図書紹介:『システム障害はなぜ起きたか みずほの教訓』
- 著者:日経コンピュータ編集
- 出版社:日経BP社、ページ数:190ページ、出版年月:2002年5月30日、定価:1400円
2002年4月1日、第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行は、みずほ銀行とみずほコーポレート銀行に
統合され、世界最大の総資産を持つみずほフィナンシャルグループが発足した。しかし、この記念すべ
き日に新情報システムは前代未聞の大きなシステム障害を引き起こした。全国7000台のATMの大半の障害、
口座振替の引き落とし漏れ(4/5時点で250万件)、二重引き落とし3万件、現金未払いにもかかわらず
通帳に「引き落とし」と記される被害147件などである。マスメディアは連日大きく取り上げたが、殆ど
は表面的な内容であり、真の原因まで追求したものではない。
本書は、「企業や組織を支えてきた情報
システムは現在、危険な状態に入りつつあり、早急に抜本的な対策を講じる必要がある」という問題
意識を持つ日経コンピュータが、今回の情報システム障害の真の原因を探り、こうしたシステム障害を
繰り返さないための教訓を引き出すために緊急出版したものである。
本書は、3部構成になっている。
第一部「徹底検証・みずほの悲劇」では、みずほフィナンシャルグループの情報システム障害を徹底検証
している。本書によると今回の障害の原因は下記の通りである。
- 統合に当たって情報化の戦略がなく、現場任せが諸悪の根源。CIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー)
も事実上不在
統合前のシステムは、富士通、IBM、日立のコンピュータを使っており、これらの統合は極めて難しい
仕事であり、システム統合には経営トップのリーダーシップが重要であった。しかし、現場に任せた
ため、「どのコンピュータを残すか」について堂堂巡りの議論をし、コンピュータ・メーカ各社は、
自分のコンピュータや端末を売り込むことに血道を上げることとなった。
- 三行の情報システム関連会社の統合を行わなかったこと(第一勧銀情報システム、富士総合研究所、
興銀システム開発)
このため、三行がばらばらのままシステムの統合作業を進めることとなった。
- 情報システム統合方針の途中変更
結果的にその変更部分が今回の障害のもととなった。当初案では、みずほ銀行の勘定系システムは第一
勧銀システムに一本化するというものであったが、2000年11月にその当初案をいったん白紙に戻し、
第一勧銀と富士銀の勘定系システムを残し、RC(リレーコンピュータ)によって統合する形態に変更した。
- 時間不足によるテスト不充分
2002年初めの段階では、口座振替の振り分け処理プログラムが完成の域に達していなかった。また、
対外接続系システムのプログラムの修整にてこずり、テストは万全ではなかった。
- リスクを考えずに本番突入
以上のような問題を指摘されていたにもかかわらず、みずほフィナンシャルグループは2002年3月29日
午後10時、みずほ銀行は新システムへの切り替え作業に突入した。しかし、やはり口座振替処理が
うまく進まず、4月1日早朝まで終えないといけない前日分の振替が滞ってしまった。この余波で
勘定系システムの全体の稼動確認ができなかった。そして、勘定系を利用し始めた直後に体外接続系
システムの修整プログラムに残っていた欠陥が表面化した。また、対外接続系の障害に伴う二次トラブル
で「現金が未払いにもかかわらず残高が残る」という障害が発生した。更に4月8日には別の欠陥が
新たに対外接続系システムで表面化した。
本書の結論は、「銀行の経営トップの情報システムに対する姿勢が、今回のトラブルの根本原因である」
というものである。本書が提案する今後の対策は、真に機能するCIOの外部からの招聘、旧三行のシステム
関連会社の統合、経営トップのリーダーシップである。
第二部「システム統合奮戦記」は、銀行の情報システム統合という難事に挑んだルポルタージュであり、
北洋銀行、東京三菱銀行、UFJ銀行について記載されている。
第三部「システム障害と闘う」では、日経コンピュータが1990年10月8日号の「動かないコンピュータ特集」
で掲載した「動かないコンピュータ」撲滅のための10カ条
を教訓として再掲載し、解説している。
本書は、さすがに1981年以来、「動かないコンピュータ」というコラムを連続掲載している「日経コンピュ
ータ」によって書かれただけあって、かなり核心に迫った内容になっている。ミッションクリティカルな
情報システムを持つ企業の経営幹部は是非本書を読み、自社の情報システムの開発、維持、運営体制を点検
することをお奨めする。
(2002年6月6日)
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