今日のひとりごと
お持ち帰り
土曜日の昼下がり ファミリーレストランへ行った
とうに一時は過ぎていたので さほどの混雑はないであろうと目論んだのだが
案に相違して
入り口で待たされて ようやく席に案内されたが 注文した品は
なかなか運ばれてはこなかった
こうした場所に足を運ぶのは もちろん食事が目的なのだけれど 個人的にも職業的にも
人を観察するのが好きな私は 後に用事が控えていなければ いくら待たされても
苦にならない
ご時勢からか土曜日にもかかわらず 少人数での店内作業人の動線は それは見事で
アルバイトかとも思える若い彼女たちの無駄のない動きに これぞプロだとしばし見とれた
いくらか空席が目立つようになった頃 やや離れた場所に手話で会話をしているカップルがいた
ご夫婦らしい彼等の指の美しい動きと 交わされる笑顔にも明るいものを感じていた と
そのうち男性が立ち上がると ドリンクバーのほうへと移動した
人様を眺め続けて申し訳ないけれど 二月とはいえ暖かな店内では冷たいものを持ってくるのか
いや やっぱり食後ならばホットコーヒーかも知れないと 勝手な想像を巡らしたが
彼が自分の座席に運んできたものは 両手にいっぱいの「おてふき」だった
一つを目の前の女性に渡し 一つを自分の前に置き 残り全ては素早く脇の鞄に入れた
あっと思った ちょっとドキドキした それはいけない事だと思うよ くらいの手話は私にも出来る
一つ二つなら分かる でも束にしてのお持ち帰り?いくらなんでもそれはないでしょ?
相変わらぬ流れるような指の動きも 爽やかな笑顔も 美味しい食事も何一つ変わらないのに
見てしまったから どうして良いか分からない感情が 入道雲のように胸のうちを満たしていく
あのご夫婦が健常者であっても わたしは何も言えないに決まっている
ましてや 意志がうまく伝わらなかった場合は 嫌な思いだけが双方に残る
見て見ぬふりはいけないことだと 常々考えていた自分はどこへ行ってしまったのだろう
当事者という難しい立場は なってみないと分からないものだとつくづく感じた