■TOPに戻る■ ■ルナマリアTOPへ■

 

【テキスト】それが俺のジャスティス

 

2006.11.6

 

前回までのあらすじ

カガリがオーブを守るために必死の戦いを繰り広げている頃、

恋人のアスランは、メイリンちゃんの肩を借りてブリッジへ。

二人べったりと寄り添っている姿は、まるで恋人同士の様です。

カガリが留守にした途端の大胆な行動に呆れるミリアリア。

その隣で、オレも負傷したら、ミリアリアに肩を貸してもらえるのかなと、

よからぬ妄想をめぐらすチャンドラ。でも実際にそうなった場合、

おそらくマードックさんに手荒に扱われるのがオチでしょう。

 

「何だ? どういうことだよ?」

 

戦闘を前に拘束を解かれ、艦から降ろされるネオ。

このままオーブ軍にでも引き渡されるのかと思いきや、

そこに用意されていたのはスカイグラスパー。

これをやるから自由に逃げていいとマリューさん。

ネオにとっては願ってもいない申し入れですが、

ここまでしてくれる理由がわかりません。何かの罠か?

 

「あなたはムウじゃない……ムウじゃないんでしょ」

 

そのまま背を向けて立ち去ろうとするマリューさん。

ネオは真意を問おうとマリューさんの顔を覗き込みますが、

マリューさんは目を逸らして彼を拒絶します。

いくら同じ姿をしていても中身は全く違ってしまっている。

彼は二度と帰ってこない。なら傍に置いていても辛いだけ。

データの消えてしまったファミコンカセットのようなものです。

 

「むう……」

 

一人その場に取り残され、困惑した表情のネオ。

オレはムウなんて男のことは知らない。牡羊座じゃないし。

しかし、心の奥で何か引っかかるのは何故だろう?

それに知らない美女が自分のことを昔の恋人だと言っている。

このシチュエーションを放っておくのは、男として如何なものか。

 

「メイリン、君は降りてドッグに残れ」

「えっ……?」

 

マリューさんがブリッジに戻ると、そこでも男女の別れ話が。

アスランはメイリンちゃんに艦を降りるように命じます。

発進すれば、アークエンジェルはザフトと戦うことになる。

無関係の彼女を姉や友達と戦わせるわけにはいきません。

 

「でも、私……」

 

突然、別れを告げられ、

頭の中が真っ白になるメイリンちゃん。

何か言わなきゃこのまま置いていかれちゃう。

 

「メイリン……」

「大丈夫ですから、私、大丈夫ですから、

だから……置いていかないでください」

 

そう言って、アスランの胸に泣きつくメイリンちゃん。

好きな人から離れたくないからこその行動ですが、

アスランは彼女の気持ちがわからずに困惑します。

弱った。これでは彼女を艦から降ろすことができない。

無理やり引き剥がすのはかわいそうだし。どうしたら……

 

「アスランさんと一緒にいたいよぉ……」

「艦長……」

「困ったわねぇ……」

 

アスランの腕にしがみついて泣きじゃくるメイリンちゃん。

こんなかわいい子に泣かれたら、何でも聞いてあげたくなりますが、

かわいいからって、泣けば何でも許されると思ったら、

将来ズルイ女になって、メガネを泣かすことになる。

彼女のためにも、ここは心を鬼にして断らなければなるまい。

 

「だめなのぉ……?」

「ウチで飼いましょう!」

 

再び炸裂する捨て犬のように潤んだ瞳。

さすがのアスランもこれには無条件降伏。

かわいいはインフィニットジャスティスです。

 

「でえええいっ!」

 

激突するデスティニーとアカツキ。

先に攻撃を仕掛けたのはデスティニー。

放たれた巨大なビームがアカツキに迫ります。

 

「うわああっ!」

 

放たれた一撃はアカツキの股間を直撃。

女性パイロットとしてはちょっと恥ずかしいです。

広がる閃光。たった一撃で勝敗が決してしまうのか?

 

「股間からビーム!?」

「ち、違う!」

 

意外な箇所からの攻撃に驚くシン。

先行者? いえ、これがアカツキ最大の武器、

対ビーム防御・反射システム「ヤタノカガミ」です。

ただの成金趣味で金ピカにしている訳ではありません。

 

「たいした腕も胸もないくせに!」

「なんだと! 見せてやる!」

 

ビーム兵器が通用しないということは、

ある程度の距離を保って戦っていればほぼ無敵。

しかしカガリはシンの挑発にまんまと乗ってしまい、

無謀にもビームサーベルによる接近戦を挑みます。

 

「うわっ!」

 

当然、パイロットとしての技量はシンの方が圧倒的に上。

アカツキは左腕をバッサリ斬り落とされてしまいます。

あらゆるビーム兵器を跳ね返すアカツキですが、

さすがにビームサーベルやビームブーメランは無理です。

 

「うわあああああ」

 

左手を失ってバランスを崩したアカツキ。

間髪入れずに投げつけられたビームブーメランが、

コックピットのカガリに迫る――

 

「カガリ!」

「どきどき……」

 

絶体絶命のピンチ。顔面蒼白になるアスラン。

また自分の目の前で大切な人が散ってしまうのか?

この時、隣に座っているメイリンちゃんが、

こっそりとシンを応援していたのは内緒です。

 

「上空より接近する物体あり!

 

誰もがアカツキの撃墜を確信したその時、

上空より猛スピードで降下して来るモビルスーツが。

はたしてその正体は――もはや言うまでもないでしょう。

 

「ふぎゃ!」

 

上空からの攻撃により、直撃寸前で破壊されるビームブーメラン。

危機一髪で救われたものの、爆風で吹き飛ばされるアカツキ。

相変わらずカガリに対しては乱暴な扱いです。

 

「何者!?」

 

突然の乱入者に悪役丸出しのリアクションのシン。

仰ぎ見る空に映る白い影。はたしてその正体とは――

(バレバレですが、シンの気持ちになって驚いてください)

 

「フリーダム……」

 

信じられない光景に絶句するシン。

それは自らの手で倒したはずのフリーダム。

確かに木っ端微塵に爆発していたはずなのにどうして?

しかも何だか所々が金色でパワーアップしてるっぽいし。

 

「マリューさんラクスを頼みます!」

 

キラと一緒にモビルスーツに乗って降下してきたラクス。

普段はモビルスーツに乗ることのない彼女ですが、

何故か特注のピンクのパイロットスーツを着ています。

虎といい無駄なことに金を使うのが好きな連中です。

 

「カガリは国防本部へ」

「わ、わかった!」

 

既に抜刀して戦う気満々のフリーダム。

デスティニーの相手はキラに任せることにして、

カガリはユウナのいる国防本部へと向かいます。

 

「ううっ……」

 

ラクスが来る!

禍々しいプレッシャー感じ取ったアスラン。

おぼつかない足取りで格納庫へ避難します。

 

「死ぬときは一緒です!」

「すまない……」

 

見かねて肩を貸すメイリンちゃん。

強大な敵を前にして、二人の仲は急接近です。

 

「ふぅ、やはり鬱陶しいな、地球の重力は」

 

激動する戦場に新たな混乱の火種が。

突如、出現した降下ポッドから現れたのは、

所属すらわからない三機の新型モビルスーツ。

 

 

「ラクス様のために!」

 

どう見てもカタギには見えないヒルダさん(22歳)。

言葉からも分かるとおり、クライン派の構成員です。

彼女たちは最新鋭の機体「ドムトルーパー」を駆り、

ザフトのモビルスーツを次々と撃破していきます。

 

「何あれ……」

 

正体不明の乱入者に怯えるミリアリア。

私たちに協力してくれているみたいだけど、

機体のカラーリングがどう見ても敵にしか見えない。

それにあのドラクエみたいな隊列は一体?

横から見るとすごく間抜けなんだけど。

 

「まずはアレだ、いくよ!」

「おう! アレだな!」

「いくのかよ、アレを!」

 

ヒルダさんの左右のインテリヤクザとチンピラは、

マーズ・シメオンとヘルベルト・フォン・ラインハルト。

どちらも数多の歴戦を潜り抜けた腕利きのパイロットです。

そしてこの三人が繰り出す三位一体の必殺技。

そう、三機のドムといえば、アレしかないでしょう。

 

「ジェットストリームアタック!

「トライアングルアタック!」

「クモの巣攻撃!」

 

なんかバラバラ。

そもそも降下してきた時点で三機いるのがバレているので、

ジェットストリームアタックの利点である奇襲の意味をなさず、

単に三機による火力任せの強引な攻撃になっています。

「あっ……」

「あっ……」

 

ラクスと顔を合わせる前に艦から脱出しようと、

格納庫に逃げ込んだアスランとメイリンちゃんですが、

どうやらあと一歩遅かったようです。

 

「ラクス……無事だったのか」

「はい。ただ乗っていただけですから」

(この人が、本物のラクス様……)

 

久しぶりの再会にもアスランは気まずそう。

ラクスたちに告げることなくザフトに服隊した挙句、

そこを脱走するという、相変わらずの迷走ぶり。

絶対にまた嫌味を言われるんだろうな……

 

「アスランの方こそ、大丈夫ですか?」

 

しかしラクスはそんなアスランを責めることなく、

白々しいまでの笑顔で労わりの言葉をかけます。

その笑顔の裏の感情は量り知ることはできません。

 

「これが大丈夫に見えるか?」

「うふふふふ……」

 

さっそく繰り広げられる攻防。

格納庫は戦場以上の緊張感に包まれます。

そんな中、メイリンちゃんだけはその空気を感じ取れず、

きれいだな〜なんて呑気なことを思っています。

 

「お体のことではございません」

 

ラクスはアスランの挑発を軽く受け流すと、

今後こそ本当に笑顔を作って、諭すように言います。

身体ではなく、あなたの心の方は大丈夫なのかと。

 

「あっ……」

 

今の自分の状態を鋭く指摘されて、

アスランは思わず黙り込んでしまいます。

やはりラクスには全てを見透かされている。

彼女への苦手意識は克服できそうにありません。

 

「うおおおおっ!」

 

フリーダムに飛び掛るデスティニー。

どうしてまだ生きているのかは知らないけど、

再び目の前に現れたなら、もう一度倒せばいいだけ。

今度は塵一つ残さず消滅させてやる!

 

「えいっ!」

「なにぃ!?」

 

勢いよく振り下ろされたアロンダイト。

しかしフリーダムは迫る刃を既の所で真剣白刃取り。

普通の人間の動体視力・反射神経をはるかに凌駕した、

スーパーコーディネーターのキラだからこそ出来る芸当です。

よいこのみなさんは決して真似しないでください。普通に死にます。

 

「うわああっ!」

 

がら空きになった胴体に打ち込まれるレールガン。

しかしビーム兵器ではないので、相手を吹き飛ばしただけ。

自身の甘さから一度敗北した相手にも関わらず、

未だに不殺を貫いているキラ。本当に甘い御仁でござるよ。

 

「これがビームだったら、もう終わってるって……」

 

見せ付けられる圧倒的な実力差。

普通のパイロットなら戦意を喪失しているところですが、

シンには逆効果。怒りによって更なる力が覚醒します。

 

「そう言いたいのかよ! あんたは!」

 

シンの頭の中で破裂する嫉妬玉。

ようやく邪魔者がいなくなったオレの主役街道。

それを阻もうとする者は何人たりとも許しはしない!

 

「シン。帰投しろ」

「ええ〜っ!?」

 

これから反撃開始というところでレイから通信が入り、

デスティニーは補給のため、一時帰投することに。

敗北は許されない戦い。万全の体勢の望む必要があります。

 

「ユウナ!」

「カ、カガリ!」

 

一方、カガリも国防本部に到着。

結婚式以来、ユウナと久しぶりに対面します。

しかしあの時とは二人の立場が完全に逆転しており、

今やユウナに味方するものは誰一人いません。

 

「酷いよこれは! あんまりだ! 訴えてやる!」

 

軍人たちにボコボコにされたユウナ。

藁にもすがる思いでカガリに泣きつきます。

聞いてよカガリ、こいつら酷いんだよ。

まさかお尻にあんなものを入れるだなんて……

 

「カガリ、僕は君の留守を一生懸命……」

「……」

 

ユウナは必死に自己弁護を繰り返しますが、

カガリは無言のまま冷たい視線を送るばかり、

今はこいつの戯言に付き合っている暇はありません。

 

「私のこの手が真っ赤に燃える!」

「……カガリ?」

 

堅く拳を握るカガリ。

その背後にはメラメラと紅蓮の炎が燃えており、

さすがのユウナも異変に気づいて怯えだします。

 

「お前を倒せと轟き叫ぶ!」

「カ、カガリさん!?」

 

注:カガリです。

 

「ファイナルアターック!」

「カガーリンッ!」

 

炸裂する渾身の右ストレート。

ユウナは遥か彼方に吹き飛ばされ、

国防本部の壁には人型の穴が空きました。

 

「ひどいよ、TBSに抗議の電話が殺到してるよ」

 

両手を縛られて無抵抗の人間を殴るなんて、

何て非人道的な行為。小うるさい人権団体が黙っちゃいないよ。

ユウナは必死に訴えますが、特にそのような抗議はありませんでした。

 

「言え! ジブリールはどこだ!?」

「本当に知らないんだって! 確かにウチに来たけど……」

 

ユウナの首根っこを掴んで詰め寄るカガリ。

ジブリールの居場所を答えねば、お前のアレを切るぞ。

 

「ウイイレして、みんなのテニスをして、ポケモン交換して、

ガンプラ作って、猫のDVDを見て、一緒にお風呂に入って、

お昼寝した後で帰ったんだもん!」

「遊びすぎだ!」

 

いくら詰め寄っても、ユウナは知らぬ存ぜぬを通すばかり。

ここまでされて隠し通す根性がこいつにあるはずもない。

ならば本当に知らないのだろう。どこまでも使えない男だ。

 

「本当にお久しぶりですわね」

「ああ……」

 

再びアークエンジェルの格納庫。

ラクスと取り留めのない会話をしながらも、

アスランの視線は見慣れぬ機体に注がれます。

 

「何かありますね……」

「何かあるな……」

 

あれはどう見てもジャスティス。

アスランは言いようのない不安に襲われます。

今、この艦にパイロットはオレしかいない。

これはどう考えても、オレに乗れってことだよな?

 

「ジャスティスか……」

「あら、気づきました?」

 

アスランがジャスティスについて触れると、

ラクスは待っていましたとばかりに嬉しそうに答えます。

どうですか? 格好いいでしょう? 乗ってみたくありません?

 

「君も……オレはただ戦士でしかないと、そう言いたいのか?」

 

戦うためだけの人形にはなりたくない。

そう思って逃げ込んだ先でも同じ扱いを受けるのか。

アスランは絶望したようにラクスを問いただします。

君も議長と同じ。むしろ議長よりもタチが悪いのではないか。

 

「それを決めるのはあなたですわ」

 

自身に向けられる非難の視線も何のその、

ラクスは何食わぬ顔で平然と言ってのけます。

私は持ってきただけ。選択権はあなたにあります。

 

「ええっ?」

 

ここまで周到に準備しておいて、

あくまで責任はオレに押し付けるつもりか!?

真綿で首を絞めるようなやり方にアスランも唖然とします。

 

「怖いのは、閉ざされてしまうこと。

こうなのだ、ここまでだと、終えてしまうことです」

 

戸惑うアスランを無視して、いつものラクス節が炸裂します。

今日の演説のテーマは「あなたの夢をあきらめないで」です。

 

(なんだこれ? 予備校のCM?)

(がんばれ受験生!)

「傷ついた今のあなたに、これは残酷でしょう……」

 

オレは志望校に落ちた受験生か?

真意のわからない言葉にアスランは困惑しきり。

勝手に人の気持ちを代弁されても困るのだが。

 

「でも、キラが……」

「キラ?」

 

心ここにあらずになっていたアスランですが、

キラの名前を出されて、話に引き戻されます。

さすがラクス。アスランの操縦法は心得ています。

 

「私をこれで?」

「うん、ごまかせるし、一石二鳥じゃない?」

「でも、今のアスランには……」

 

数時間前のエターナル。

ひとしきりのイチャイチャを終えた後、

キラはアスランにジャスティスを届けるため、

ラクスと共に地球に降下することを決めました。

 

「そうも思うけどね。でも、何かしたいと思ったとき、

何もできなかったら、きっと、それが一番辛くない?」

「どういうことですか?」

「ほら、予約なしで買えると思ったゲームが、

いざ発売日になってどこにも売ってなかったら、

そこまでやりたかった訳ではなかったんだけど、

買えなかった悔しさで無性にやりたくならない?」

「ああ、その気持ちわかりますわ〜」

 

君が僕にフリーダムを渡してくれたように、

今度は僕がアスランのために何かしてあげなきゃ。

同じ気持ちを経験したことがあるキラだからこそ、

今のアスランの気持ちは痛いほどわかっています。

 

「キラ……」

 

親友の心遣いに深い感動を覚えるアスラン。

といっても、用意してくれたのはゲームではなく兵器なので、

単純に優しいと言っていいものかどうか判断に困りますが。

 

「力はただ力です。そして、あなたは確かに

戦士なのかもしれませんが、アスランでしょう?」

 

揺らぐアスランにラクスがとどめの一言。

戦士である前にアスラン・ザラという一人の人間。

ならばその信じる道を進めばいいのではないですか。

あなたはそこにいますよ。

 

「あっ……」

 

自分とは何かに悩んでいたアスランに対して、

ラクスはたった一言で簡単に答えを導き出しました。

そもそも確固たる自分を持っているラクスにとって、

アスランの悩みなど中二病程度にしか見られていません。

 

「きっと、そういうことなのです」

「あっ、私はメイリンです」

 

そういうことがどういうことかよくわかりませんが、

ラクスの言葉はアスランの心に強く響いたようです。

一方、二人の会話についていけていないメイリンちゃんは、

今が自己紹介のタイミングだと勘違い。よろしくね、ラクス様。

 

「十一時から、ミサイル八!」

「回避!」

 

格納庫でアスランたちが呑気に会話をしている頃も、

アークエンジェルはミネルバと激しい戦闘中の真っ最中。

ブリッジにマリューさんの慌しい声が響きます。

 

「えっ!?」

 

その時、予想外の方向から放たれたビームが、

迫り来るミサイルを次々と撃ち落としていきます。

一体誰が? 呼んでもいないのに虎が来ちゃった?

いえ、アークエンジェルには、キラ以外にももう一人、

おいしい場面が大好きな男がいたことをお忘れでしょうか。

 

「へへっ、すまんなあ、余計なことして」

「あ、あなた!?」

 

ブリッジのモニターに大写しになるのは、

もう二度と見ることはないと思っていた男の顔。

どうして? 何か忘れ物? そういえば変なお面があったけど。

 

「でもオレ、あのミネルバって艦、嫌いでね」

「えっ……?」

「大丈夫、あんたらは勝てるさ」

 

もしかして記憶を取り戻したのかと思いましたが、

彼の口から出てくる言葉はネオのまま。

ならば尚更戻ってきた理由がわかりません。

しかし動揺するマリューさんを知ってか知らずか、

ネオはいつものように軽い調子で言葉を続けます。

 

「なんたってオレは、不可能を可能にする男だからな」

 

ネオはマリューさんを真っ直ぐな瞳で見つめると、

もはや伝説となったあの名セリフを告げます。

こんな恥ずかしいセリフを真顔で言える30台男性は、

彼女が知る限り世界でたった一人しかいません。

 

「ムウ……」

 

今まで感情を抑えていたマリューさんも、

ネオのこの一言で完全デレモードに突入。

その豊満な胸が恋する少女のように高鳴ります。

ちなみに、この感動の場面の裏側でミリアリアは、

逃がしたはずの敵の捕虜が加勢するという展開に、

ある人物を思い出して苦々しい気分になっていました。

 

「デスティニー、作業終了。発進可能です」

 

迫るフリーダムとの再戦に静かに闘志を燃やすシン。

今度こそ奴と決着をつける。次回でこのレビューも最終回だ。

 

「よ〜し、私も頑張るわよ〜!」

「ルナマリアは残れ」

 

シンの後を追いかけるルナマリアさんですが、

一歩踏み出したところで、レイに呼び止められます。

 

「命令だ。気を散らせばシンが負ける」

「えっ? でも……」

 

思いもよらぬ命令に戸惑うルナマリアさん。

そりゃあフェイスの二人には劣るかもしれないけど、

私だって少しはみんなの役に立っているんだから。

先日の活躍、あなただって目の前で見たでしょう?

 

「今のあいつにお前は邪魔だ」

 

納得のいかない様子のルナマリアさんに向かって、

レイは無表情のまま、血も涙もない言葉を投げつけます。

 

「邪魔……」

 

その一言に唖然として立ち尽くすルナマリアさん。

そりゃあ本人も薄々気づいてはいましたが、

言ってはいけない一言というのがあるでしょう。

 

「……」

 

戦うか、否か――選択を迫られるアスラン。

一度はカガリたちを見捨てて議長の言葉を信じた。

戦場でキラとも刃を交えた(そしてバラバラに斬り刻まれた)。

今度はラクスの言葉に乗せられて議長たちと戦うのか?

それではあまりにも主体性がなさすぎじゃないか?

 

「君ができること君が望むこと、

それは君自身が一番良く知っている……」

 

アスランの脳裏によみがえる議長の言葉。

オレにできることは何だ? オレは何を望んでいる?

カガリと結婚? そしてキラと義兄弟? メイリンと愛の逃避行?

何にせよ、そのためには平和な世界にしなければならない。

そのために議長やシンたちと戦うのか?

そもそも彼らを倒せば本当に平和になるのか?

劇場版が作られるってことは、結局また戦争になるのでは?

どうすんの? どうすんの? どうすんのよ、オレ?

 

「ア・ス・ラ・ン」

 

そんな葛藤を吹き飛ばすラクスの言葉。

幼少期から植え付けられた彼女への忠節。

アスランが彼女の期待を裏切ることなど不可能です。

 

「……」

「アスランさん……」

 

アスランはジャスティスの方に向き直ると、

踏み出せなかった一歩をついに踏み出します。

そんな彼を心配そうに見守るメイリンちゃん。

まだ戦えるような身体じゃないのに……

しかし決意した彼を止めることなどできはしません。

 

「いってらっしゃい♪」

 

一方、満面の笑みでアスランを戦場に送り出すラクス。

キラにフリーダムを渡した時はあれだけ躊躇っていたのに、

アスランに対しては、どこまでもあっけらかんとした態度。

本当に彼を戦士としてしか見ていない可能性が大です。

 

「アスラン・ザラ、ジャスティス出る」

 

自分たちが正しいのか、議長が正しいのかはわからない。

だが決断した以上は、自らが信じる正義を貫くのみ。

アスランは力強くその正義の名を告げると、

今も一人戦う親友の元へと飛び立っていきます。

 

「邪魔……」

 

まさかの戦力外通告に放心状態のルナマリアさん。

そんな彼女が次回、重大な役割を担うことになります。

 

 

続く。

 


ホームページ制作