介護レポート:2002年9月度
 「母は徳永英明の歌“オリオンの炎”にハマッた!」


母は今月も身体の状態は良い状態でした。歩行は昔の状態には戻っていませんが、部屋の中を歩いたり、二階へ上ったり、近所のコンビニ へも一緒に時々行くことができます。それに比べ、頭の働きは少しずつ落ちているような気がします。以前には思い出した昔の記憶が 少しずつ減っており、それに伴って理解力が悪くなり、物事の解釈が妄想的で独善的になるケースが増えてきました。その例として、 今月は2回ほど非常に扱いにくい日がありましたので紹介します。

上の妹が当番の日に母は、「ここは私の家だから、あなたは自分の家に帰りなさい」とか、「晩御飯は自分で作るから、あなたは 自分の家に帰って食べなさい」と言っていくら説明してもきかなかったそうです。妹は仕方なく2階に隠れていて、しばらくして降りて いったら「晩御飯食べたのかい?」と言って態度が和らいでおり、一緒にいても大丈夫になりました。次の日は下の妹の当番だったの ですが、やはり同様の状態だったそうです。3日目は私の当番だったのですが、そのときには以前の状態に戻っており、問題はありませんでした。 原因は分かりませんが、頭の調子が悪い状態のときに、他人に迷惑をかけたくない、無駄なお金は使いたくない、という考えが強力に前面に 出たのかも知れません。このような状態のときには、説得は事態を悪い方にもっていくので、逆らわずにしばらく放っておくか、話題を他 のことへそらすかしかないと思います。相手は病人であり正常でないので、絶対にカッカしないことです。

以上はつらい日でしたが、その一方で楽しい発見もありました。それは下の妹が発見したのですが、母が初めて聴いた徳永英明の歌 “オリオンの炎”にハマッたのです。下の妹は徳永英明の歌が好きで、母の介護をしながら徳永英明のCDをかけていたそうです。 CD演奏が終わった後、母は自分でCDをかけようとしたので、もう一度かけてあげました。様子を見ていると10曲の中で“オリオンの炎” のときには、涙を流さんばかりにその歌に聴き入ったそうです。同じ徳永英明の歌でも他の歌はそれ程の反応は示さなかったようです。 それを聞いて私も試みてみました。確かにこの歌をかけるとイントロの部分が聞こえるだけで「いい音だね」と聞く態勢に入り、 そして「この歌は私が今まで聞いた沢山の歌の中で一番好きな歌だ」「凄く上手だね。びっくりした」などと言います。

私が「この歌、聴いたことがある?」と聞くと、最初の1週間くらいは「初めて聞いた」と言っていましたが、その後は「何回も聴いた ことがある」というように返事が変わってきました。この歌が母の記憶に定着したようなのです。アルツハイマー病だから新しいことは覚えられ ないと思っていましたが、母は新しいことを覚えたのです! ある本に「右脳はアルツハイマーに侵され難い」とありましたが、そのせい かも知れません。そこで、もしかすると癒し系の音楽がいいかも知れない思い、家にある癒し系の音楽やα波を出させる音楽などを持って 行き、聞かせてみました。しかし、“オリオンの炎”ほどの反応を示すものはありませんでした。もともとの自分の好みに合っていないと 駄目なのかな、と思いました。これからも母が感動できることを探して母の右脳を刺激して上げたいと思います。

今月、母が描いた絵:リンドウ

(2002年10月7日)

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