倉田さんってちょっとズレてる人じゃないかなあ。微妙に扱いが難しいというか。悪いコトをするような子じゃないし、素直なことは素直だけれども、どっち向いてるかわからないような。
マイペースな行動ややたらと自信ありげな言葉遣いは、友達、少なかったんじゃないかな。彼としても友達なんてそれほどいなくてもかまわないと思っていたかもしれないし、友達と同じ趣味を共有しようとは、端から考えていなかったのではないか。興味を持てば、人がついて来ようと来まいと、別 段気にもとめないような。

競馬の番組なんてたくさんあるし、いろんな芸能人とか予想しては外してるし、『そんなに当たらないはずはないんじゃない?』とか思って情報を集めはじめるというのはありそうなことだ。中学生ってところが変わっているといえなくもないが。

情報不足によって予想を外したことが大きく影響して、100パーセント情報を集めることはできないのかなあ、と思って帰宅したところ、テレビで囲碁に出会う、
とかね。

こんな物語りはどうだろう。
「ただいま」
「こんな時間までどこいってたの!?」
「ウインズ」
「またぁ?あんたまさか賭けたりしてないでしょうね」
「買えるわけないじゃん?」
「な・・・。ちょっとまだ話はおわってないわよっ!」
(鞭の持ち換えかあ・・・確実に情報を集める方法ってなんだろうなあ。んんーー)
(何やってんだ?ああ、トーク番組か。誰だこのオッサン)
すでに母親の声は耳に届いていない。付けっぱなしのテレビで、たまたま映っていたトーク番組に塔矢行洋が出ていた。進行役の女性アナウンサーが説明するところによると、名人のタイトルを取った棋士だという。
『3連勝したあたりで、いける、と思ったのではないですか?』
『いえいえ、勝負は最後までわかりませんからね。気を抜くことはありませんよ。』
『あら、そうですか? でも自信はおありだったでしょう?』
『自分の碁には自信を持っていますが、確実に勝てるかといったら、そういうものではないのです。・・・』
リモコンを持った手がとまる。
『ところで、名人は何手くらいまで先を読むことができますか?』
『はは・・・。よく聞かれる質問ですが、状況によって変わるものなので、何手とはいえないものですよ。』
『よく何十手先を読むとかいうのを聞いたりしますけど。』
『終盤になると、終局まで読むことはあります。相手によっては読みの勝負になることもありますが、読み通 りにいくかどうかはその時々で違いますから・・・・・・』
(へえ、囲碁か。囲碁ねえ。面白いかな?)
電話帳を引き寄せ、近所の碁会所を探す。
「ちょっと、ちゃんと聞いてる?」
「え?なに?」
「聞いてなかったんでしょう!」
「まだ喋ってたの?」
「・・・・・・・・・勝手にしなさい!!」


塔矢行洋が8年前にタイトルを取ったかどうかはわかりませんが、存在感とか、勝負・読むといった言葉に反応したってのは、ありそうな気がします。
そしたら、塔矢名人引退のときの「ずるいっ!まだ名人からタイトル奪ってないのにっ」の台詞につながっていくんだけどなあ。
それに、予想を外して、次の週にはもういなかったことを考えると、囲碁を知るきっかけというのが、家の中か学校しかないと思うので、テレビなんかは有力な情報源になりそうだと思うのだけれど。
・・・どうだろう?