日本音声言語医学会
会長 吉 岡 博 英

「土浦・つくばコンベンションビューロー会議報告」

 第48回日本音声言語医学会総会・学術講演会は、筑波大学心身障害学系・吉岡博英会長の主催により、2003年11月6日・7日の二日間、つくば国際会議場にて開かれました。
 本学会は、日本耳鼻咽喉科学会の関連する学会であるとともに、音声言語障害領域の臨床に携わっておられる医師と聴覚言語士とが相集う学会という性格を併せ持った学会です。また、会員には、医学ばかりでなく、音響工学、言語心理学、音声学といった背景を持つ学者が加わっており、言語の基礎研究も含んだ典型的な学際領域の研究集団とも言えましょう。
 ちょうど20年前に第28回目の学会が前任者の内須川洸・筑波大学名誉教授の主催で開かれましたが、その際の会場は、当時竣工して間もない筑波大学構内にある大学会館でした。
 今回は、3年ほど前に竣工して真新しく、また交通の便もよく、都内の施設に比べても、遜色のない「つくば国際会議場」での開催をまず決めました。そして、館内のゆったりとした空間と無機質な大理石の透明感を引き立たせるため、会場内外の掲示物や、インフォーメーションについては、筑波大学指定のつくば紫をシンボルカラーと定め、あらゆるものを「シンプル・アンド・イージー」に配置することとしました。開催前日まで、何度も現場に足を運び、主催者のイメージどおりになるまで、係りの方と綿密な打ち合わせをさせて頂きました。
 また、成熟した研究学園都市としての「つくば」をどのように表現しようか、と考え、まず思い浮かんだことは、特別プログラムとして、関連領域での最新のトピックスを、出来る限り、つくばの先生方にお願いすることでした。これに関しては、筑波技術短期大学学長・大沼直紀先生、筑波大学電子・情報工学系・板橋秀一先生、筑波大学心理学系・太田信夫先生の各先生に、それぞれの分野での最新の講演やシンポジウムをお願いでき、この場で、改めて深甚なる感謝の意を表したいと存じます。
 一方、せっかく常陸野まで足を運んで下さる参加者の方々に、つくばの故事来歴を紹介するにしても、単にこの僅か数十年の近代的計画都市としての側面のみに偏らないようにしたいと、ずっと考えておりました。それには、少なくとも万葉まで遡る必要性があり、どうしても筑波山神社にお願いしなければ、との思いがありました。この主催者のわがままを土浦・つくばコンベンションビューローの方が聞いて下さり、その結果、オフィシャル・バンケットに筑波山神社よりお出まし頂けたことは、学会に参加された皆様の記憶に永く残ることでしょう。
 通常は、大勢の医局員を抱えた医学部の教室で主宰することが多いこの学会において、主催者側ばかりでなく、他大学の先生方からも運営を疑問視する雑音が届きましたが、コンベンションビューローに登録されているボランティアさん、総勢35名の方の献身的なご協力もあって、実にスムーズに運営が出来たと自画自賛しています。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
 最後になりましたが、茶寮かげつ・食工房かげつに、これも主催者のご指名でお願いした会員懇親会でのお食事は「蓮根などを使った土浦のいなか料理ですが」と敢えて謙遜して紹介させて頂きましたが、東京の料亭にも負けない内容であったことは、後日、開かれた都内屈指の老舗料亭での学会役員との打上げで皆がそっと耳打ちしてくれました。竹の飾りといい、眼も舌も咽喉(のど)も充分に堪能させて頂きました。


「音声言語医学第45巻第1号」 編集後記

 慣例により、第1号は、前年に開催された総会・学術講演会の事後抄録集を掲載することになっており、本稿は、会長が受け持つこととなっているようである。従って、原著論文等についての編集業務には直接関与していないので、学会主催ならびに事後抄録に関する感想を述べることとする。
 今回の学会での一般応募演題は、94題(1題は事前取消)であったが、ここ20年間ほどの本学会での全演題を眺めていると、いくつかの興味深い傾向が見えてくる。
 ひとつは、聴覚関係の演題が確実に増えていること、そしてその半数以上が、言語聴覚士や教育福祉現場の方々の応募であることである。オージオロジー学会が聴覚医学会と名称を改めた頃から、特に聴覚障害に関与していたSTの方々が音声言語医学会に発表の場を移して来た。
 更に、言語聴覚士の法制化後は、STが医師とくに耳鼻咽喉科医(主として音声外科医)との連携を模索できる事実上唯一の学術講演会となり、共同演題が少なくないことも、本学術講演会の大きな特徴である。
 また、嚥下をテーマとした演題が急速に増えてきた。但し、当学会での学術講演会で単独の演題群として独立して来たのは、意外と最近のことである。喉頭科学会や気管食道科学会など境界領域での医学会では、従前より嚥下を扱っており、言語聴覚士の関与も含めた音声言語医学独自の視点からの嚥下障害へのアプローチが今後の課題となろう。
 学術講演会と学会誌の内容は、いずれの学会でもその生命線である。近く50周年を迎えようとする本学会も、どのような方向に羅針盤を向けるかが問われている。

日本音声言語医学会では、毎年「総会・学術講演会」を開催しています。2003年度は、筆者が会長となり、20年ぶりにつくばで開かれました。前半は、開催にご協力頂いた、土浦・つくばコンベンションビューローの速報に掲載されたものです。後半は学会誌「音声言語医学第45巻第1号」編集後記の原稿です。{平成16(2004)年1月}