「BE−PAL

 (2011年8月号)

小学館から発行されているアウトドア情報誌、「BE−PAL 8月号」に、加山さんと山下徹大さんの対談が掲載されてましたので、ご紹介いたします。ほんの一部ですが、割愛してありますので、全部見たい方は、7月8日に発売されたばかりですので、ぜひご購入ください。一部580円です。

”アニー”さんからご提供いただきました。ありがとうございました。

7月第4日曜は「親子の日」

加山雄三 X 山下徹大 

(親子対談)

一歳半から海に投げ込まれた父・加山雄三、一歳半から船に乗せられていた次男・山下徹大。大の仲良しふたりを写真家ブルース・オズボーンが切り撮ると、ふたりの共通点である海と、飛びっきりの「好奇心」が見えてくる。

「自然の畏れ」を受け継いで”漢(おとこ)”になる

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バカやることを受け継いでいる
お前とは気心が知れているからな。見たものに対する考え方、反応も同じ。根本的に情景に対する感動の心とか感情とか、そういうものってほとんど同じだね。受け継いでるのはバカやること。

司会)どんなバカを?

k事業やって失敗したりとかさ。そういうことを勉強できるのはスゲーいいことだと思っているんだ。俺もコケたことは多々あって、そのコケたもの同士がいま力を合わせて頑張っているわけだ。何もなければ、そういう絆も生まれない。これは親子代々継承してるのだと思う。

司会)加山さんの父・上原謙さんも?

俺のオヤジ・上原謙も最後の方はけっこうコケていたからね。でも昔は煙たい親だったのが、「そこらにいる男と変わらないや」という気持ちになったそのときに心が通じあった。「こういうことがないと人間ってダメなのかも」とも思わされたね。今度は、お前が俺の後を追っかけてきて、同じようなことをやっている。

司会)だからこそ親子で仲がいい?

やっぱり、いいことばかりで絆が深まるってことは考えられないね。障害などにぶつかったときに初めて、立場が逆転して考えられるようになる。そういうことが重要だ。

徹大)嫌な部分は「もらったな」と普段は感じていないのかもしれない。失敗したときに「あー、やっぱり継いでいるんだな」って、そのときに初めて実感するのかな。いい部分では、趣味が多くて料理もやるオヤジも見てきているから、それらを自然に受け継いだのだろうと思う。だから、海が好きになったんだろうな。

お前の海デビューは一歳半くらい。4歳くらいのとき、大時化のときに一緒で、ものすごく怖がって泣いてたっけ。だけど、お前はコテッと倒れてガーガー寝たんだよ。「ああ、なるほど子どもは怖くなると寝るのか」と思ったね。結局はさ、そういう揺れの中に何度も連れていっていたものだから、いつしか平気になっていたんだ。やっぱり環境というものが、子どもの真ん中にある感性とか思いに影響を与えるのは間違いないと思ったね。

司会)そういう経験のおかげで、親子して海遊びが得意なんですね。

でもね、自然に対する愚敬の念みたいなものは持っていたほうがいい。海はおっかないからね。俺自身は一歳半から海に投げ込まれて、実際に泳げるようになったのは小学校4年生くらい。それまでは泳げなかった。プールなんかなかったから泳ぎの練習は海。それでいつも海で波を見ながら「今日は泳げる、今日は無理」と判断していたんだ。

司会)状況判断も養われる?

そういうことを体験してると、台風のときのものすごい波を見て「こりゃあ死ぬな」とか判断できるようになってくる。そうすると愚敬の念も備わってくるんだ。

徹大)言葉で聞かされていても、実際それを目の当たりにして、体験しなければ身につかないんだよね。

そのとおり!

「何もしないと人は脳から老けるんだよ」
フィルターカヌーとV字型船底カヌー
お前のドキュメンタリー映画「あなたの心が流れる先に」で、自分で「ゴミ」になってタバコのフィルターで作ったカヌーで川を下って行くっていうのはオモシレーね。不思議なことに35年くらい前とまったく変わってないなと思った。

司会)以前から環境問題は同じ?

海の汚れをなくすには河川の清掃から始めないとダメ。上流はきれいだから問題ない。問題は人間の生活圏から。お前の映画を観ていると、それがよくわかる。(中略)

徹大)オヤジも音楽を始めたのは趣味からだよね。俺も、監督になりたかったわけではなくて、こんなのみんなで創りたいという好奇心から始まっている。そこは似ているね。

俺は「音楽は趣味でやる」って決めた。だから長続きしたんじゃないかな。ま、あらゆることに興味を持って、好奇心旺盛になってアンテナを張るというところは親子で共通してるね。カヌーを作るという点でも一緒。だけどお前の映画のカヌーじゃ水が入ってくるって思ったよ。

徹大)カヌーが海へ出るシーンでは、これはやばいぞともいってたよね。

俺は14歳のときに初めてカヌーを作って以来、毎年船を作っていたんだよ。大学を卒業するまでに8隻も。15歳のときのカヌーは加山雄三ミュージアムに現物が残っている。これは他にないデザインで、すごく海に強い。船底はV字型だ。

徹大)たしか見たことないカヌーだ。世に一艇しか存在しないカヌー。

当時を振り返ってみると、設計は合理的にやっていた。不思議なことにソロバン玉で復元力を試していて、それでボトムはV字型がいいということを見つけたんだね。

司会)中学生で完璧なカヌー自作?

信じられないくらい安定感がある。だけど漕いでみると調子が悪い。そこでボトムにサーフボードのようにフィンをつけた。これがよかった。烏帽子岩までは、あっと言う間だった。うれしかったね〜。

水素で電気を起こせる船で世界旅行に出たい。

俺が子どものころは遊び道具なんてないから、自分たちで工夫しない限り楽しく過ごせない。例えば、海が近かったので夏になると風呂の木の蓋を使って、ボディーボードをするんだ。小学校の高学年ではそうやって遊んだ思い出がある。

司会)終戦直後にボディーボード?

それからボードをいろいろ試して改良し、高校時代にはハワイスタイルのサーフボードを作ったんだ。それは中が空洞で船のようにひとつひとつフレームを作り、薄い5ミリのベニヤ板を貼り、フィンをつける。そんなの自分で作ったんだぜ。ラッカー塗料を4〜5回も塗って、その都度サンドペーパーかけて、ろうそくを塗って作った。

司会)よく自作できましたね

どうしてそんな知識があったのかわからないけど、ともかくできて茅ヶ崎で乗ったんだ。そのときの写真もある。遊びってさ独自に面白さを探していかなければ何も楽しみがない。それが、なにか完成させたときの喜びとか、自然との接点となる道具ならすごくいいと思うね

徹大)俺にとってまさしくあのフィルターカヌーは新しい試み。タバコのフィルターで作ったカヌーは他にないでしょう。

俺は好奇心が旺盛だから若さを維持できるんだと思うね。例えば退職後にどんどん老けていくのは生きがいがなくなるからじゃないかな。酒もタバコもやめて好奇心をもっていろんなことをやっていると、年も取らないんだと思うよ。

徹大)オヤジはいろんなおとをやってきてる。だから、俺は逆にやらないことをやってみようとしたんだ。

お前が俳優になって最初のころにやったのは、俺がやったことがない舞台。それをやりやがった。

徹大)学生時代のスポーツにしてもアイスホッケーやったり、ともかくオヤジがやってないことに挑戦してみようという考え方はあったね。

今後ふたりでやりたいのは、世界中を回る船旅だね。そこで考えているのは、新しいアイデアの船。化石燃料も使わない、自然からエネルギーを吸い上げて走っていく船。太陽エネルギーや風を利用するんだけれど、帆で進むのではなく、風で電気を起こし進む船を考えている。

徹大)オヤジはアイデアの宝庫だよ。

太陽や風がなくても水素を電気分解で作り、それをタンクに貯める。そういうことも研究している。

徹大)こういうことをしたい、やってみたいという考え方があって、それがつきないよね。だから一般的なオヤジ世代の人と会ってなにが違うと感じるかというと、オヤジ(父)は老後をどうラクして過ごそうという考え方ではなくて、やってみたいことだらけってこと。そこが全然違う。

俺が60歳のときに、「老後をどうするの」ってうちの50歳の奥さんが聞いてきたんだけど「あのなあ、もう老後なんだよ。毎日が新しいスタートだと思っていればそれでいいんじゃない」って答えたんだ。

司会)常に現在進行形なんですね。

未来も過去も今の一点にあると考えていれば、なにも先のことなんて考えることもない。ま、こうやっていうのは簡単だけどね(笑)。

徹大)したいことのために、今をこうするって考え方を持っているのがオヤジ。だから趣味が尽きることもないし、老けもしないんだね。

いやいや、そういう方もいらっしゃるってことだよ。

11年07月09日新設