コラム:「母と絵」

母は小さいときから絵を描くのが好きでした。小学校のときに担任の先生から「佐藤(母の旧姓)、おまえ 絵うまいな」と誉められ、ますます好きになりました。宿題でもないのに家で絵を描き、学校に持って 行き先生に見せるとまた誉められ、また持って行くということをしていました。小学校を終わってから 余り絵を描く機会はなかったのですが、いつか思いっきり絵を描きたいと思い続けていました。

結婚し、5人の子育てが終わるまでは絵のことは忘れていましたが、末っ子が大学院を卒業したときに 末っ子の部屋を整理していたら使い古しの絵の具が沢山出てきました。捨てるのはもったいないと思い、 それを使って絵を沢山描きました。花が好きだったので花の絵を色紙や短冊に描き、子供たちに上げたり、 自分で部屋に飾ったりしました。100枚位描いたところで気が済んだらしく描くのを止めました。 母が60歳頃の話です。

正式に絵を習っていないのによく描けているな、と思いました。それで母が80歳になったときに記念に 「坂東愛子画集」として一冊の画集にまとめて上げました。それを20部位作って子供や親戚に配りました。 今でも母はときどきその画集を出してみています。また、これらの色紙や短冊は今でも母の部屋に沢山 飾ってあり、自分がどこにいるのか分からなくなったときに、ここが自分の家であることを認識する助け になっています。

坂東愛子画集

画集より

(2002年6月11日)

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