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介護レポート:2004年7月度
「ボケても母は母」

今月は、妹たちと介護当番日程をやり繰りし、私は二泊三日で鹿児島県霧島高原へ行ってきました。時々参加しているFTC(Fault Tolerant Computing)研究会が霧島高原で開催され、 それに参加したのです。いつもは介護の息抜きを兼ねて参加しているのですが、今回はちょっと頑張って論文(論文と言うほどのものではないですが・・)を発表することにしたのです。 題名は「報道に見る近年の情報システム障害の分析と改善への課題」です。20分発表、20分質疑応答ですが、無事発表できました。 (→「概要」参照ください)
この論文は介護の合間にコツコツとまとめたものですが、そのときの母とのやり取りを以下に紹介します。

介護当番の日には常に母の側にいなければなりませんので、論文のまとめも母の側で行なわざるを得ません。母のベッドのそばでまとめていると、 母はときどき寄って来て、「私に何かできることはないかい?」と聞きます。母は私が高校受験などで朝早く起きて勉強しているといつも傍らで 裁縫などをしながら付き合ってくれたのですが、母はきっとその頃のことを思い出しているのかも知れません。 私が「ありがとう。しかし、今はないよ」と答えてもなかなか側から離れようとしません。そして私の周りに雑然と広げている新聞の切り抜きデータを綺麗に 直線直角に並べ始めます。私は心の中では「あっ、せっかく障害原因別にまとめてあるのに・・・」などと思いながら、しかし、口では「ありがとう、 助かるよ」と言います。母は全部並べ終わると満足したようにベッドに戻り、再び編み物を始めます。

論文が出来上がったときには私もほっとしてつい傍らにいる母に見せます。そうすると母は目敏く著者名の「坂東幸一」という文字を見つけ、「この人は 知っている人のような気がする」といいます。私は「これは僕だよ」と言うと、「ああ、びっくりした! 私の息子がこんに立派なものが書けるとは うれしいよ」と言って文章を読み始めます。「シャカイ ノ インフラストラクチャー トシテ マスマス ジュウヨウニナッテキタ ジョウホウシステム??  私にはちっとも分からないよ。インフラストラクチャーって何? ジョウホウシステムって何?」 などと私に聞きます。私は何と答えてよいやら困惑してしまいます。

以上のような状況の中で生まれた論文でした。しかし、心底うれしそうな母の顔を見ているとこちらもうれしくなります。 何故か、母はそういうときだけは私が息子であることを理解できるようです。ボケても母は母、ありがたい存在です。

今月も母の身体の体調は先月と変わらず、良い方でした。徘徊は、
徘徊実績に示すとおりですが、 合計時間、1回当たり時間共に増加傾向にあります。最近の特徴として、家の門にたたずんで付近の景色を眺めたり、幻聴に聞き入ったりしていることが増えました。 これは徘徊の数には数えていません。以前は短い時間の徘徊が多かったのですが、最近はそれが減って門にたたずむことが増えました。 このために徘徊回数が減り、1回当たりの徘徊時間が増えたと思われます。

デイサービスの拒絶の問題は、先月書いた対策をとった結果、12回中、行かなかったのは2回だけでした。まあまあです。

徘徊以外で最近感じていることは、精神状態の良い状態と悪い状態との落差が大きくなったことです。ということは悪い状態の深さが深くなったということです。 悪い状態の時には、自分の世界に入り込んでしまうので誰が何を言っても言うことは聞きません。この状態から脱出するには、ある程度 の時間、30分から1時間、ときにはそれ以上の時間が必要です。じっと様子を見ながら待つしかないです。良い状態に変わるときは、急に自分の世界から抜け出てくることが 多いので、そのタイミングをつかまえて話しかけたりすれば元に戻ってくることが多いです。


 10月11月12月1月2月3月4月5月6月7月
合計848分763分855分1282分1010分430分240分185分370分465分
回数32回28回26回31回36回12回17回12回31回18回
1回当り時間26.5分27.3分32.9分41.3分28.1分35.8分14.1分15.4分11.9分25.8分
1回60分以上3回3回6回10回3回4回0回0回1回1回

○母との会話
ある日、近くのスーパーへ母と一緒に買い物に行ったときの会話です。
(1)ブラウスに「半額!」と書いてあるのを見て、
母 「きっと、売れないんだね」と気の毒そうな顔をした。
(2)小さ目の茶碗が105円とあるのを見て、
母 「小さいのに高いね」
(3)ナスが1個40円となっているのを見て、、
母 「安いね」
(4)サンマが1尾132円とあるのを見て、、
母 「安いね!」と買いたそうだったの1尾を買ったら、母はうれしそうだった。
(4)マツタケが一皿1980円となっているのを見て、
母 (目を丸くして)「びっくりした! すっごく、高いね」とあきれた顔をした。

○母と買い物へ
  
(2004年8月14日撮影)
・玄関にて

・スーパーにて

(2004年8月17日)

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