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図書紹介:『宇宙は「もつれ」でできている』

  • 著者:ルイーザ・ギルダー著、山田克哉監訳、窪田恭子訳  
  • 発行所:講談社Blue Backs、ページ数:253ページ
    発行日:2016年10月20日第一刷、定価:1500円+税


『宇宙は「もつれ」でできている』(ルイーザ・ギルダー著、山田克哉監訳、窪田恭子訳、講談社Blue Backs)を読みました。“たとえ100億km離れていても瞬時に伝わる謎の量子状態は、どんな論争を経て理解されてきたのか”という裏表紙に書かれている説明を見て読みたくなったのです。アインシュタイン、ボーア、ハイゼンベルク、シュレーディンガー、パウリ、ディラックなどの人間関係や確執は生き生きと描写されており、楽しく読めましたが、物理的内容は数式を使っていないとは言え、難しくて理解できません。それでも気になって再度じっくり読み返ししました。やっと下記のようなことが分かってきました。  相対性理論はアインシュタインという一人の天才の独創によって誕生したが、量子力学は多数の物理学者の侃々諤々の議論が闘わされた結果、約30年の歳月をかけて1930年代に完成した。その後、量子力学の精緻化の中から「量子もつれ」という量子状態があることが分かってきた。すなわち二つの量子の間でいったん相互作用が生じると、その二つの量子は「相関」(ねじれ)を持つと言われ、たとえ100兆km離れていても瞬時に伝わるという因果律を破るように見える謎の量子状態である。アインシュタインも「幽霊現象」と呼んで生涯信じなかったという。  1935年、アインシュタインなど3人により「量子もつれ」に対する疑問を提起して量子力学の不完全さを指摘するEPR論文(著者3人の頭文字)が発表された。また、この問題を解決するためにアインシュタインなどにより「隠れた変数」理論が提案されるなど議論された。これに対して、ジョン・ベルは、二つの電子の相関関係は局所的ではなく、「分離不可能」な一つの系(全体で一つ)を成していて、その系で起こることは「非局所的」系内の全範囲にわたって起こるという考え方を提案し、「ベルの不等式」を導いた。この不等式が成り立てば「隠れた変数」の必要性が生じるというものである。1970年代以降、ベルの不等式を実験的に検証する試みが多くなされ、ベルの不等式が成立しないことが示され、隠れた変数は不要となり、量子力学の正しさが認められた。  以上、難しくて詳細は理解できないが、重力の基礎となる時空が「量子もつれ」から生まれるという研究もなされており、「量子もつれ」の知見は、今後、我々の世界観、宇宙観にも影響を与えるように感じられます。量子もつれの利用として量子テレポーテーションが研究されているという。
(2018年1月8日)
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