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【テキスト】

 

2006.5.3

 

前回までのあらすじ

アスラン(おまけにメイリンちゃん)脱走。

まさか脱走犯が片思いの相手と実の妹とは知らず、

「最近物騒な世の中になったわね〜」と嘆くルナマリアさん。

自分が撮った写真が原因になったことなど知る由ありません。

まじめなんだけど天然なのが可愛いルナマリアさん。

流行りませんかね、まじめ天然。流行りませんね。

 

「メイリン・ホークはアスランと一緒です」

 

新型機でアスランのグフを追跡するシンとレイ。

レイはメイリンちゃんがグフに同乗していることを議長に報告すると、

情報の漏洩を防ぐことを理由に撃墜の許可を求めます。

 

「わかった、撃墜を許可する」

「議長!」

 

あっさりと撃墜を許可する議長。

アスランが脱走した理由もわからぬまま、

二人の有能な部下の命を取られてはたまらない。

艦長がすぐに抗議しますが、議長は鋭い眼光で睨み付け一蹴。

 

「聞こえたな、シン。では、そういうことだ」

「でも……そんな……」

 

撃墜――それはつまり二人を殺すということ。

いくらアスランがいけ好かないやつとはいえ、

今まで一緒に戦ってきた仲間を簡単に殺すなんて。

それにメイリンはアカデミーからの友達だし、ルナの妹。

ていうか、二人を殺したらオレがルナに殺される。

 

「シン!踊らされているお前も!」

 

グフに迫る二機の新型機。

その性能差から、もはや逃げ切るのは不可能。

アスランは攻撃を回避しながらシンを説得します。

シンはバカだけど悪い奴ではない。きっと話せばわかってくれる。

 

「そんな手は通じない!見苦しいですよ、アスラン!」

 

二人の会話に大ゴマを使って割り込んでくるレイ。

普段無口な分、突然大声を出すとその迫力はかなりのもの。

普段無口な方々は職場や学校で突然大声を張り上げてみてください。

きっと周囲がシーンと静まり返ること間違いなしです。

 

「レイ!」

 

シンを説得するにはまずレイを止めなければ。

レジェンドへ向けてグフのビームガンを放つアスラン。

しかし攻撃はビームシールドにあっさりと掻き消されます。

 

「死ねば助かるのに……」

「この野郎……」

 

いくら最新の機体とはいえ量産機のグフと、

特別機のレジェンドとでは圧倒的な性能差が存在。

それはパイロットの腕ではどうすることもできません。

嘲笑に顔を歪ませるレイ。自分は伝説のエースを蹂躙している。

 

「聞け、シン!議長やレイの言うことは、

確かに正しく心地よく聞こえるかもしれない」

 

なおもアスランはシンを説得しようと言葉を続けます。

確かに議長やレイの言うことは正しいように聞こえる。

だが、もしも議長やレイの声がユウナと同じ声だったら?

想像してみてくれ。ほら、信憑性が一気になくなるだろう。

オレが言いたいのは、大事なのは人物ではなく話の内容ということだ。

キラなんてよく聞いたら、言っていることめちゃくちゃだぞ。

 

「だが、彼らの言葉は、やがて世界の全てを殺す!」

 

自分もかつて父の人形だったからこそ言える真実味のある言葉。

アスランの必死の訴えにシンの心も揺れ動きます。

よし、ここでオレとキラの心温まる友情エピソードを話せば、

きっとシンもわかってくれる。アスランは言葉を続けます。

 

「オレはそれを……!」

「シン、聞くな!」

 

人形になるなという言葉を人形が制します。

しかもレイが怒鳴ると同時に雷鳴が鳴り響くという、

カミナリオヤジもびっくりの大迫力の演出つき。

ちょうど雷が鳴るタイミングを待っていたんでしょうか。

 

「アスランはすでに少し錯乱している!」

「ふざけるな!」

 

アスランの訴えを「錯乱している」の一言で切り捨てるレイ。

真実を伝えたいという思いを踏みにじられアスランも激怒します。

オレが錯乱したのは、朝起きたら隣にミーアがいたときだけだ。

 

(アスランが錯乱……)

 

難しい会話に一人だけ蚊帳の外のメイリンちゃん。

「ギルを裏切る」に続く不可抗力ダジャレを発見します。

アスランが錯乱……アスランがサクラン……サクラン・ザラ。

 

「あは……はははは……」

「メ、メイリン……」

 

緊張の糸が切れて錯乱するメイリンちゃん。

「彼女だけでも降ろさせろ」と訴えるアスランに対し、

「その存在に意味はない」とあっさりと切り捨てるレイ。

その非常さにシンも動揺します。本当に彼らは敵なのか?

オレはどうする?アスランを信じるのか?それともレイを信じるのか?

 

 

「シン」「お兄ちゃん」「シン」「シン」「シン」

「世界の真の敵、ロゴス」「ただのバカだがな」

「やめてよね」「戦争はヒーローごっこじゃない!」

「グゥレイト!」「誰もがみな幸福に生きられる世界」

「シン……ステラ守るって……」「夜なのにアーサー」

「地味だよね」「お兄ちゃん……マユ、もう大人だよ……」

 

シンの頭の中に多くの人の言葉が浮かび上がります。

もはや完全に自己は喪失。善悪の概念すら消失。

永遠とも思える闇の中を彷徨った後、彼が出した結論は――

 

「ウパーーーー!」

 

――暴走。

16歳の少年が考えるにはあまりに難しいこの問題。

それはシンの脳の積載量を軽くオーバーしていました。

 

「シン!」

「ま、まずい……」

 

もっと子供にもわかりやすく紙芝居とかで説明すればよかった。

アスランが後悔するも既に遅し。種割れしたシンは、

目の前の敵の破壊のみを行うバーサーカーと化します。

 

「世界の……真の敵……ロゴス……」

「待て、シン!落ち着け!」

「シン、ほらメイリンちゃんだよ〜、妹キャラだよ〜」

 

最終的にシンが信じたのは議長の言葉。

戦争のない、誰もがみな幸福に生きられる世界。

マユやステラのような子を二度と生まないために。

そう、さっき格納庫で議長に誓ったばかりではないか。

それを阻むならばたとえアスランとはいえ容赦しない。

 

「世界の……シンの敵……」

「ダメだ!ああなったらもう……」

「ど、どうしよう……」

 

完全に目がいっちゃっている。

こうなってしまったら説得するのは不可能。

スク水着たマユちゃんぐらいにしか彼を止められません。

 

「あんたが悪いんだ……あんたが……」

 

ぶつぶつと呟く言葉は怨嗟。

ようやく倒すべき敵が見つかったっていうのに、

どうしてあんたは今になってまた話をややこしくするんだ。

あんたみたいな奴がいるから、50話かけても話がまとまらないんだ。

あんたとフリーダムさえいなければ、2クールで終わっていたのに。

 

「シン!」

「はわわ……」

 

長剣アロンダイトを構えるデスティニー。

こうなってしまったら、もうやるしかないのか。

アスランはグフのビームソードを抜き放ち対峙します。

その隣で生まれて初めて向けられる殺意に怯えるメイリンちゃん。

こうなったら私とアスランさんの石破ラブラブ天驚拳で返り討ちだ!

えっ、ラブラブじゃないから出せない?そんなぁ……

 

「あんたが裏切るからああっ!」

「ちいっ!」

 

グフはデスティニーの斬撃を寸前で回避。そして反撃。

赤い電熱を帯び襲い掛かるスレイヤーウィップ。

しかしデスティニーは高速で迫る鞭を鷲掴みにすると、

掌からのビーム一閃。鞭を真っ二つに断ち切ります。

デスティニーの接近戦用武装「パルマ・フィオキーナ」です。

「シャイニング〜」とか、「ゴッド〜」とか、そんな名前じゃありません。

 

「うおおおおおおっ!」

「なっ―――!?」

 

光の翼を展開して突進するデスティニー。

アスランもその圧倒的な速さには反応できず、

一瞬にしてグフの左腕が斬り落とされます。

 

「オレは、もう、絶対に……!」

 

止めを刺すべく追撃するデスティニー。

フリーダムを墜とした一撃を髣髴とさせる、

長剣を突き出しながらコックピット目掛けての突撃。

シンの必殺技「スーパー突撃」です。地味とか言うな。

 

「シン!」

 

神速で迫るそれは回避不可能の一撃。

それでもアスランは最後までシンに呼びかけます。

ていうか親友のピンチにキラは来ないのか?キラは?

ああっ!キラはシンにやられたんだった。

 

「いやっ……!」

 

目前に迫る剣先。恐怖に顔を背けるメイリンちゃん。

ようやくアスランさんとカップルになれたばかり(なってない)なのに、

シンのバカ!もう宿題とか写させてあげないんだから!

 

「うおおおおおおおっ!」

 

絶叫と共に放った一撃はグフのコックピットのわずか右を貫きます。

制御を失ったグフはそのまま海へと落下――そして爆発。

最期の瞬間までキラと同じだったアスラン。どれだけ仲良しなんでしょう。

 

「シン、よくやった」

「アスラン……メイリン……」

 

訪れる静寂。先ほどまで熱かった頭は一気に冷め、

二人を殺してしまったという現実に茫然自失となるシン。

さっきまで話していた相手。今はもういない。自分が殺した。

まるで覚めない悪夢を見ているような気分。

経験者ならわかりますが、親しい人を殺すとこんな気持ちになります。

 

「裏切った彼らを、敵を討ったんだ」

 

涙を流すシンにレイは笑顔で任務の成功を告げます。

議長の命令なら何でも従う彼に恐ろしいものを感じますが、

自分も命令に従い大切な者を自らの手で殺してしまった以上、

シンは彼の言葉に従うしかありません。

 

「……………」

 

任務を終えて基地へと帰還するシンたち。

その様子を海上に浮かぶ艦から眺めている男が一人。

どこかで見覚えのあるこの長髪は……ユウナ?(違います)

 

「メイリンが……そんなはずありません……」

 

何故アスランが脱走したのか?その真相は闇に葬られ、

二人のスパイが脱走して撃墜されたという事実のみが残ります。

そして疑われるのはメイリンちゃんの姉のルナマリアさん。

妹と上官(片思いの相手)を同時に失ったショックを考慮されることなく、

保安部から執拗な尋問を受けます。プライベートなことから根掘り葉掘り。

どさくさ紛れにスリーサイズや下着の色など関係ないことまで聞かれます。

 

「アスランも……そんなの、何かの間違いです!」

 

二人の無実を訴え泣き崩れるルナマリアさん。

大丈夫、視聴者は二人の無実をわかっていますから。

 

「……………」

「……………」

「……………」

 

議長への報告を終えて、ミネルバに帰艦したシンたち。

しかし出迎えるヨウランやヴィーノの表情は暗く沈み込んでいます。

ラクス(ミーア)の胸を揉みしだいたアスランは死んでもいいとして、

メイリンちゃんを失ったショックは相当なものだったようです。

特にヴィーノは彼女にほのかな恋心を抱いていたようで、

それを任務だからで割り切れるほど彼らは大人ではありません。

 

「あっ………」

 

向こうから歩いてきたのはルナマリアさん。

長い尋問の末、どうにか彼女の疑いは晴れましたが、

心身ともに衰弱しきっています。特に心はボロボロです。

 

「……………」

「……………」

 

一番会いたくなかった相手。

しかしここで引き返すわけにもいかず、

シンは気まずそうに顔を俯かせながら、

立ち止まるルナマリアさんの横を通ります。

 

「…………ごめん」

 

すれ違う際にたった一言。

色々言いたい言葉があったはずですが、

それしか言葉が出ませんでした。

 

「……………」

「……………」

 

背中に突き刺さるルナマリアさんの視線。

逃げ出したい感情を抑えてシンは立ち止まります。

もちろんそんな言葉で許されるはずありません。

「ごめん」で済んだらガルマは特攻していません。

 

「うわああああんっ!」

「……………」

 

シンの背中に体をぶつけるルナマリアさん。

シンは表情を硬くしてそれにじっと耐えます。

命令とはいえ自分が二人を殺してしまったのは事実。

彼女の気が済むまで殴ったり罵倒してくれて構わない。

 

「なんでぇ……なんでよぅ……」

「ルナ………」

 

殴ったり罵倒してくれた方がまだ楽でした。

ルナマリアさんは肩を震わせて泣くばかり、

行き場のない叫びはやがて嗚咽に変わります。

いつも気丈な彼女が初めて見せる弱々しい姿に、

シンは自分が犯してしまった罪の大きさを実感します。

どんなことがあっても女の子を泣かしちゃダメです。

 

「…………………!!」

 

シンの胸の中で子供のように泣きじゃくるルナマリアさん。

その震える体を抱きしめながらシンも彼女と同じように涙します。

命令だから仕方がなかった。誰が悪いというのではない。

やり場のない思いに今の彼らは泣くことしかできません。

 

「涙の数だけ強くなれるさ……」

 

その様子をすんごい冷めた目で見ている今回の悲劇の元凶。

彼にとって議長以外の人間の生死に意味などないようです。

ステラさんを逃がす際に見せた優しさは気まぐれだったのでしょうか。

 

「さて……」

 

何事もなかったかのように作戦は続行されます。

ヘブンズベースに逃げ込んだロゴスを打倒すべく、

ザフトと義勇軍による地球連合への攻撃準備が着々と進行中。

議長もミネルバに乗り込み、降伏勧告の返答を待ちます。

 

「さて……」

 

多くの艦が参集する中、その場を離れていく艦が一隻。

右の男に注目です。そう、先ほどの背中の正体はキサカでした。

どうやらあの後、海底に沈んだグフの残骸を回収したようです。

アークエンジェルまでたどり着けずに無念の死を遂げたアスラン。

せめて亡骸だけでもカガリの元へ届けようという彼の思いやりでしょう。

 

「ぐぅぐぅ……」

「すやすや……」

 

……あれ?

 

 

続く。

 

 

 


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