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【テキスト】翔んだバカップル

 

2007.9.24

 

前回までのあらすじ

レクイエムによる攻撃で甚大な被害を受けたプラント。

住民の混乱も収まらぬうちに、二射目のチャージが開始されます。

もう一度あれを撃たれたら、今度こそプラントは終わってしまう。

何としても二射目を打たせるわけにはいかない!

イザークはおかっぱを坊主にする覚悟で阻止を誓います。

その隣で真剣な表情のディアッカですが、実は目を開けたまま寝てます。

 

「メイリン、君はそっちを頼む」

「はい! がんばります!」

 

こちらはアークエンジェルの格納庫。

レクイエムのことはイザーク達に任せることにして、

宇宙に向けて機体を調整するアスランとメイリンちゃん。

彼との初めての共同作業に、メイリンちゃんはドキドキです。

作業中にうっかり指と指が触れ合っちゃたりして? きゃーきゃー!

 

「アスラン、手伝うよ」

「がーん」

 

邪魔者登場。

 

「また無理すると、疲れるよ」

(ま、負けないもん!)

 

そのままアスランに代わって作業を始めるキラ。

そんな恋敵にメイリンちゃんは内なる闘志を燃やします。

アスランさんの親友だか彼氏だか何だか知らないけど、

これは軍人である私達の仕事。素人さんは引っ込んでてください。

 

「つったかた〜、つったかた〜」

「速っ! オメガ速っ!」

 

目にも止まらぬ超高速タイピング。

メイリンちゃんも相当の腕前なのですが、

キラのそれは彼女をはるかに凌駕しています。

アスランに仕事ぶりを褒めてもらうつもりだったメイリンちゃん、

せっかくの計画を台無しにされて憤懣やる方ありません。

わざわざ私の見せ場を奪わなくてもいいじゃない!

アスランさんも何とか言ってやってください!

 

「すまない……」

(ああん、デレデレ!)

 

キラの優しさににやけっぱなしのアスラン。

そんな顔、私にも見せたことないのに!

メイリンちゃんはショックに打ちひしがれます。

 

「もどかしいね。今は何も出来ないって分かっててもさ」

「はい、もどかしいです……」

 

ダメだ。この人には何をやっても敵わない。

敗北感にがっくりとうなだれるメイリンちゃん。

この人の性別が男だったのがせめてもの救いか。

いや、むしろ男だから、尚更タチが悪いのかもしれない。

 

「暇だわ……」

 

こちらは月の施設に軟禁状態のミーア。

彼女の水着姿と共に現在の月の状況を説明しますと、

ゴンドワナを中心としたザフトの月軌道艦隊が、

月の表にある連合のアルザッヘル基地から出た艦隊と、

レクイエムの第一中継点であるフォーレにて交戦中。

一方、月に向かっていたミネルバは、月艦隊と合流せず、

単身でダイダロス基地の砲本体を攻略するよう命じられます。

 

「間に合うのかな……」

 

たった三機でのダイダロス基地攻略戦。

シンとレイが前線で敵を陽動している隙に、

ルナマリアさんが砲のコントロールを陥とす。

それも二射目のチャージが完了するまでのわずかな間でという、

三者それぞれの活躍が不可欠な難しい任務です。

 

「全ての元凶はあいつだ! ロゴスのロード・ジブリール!」

 

決戦を前に、ジブリールへの怒りに燃えるシン。

ステラが死んだのも、プラントがこうなったのも、

残り話数が少ないのにグダグダなのも、全ては奴のせい。

今日こそは絶対に奴の野望を打ち砕いてやる!

 

「私がオーブで討てていれば……」

 

対照的に沈んだ表情のルナマリアさん。

このような事態になったのも、全ては自分の責任。

あの時のミスは悔やんでも悔やみきれません。

 

「あとちょっと、ほんのわずか、紙一重が生んだ悲劇ね……」

 

こっちが射撃のプロなら、向こうはシャトル操縦のプロ。

プロ同士による1ミリ単位の際どい攻防戦は、

どちらが勝っていても全く不思議ではなかった。

一部では、実は当たっていたという説もあるわ。

 

「……………」

「な、なによぅ……」

 

何か言いたげな表情で睨みつけるレイ。

 

「何であれ、時は戻らない。

そう思うなら同じ轍は踏むなということだ」

「分かってるわ!」

 

今度同じミスを犯せばプラントは終わってしまう。

辛辣な言葉でルナマリアさんに警告するレイ。

手厳しい彼から彼女を庇おうとするシンですが、

何も言葉が出てきません。確かにあれはルナが悪い。

 

「こいつ……できる!」

 

その頃、戦場では、シン達の出撃より一足早く、

イザーク&ディアッカ VS ザムザザーという、

ファン待望のドリームマッチが繰り広げられていました。

ザムザザーにモビルスーツのビジュアルの差が、

笑いの決定的な差でないことを教えてやる時です。

 

「いくぜ、イザーク!」

「応!」

 

強敵を前に呼応するイザークとディアッカ。

ビジュアルだけで笑いが取れるのは、もって半年、

長きに渡ってコズミック・イラのお笑い界をリードしている

オレ達の実力を見せてやる。聞いて驚け!見て笑え!

 

「アインス!」

「ツヴァイ!」

「グゥレイト!」

 

炸裂するイザークとディアッカの合体攻撃。

その奇妙な動きにザムザザーは全く付いていけず、

連続で叩き込まれる攻撃になすすべもなく撃沈します。

次回のスパロボでは是非採用を。お願いします寺田さん。

 

「決まったああ! ツインバカストラァァイクッ!」

 

全世界に放映されるイザークとディアッカの勇姿。

その面白かっこよさに世界中の人々が熱狂します。

瞬間最高視聴率は98パーセントを超えました。

 

「シン……」

 

いよいよ出撃の時。二人はレイを先に行かせると、

いつものように視聴者置いてきぼりのイチャつきタイム。

アスランが生きていたことで生じたわだかまりも、

プラントの危機を前にして、再び一つになったようです。

 

「気をつけて……」

「ルナこそ……」

 

そっと呟き、シンを抱き寄せるルナマリアさん。

こうしてお互いの体を寄せ合い体温を感じることで、

戦闘前の緊張や不安がウソのように解けていきます。

願わくは、戦いの後も同じように抱き合えますように。

 

「でも、やっぱりダメだよ!

ルナが一人で砲のコントロールを陥とすなんて、

どうやっても無理……いや、危険すぎる!」

 

それでもなお、シンの心配は尽きません。

間に合わずにレクイエムを発射されて死亡。

辿り着く前に敵に発見されてあっさり撃墜される。

辿り着いたものの、攻撃を外してそのまま生き埋めに。

いくつもの面白い死に方が容易に想像できます。

 

「同じ事よ。陽動で基地を討つのだって、

同じくらい危険だわ。みんな一緒よ!」

 

役割を代わろうとするシンをルナマリアさんは慌てて制します。

危険度は同じぐらいでも、パイロットの能力が全然違うのですが、

それを言うと彼女がいじけてしまうので、シンも黙っています。

 

「大丈夫よ、私は。信じてよ……」

 

シンを安心させるように微笑むルナマリアさん。

そうは言っても、心情的に信じてあげたいのと、

それが実現可能かどうかは別問題なのですが。

ペンギンはどう頑張っても空を飛べないですし。

 

「私だって赤……きゃっ!」

 

そんな健気な彼女にたまらなくなったのか、

シンは言葉も言い終わらぬうちに彼女を抱きしめます。

 

「……」

「……」

 

抱き合ったままで空中をクルクルと回り続ける二人。

お互いを守りたいという、強い絆で結ばれた関係、

そこに言葉は必要ありませんでした。

 

「ねえ……これは何?」

「ああ、何だろう……」

 

しかし実際には、言葉がないとわからないこともあります。

あまりに斬新すぎる愛情表現に困惑するルナマリアさん。

どこの世界に出撃前に抱き合ってクルクル回る人がいますか。

 

↑同じことをやっていた二人。

 

 

「ルナマリア・ホーク、出るわよ!」

 

まさかのブラストシルエットで出撃するルナマリアさん。

いくら砲を破壊するために、火力重視の必要があるとはいえ、

射撃が苦手な彼女に、このシルエットはあまりに不安です。

 

「10時方向より接近する艦影あり!

距離50、ザフト軍、ミネルバです!」

「ミ、ミネルバだと!?」

 

これまで余裕の表情だったジブリールですが、

ミネルバの名前を聞いた途端に青ざめます。

今まで幾度となく、煮え湯を飲まされ続けてきた怨敵。

彼の脳裏に先日のヘブンズゲート戦の忌まわしき記憶が浮かびます。

 

「性懲りもなくまたっ!」

 

ジブリールはすぐにデストロイ部隊を出撃させますが、

何の見せ場も無く、あっさりとシン達に撃墜されます。

確かにデストロイを量産することには成功しましたが、

パイロットである優秀なエクステンデッドがいなければ、

顔無し兵は戦力にならないこの世界では意味がありません。

 

「こそこそ……」

 

シン達が派手にドンパチやっている隙に、

ルナマリアさんは裏道からこっそり基地に潜入。

抜き足差し足忍び足、気分はソリッドスネークです。

 

「何だ!?」

「別働隊か!?」

「ああん、見つかっちゃった!」

 

しかし持ち前のスターオーラのせいか、

あっさり敵に発見されてしまうルナマリアさん。

こうなってしまっては正面突破するしかありません。

スネークから一転、ランボーモードに突入です。

 

「レクイエム発射だ! フルパワーでなくてもよい!

撃てっ! 奴等をなぎ払うんだ! なぎ払え!」

 

シン達により、あっさりと突破される防衛網。

ジブリールは完全に冷静さを失ってしまっており、

不完全のままレクイエムを発射させるように命じます。

 

「ダメです! フォーレに異常発生!」

 

イザーク隊の活躍により護衛艦隊が壊滅。

中継地点であるフォーレが奪われてしまっては、

プラントを攻撃することができません。

 

「よし、こっそり逃げよう」

「またですか?」

 

しかし、少々のことではへこたれないジブリール。

こうなったら、無理やりにでもレクイエムを発射して、

それに奴等が気を取られている隙に、こっそり逃げよう。

卑怯? 失礼な。ヒット&アウェイと呼びたまえ。

 

「シン!」

「行け! 射出口はもうすぐそこだ!」

 

敵に囲まれて絶体絶命のルナマリアさん。

そんな彼女のピンチに慌ててシンが駆けつけます。

作戦では、それぞれの役割を決めていたものの、

結局、彼女だけに任せてはいられなかったようです。

 

「ルナは絶対に討たせやしない!」

「ありがとう!」

 

そして飛び出した、お馴染み「オレが守る」宣言。

今までは死亡フラグとなっていたこの言葉ですが、

鬱陶しいぐらいに重ねれば、逆に生存フラグになります。

ここまで言っておいて死んだら、間抜け過ぎますからね。

 

「…………」

 

二人が戦闘中にも関わらずイチャついている最中も、

ただ黙々と自分の仕事をこなしているレイ。

このような人がいるから、世の中は上手く廻っているのです。

 

「よし、このまま……」

 

何とか砲の内部に侵入したルナマリアさん。

あとはレーダーにしたがって通路を進むだけです。

それにしても、砲本体までの道のりが一本で本当に良かった。

これが迷路のような構造だったら、迷ってしまってアウトでした。

 

「これね……」

 

ようやく辿り着いた最深部には、

今まさに発射せんとしているレクイエムが。

一刻も早く砲のコントロールを破壊しなければ。

集中して命中率を高めるルナマリアさん。

壁を相手に集中したのは彼女が史上初です。

 

「ええい、こなくそ〜!」

 

ルナマリアさんは古めかしい掛け声を出すと、

正面にあるコントロールブースに向けて、

何もそこまでしなくてもというぐらいの一斉射撃。

よほどストレスが溜まっていたのでしょう。

 

「やった!」

 

直後、爆炎に包まれるコントロールブース。

これでもう、レクイエムを発射することはできません。

中にいる筈のジブリールも生きてはおりますまい。

見事、ルナマリアさんのリベンジが完了しました。

 

「ええい、何度目だミネルバ!」

 

しかし、肝心のジブリールは既に基地を離れていました。

またしてもミネルバに邪魔をされて苛立ちを隠せない様子。

今は引くが、力を蓄えていつの日にか必ず復習してやる。

それでは諸君、劇場版「逆襲のジブリール」でまた会おう。

 

「へ……?」

 

そんな彼の悪運もここで尽きることになります。

浮上したガディ・ルーの正面に回りこむレジェンド。

突然のことに状況が理解できずに固まるジブリール。

レイは投降を勧告することもないまま、ドラグーンを射出します。

 

「ほええええ〜っ!?」

 

一瞬の出来事に回避する間もありませんでした。

ドラグーンから一斉に放たれたビームは、

ジブリールのいるブリッジへと一直線に向かってきます。

 

「……………」

 

直後、光に包まれて消滅するジブリール。

生存説はどうやっても不可能な悲惨な死に様。

せめて捨て台詞ぐらい残してやりたかったものです。

 

「ありがとう、ジブリール……そして、さようなら、だ」

 

ダイダロス基地制圧の報に、議長は静かに笑みを浮かべます。

最初から最後まで、自分の掌の上で踊り続けてくれたジブリール。

そんなピエロのおかげで、彼の計画はいよいよ最終段階に移ります

 

「ルナ!」

「シン!」

「はあああっ!?」

 

帰艦したルナマリアさんを一番に出迎えるシン。

抱擁を交わす二人に惜しみのない賞賛の声が注がれます。

しかし、二人の今の関係を知らなかったヴィーノだけは、

シンが自分に黙って彼女を作っていたことに愕然とします。

彼女を作る時は一緒という、あの日の誓いは嘘だったのか。

お前のために用意していた妹物のDVDをどうしてくれる。

 

「アスラン。ここにいたの?

もう寝ないと傷に障るよ。朝には発進なんだから。」

「ああ……」

 

出航前夜、一人甲板で物思いに耽るアスランに、

いつの間にか後ろに立っていたキラが声をかけます。

ミネルバにいた頃は、一人でいることが多かったアスランですが、

この艦にいる以上、彼が一人でいることは不可能です。

 

「ここはこんなに静かなのにな……

何でオレ達は、ずっとこんな世界にいられないんだろう?」

 

先ほどまで激しい戦闘が行われていたというのに、

地球から見る月はいつもと変わらず美しい姿のまま。

その光景に感傷的な気分になったのでしょうか、

アスランの口から、思わずそんな言葉が漏れます。

 

「それは、夢があるからじゃない?」

「えっ……?」

「願いとか、希望とか、悪く言っちゃうと欲望?」

 

自分達は一体何のために戦っているのか?

悩むアスランに対して、キラはあっさりと答えを出します。

夢とか願いとか希望とか、いくら耳障りのいい言葉を使っても、

結局のところ、僕達は自らの欲望のために戦っているんだ。

これから議長と戦おうとしているのも、全ては自分達の欲望のため。

正義とかジャスティスとか名乗るのは、おこがましいにも程があるよね。

 

「お、お前……よ、欲望って……」

「でもそういう事でしょ? ああしたいとか、こうなりたいとか……」

「あ、ああしたい? ど、どんな……?」

 

キラの大胆発言にたじろぐアスラン。

要約すると「欲望の赴くままにあれこれしたい」ということ。

一体これからどんなことをしようとしているんだお前は?

欲望もレベル上げれば、ちょっとやそっとじゃ満たせなくなるぞ。

 

「……」

「アスラン? お〜い?」

 

そのままキス顔になるアスラン。

管理人はボーイズラブに関する知識が皆無のため、

毎回こんなパターンになってしまうことを許してください。

 

「アークエンジェルには、正式にオーブ軍第二宇宙艦隊所属として、

出来る限りのサポートを約束する」

 

翌日、出航を前に行われる決起集会。

正式にオーブ宇宙軍艦艇となったアークエンジェル、

カガリはクルー達を前に首長としてオーブの意志を示します。

 

「今やデュランダル議長は世界最強のリーダーだ。

だが、我々と同じくその強大な力を危惧する国もある」

「うん、強力すぎる力は身を滅ぼすよ」

「オーブは何より望みたいのは平和だが、

それは自由、自立での中でのことだ。屈服や従属は選べない」

「うん、大事なのは、フリーダムだね」

 

マリューさんやネオやラクスはまだわかる。

だが、どうしてキラが偉そうに皆の前に立っているのか、

アマギ一尉らオーブの軍人達は不満そうな表情です。

 

「アークエンジェルには、その守り手としてどうか力を尽くして欲しい」

 

アークエンジェルに平和への意志を託して、

カガリはオーブに留まり、国の復興に尽力します。

その道のりはとても険しいものになるでしょう。

自分が送った指輪がはめられていないのを見て、

アスランは彼女の固い決意を知ります。

 

「ロアノーク一佐、アカツキを頼むな」

「お任せを!」

 

カガリはアカツキをネオに託すと、行政官に呼ばれて、

皆への挨拶もほどほどに、格納庫を後にします。

アスランは声をかけることもないまま、その背中を見送ります。

 

「ちょっと、アスラン」

「カガリさんとお話しなくてよろしいのですか?」

「いいんだ。今はこれで」

 

慌ててアスランの元に駆け寄るキラとラクス。

宇宙に上がればカガリともしばらく会えなくなる。

最後ぐらい二人きりで過ごしても誰も文句は言わないよ。

僕達なんて、成層圏直前までイチャついてたし。

 

「焦らなくていい、夢は同じだ」

 

しかし、自分達を気遣う二人をよそに、

アスランは晴れ晴れとした表情で言い切ります。

体は離れていても、心はいつでも繋がっている。

そんなオレ達に別れの言葉なんて必要ないだろう?

 

「うわあ、青春まっしぐら!」

「それでこそアスランですわ!」

 

「耳をすませば」に出演しても違和感がないぐらい、

見ているこっちが恥ずかしくなってしまうような真っ直ぐさ。

これで帰って来て、カガリが知らない男と結婚してたら笑うなあ。

 

「あっ……」

 

ザフトの軍服で決起集会に出るわけにはいかず、

解散するまで待って部屋から出てきたメイリンちゃん。

こっそりアークエンジェルに乗り込もうと思っていましたが、

運の悪いことに、カガリと廊下で鉢合わせてしまいました。

 

「一緒に行くそうだな」

「は、はい、すみません……」

 

カガリの問いに怯えながら答えるメイリンちゃん。

彼女にとって自分は旦那が単身赴任中に作った愛人のようなもの。

「この泥棒猫!」的な昼ドラ展開が脳裏に浮かびます。

 

「あいつ、頼むな。私は一緒に行けないから……」

 

後ろめたそうな表情を浮かべるメイリンちゃん。

そんな彼女にカガリはアスランの世話を頼みます。

あいつは一人だとどうしても無理をしてしまうから、

誰かが傍にいて支えてやらないと。この子なら大丈夫だ。

自分の身を挺して守るほど、アスランのことが好きなのだから。

(アスランは全く気付いていないようだったけど)

 

「えっ……?」

「無事を祈る」

 

思わぬカガリの言葉にきょとんとするメイリンちゃん。

彼女もアスランさんと一緒に行きたいはずなのに、

国のためを思って、自分の感情を犠牲にしているのだ。

そればかりか邪魔者であるはずの私の事まで案じてくれるなんて。

なんて強い人なのだろう。大人の女性って格好いいなあ。

 

「えっと、もう泣いていいのかな?」

「うん、もうちょっと我慢しような」

 

勿論そんなはずはなく、相当無理をしていたカガリ。

いよいよ涙が滲んできますが、ここで泣いてしまっては、

今までの我慢が台無しになるので、もうちょっとの辛抱です。

 

「アークエンジェル全システムオンライン。発進準備完了。」

 

いよいよ発進の時、

目指すは月面都市コペルニクスです。

 

「では参りましょう、艦長」

 

当然のように副官席に座っているラクス。

宇宙の片隅に置いてきた虎とダコスタ君のことを、

彼女は果たして覚えているのか、不安なところです。

 

「……………」

 

飛び立つアークエンジェルを見送るカガリ。

一人の女の子としての複雑な感情を押し殺して、

国の代表として最後まで毅然とした態度を貫いた彼女、

その姿はまるで、父である先代のウズミ氏のようです。

 

「やっぱ、わだじもいぐ〜」

 

――1分後、

そこにはいつものように元気に泣きじゃくるカガリの姿が。

 

続く。

 

 

 


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