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図書紹介:『時間はどこで生まれるのか』

  • 著者:橋元 淳一郎  
  • 発行所:株式会社集英社、ページ数:188ページ
    発行日:2006年12月19日第一刷、定価:660円+税


 われわれは「今」という瞬間を生きているが、この「今」という瞬間は宇宙全体にあると何となく信じている。しかし、これは間違いであるという。 また、ミクロの世界に色や温度が存在しないと同様に時間もミクロの世界には存在しないという。 著者は現代物理学をふまえたうえでの時間論を展開する。
 議論に当たって著者は、時間の捉え方の分類として哲学者マクタガートが用いた時間のA系列、B系列、C系列という考え方を借用している。 本書によれば”A系列の時間とは、常に現在という視点に依存する時間のことをいう。生きている自分にとって、時間はいつも、「今現在」である。B系列の時間とは、歴史年表のような客観的な時間である。 C系列は、もはや時間とは呼べない、ただの配列のことである。”
 内容は、まず相対論、量子論などの現代物理学が明らかにした時間の性質について説明する。次に本書の本題である主観的時間の創造、 時間の創造は宇宙の創造である、へと進む。
 結論として著者の主張は以下の通りである。”宇宙は、相対論的C系列の構造をもつ。即ちC系列は一覧表であり、比喩的にいえば一枚の絵である、宇宙はただそのように存在しているだけである。 にもかかわらず、われわれ生命はその絵の中に主観的時間を創造した。時間の創造は宇宙の創造であり、われわれはそれに参画しているのだ。”
 一挙に読ませる面白さと説得性がある。著者が主張する時間との関連において、進化、生命の意思、宇宙などについても考えさせてくれる。
(2007年8月7日)
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