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【テキスト】ゴージャス・メイリン

 

2006.3.28

 

前回までのあらすじ

ジブラルタル基地の格納庫に呼び出されたシンとアスラン。

そこで議長から出題されたモビルスーツのシルエットクイズ。

正解はデスティニーとレジェンドという新型のモビルスーツでした。

特にデスティニーにはシンを想定した設定がされており、

これにはシンちゃんも子供のように喜びます(子供だけど)。

男の子なら誰しも「オレ専用モビルスーツ」に憧れるものです。

 

「これは……これからロゴスと戦っていくために、ということですか?」

 

隣で無邪気に喜んでいるシンをよそに、

レジェンドを託されたアスランは抗議の声を上げます。

先日の演説で戦争を終わらせたいと議長は語っていたのに、

実際には新たに戦争のための兵器を造っていた。

アニメの主題歌なのにアニメじゃないぐらい矛盾しています。

しかし議長は戦争を終わらせるためには仕方のないことだと言って、

アスランの抗議をあっさりと流します。全てはロゴスが悪いのです。

 

「でも、なぜ彼らを!

アークエンジェルとフリーダムを討てと命じられたのです!?」

「ならば私も聞くが、なぜ彼らは私たちの所へ来なかった?」

 

ロゴスをどうしようとも別に構いはしませんが、

アスランにとって先日の戦闘は仕方ないではすみません。

賠償と謝罪をいくら積まれても許せないほど、

フリーダムが撃墜されたことで心に深い傷を負いました。

しかし、議長は迫るアスランを逆に問い返します。

 

「グラディス艦長も戦闘前に投降を呼びかけたと聞いている」

「それは!」

 

議長は投降しなかったキラたちを悪者にします。

キラたちが議長のことを信用できないのは、

ミーアの存在とラクスの暗殺未遂が原因なのですが、

この場でそれを言うこともできず、アスランは返答に窮します。

 

「ラクスだってこうして共に戦おうとしてくれているのに」

「えっ? ええ、私も頑張りますわ!」

 

アスランが何も言えないのをいいことに、

議長はしれっとした顔でミーアを指し示します。

完全に開き直ったこの態度。大人の汚さ爆発です。

 

(そいつはラクスじゃないでしょ!)

 

――って言いたいけど言えない。

明らかにヅラの人に向かってヅラって言えないような、

朝の情報番組の女子アナのような気持ちになるアスラン。

ああ、後先考えずに思い切って言ってしまいたい。

隣で知ったかぶって喋っている奴の偽りの仮面を剥ぎ取りたい。

 

「君の友人のキラ・ヤマト君、思えば彼も不幸だった……」

「過去形にしないでください!」

 

遠い目でキラについて語り出す議長。

その知ったような口調にアスランも憤慨します。

会ったこともないあなたにキラの何がわかるっていうんだ。

オレもあいつが何を考えているのかさっぱりわからないけど。

 

「ラクスと離れ、何を思ったのかは知らないが、

オーブの国家元首をさらい、ただ戦闘になると現れて、

どこにも属さないという立場をいいことに好き勝手に敵を撃つ。

確かに強いが、あくまで才能によるもので特に努力はしていない。

不殺を貫いているようだが、所詮はただの自己満足にすぎない。

支離滅裂な言動を繰り返し、地味な主人公から主役の座を奪い、

姉と恋人のスネをかじり、自分は働かずに引きこもる毎日。

友人の婚約者を奪い、詰め寄られると「やめてよね」と逆ギレ。

そして飛び出した、コズミック・イラ史上に残るあの極悪台詞。

友人のメガネを涙で濡らした。今作では登場しないメガネだが、

彼はきっと婚約者の遺影を見るたびに思うのだろう。

キラがいなければ今頃は……と、この先ずっと思うのだろう……」

 

 

「ぎ、議長……そ、その辺で……」

 

アスランが怒りでプルプルと震えだしてきたので、

ミーアは慌てて議長に話題を変えるように訴えます。

亡くなった人のことをあまり悪く言うのはよくないわ。

あと、誰なのかは知らないけど、そのメガネさん可哀想。

 

「彼も君たちのように、その力と役割を知っていたら、

彼自身も悩み苦しむことなく、幸福に生きられただろうに……」

「幸福……でありますか?」

 

話は戦争論から幸福論へ。議長が言うには、

人は自分を知り、精一杯できることをして役立ち、

満ち足りて生きるのが一番幸せだということらしいです。

みなさんは誰かの役に立って満ち足りて生きていますか?

 

「誰もが皆、幸福に生きられる世界になれば、

もう二度と、戦争など起きはしないだろう……」

 

瞳を輝かせて自らが理想とする世界を語る議長。

彼の望む通りの世界が実現できたら、

次回作はモビルスーツの類が一切登場せず、

シンといちごパンツの女の子とのぬるいラブコメになります。

 

「幸福な世界……」

 

幸福な世界を想像して夢を含まらせるシンちゃん。

彼の想像する幸福な世界がどんな世界かは、

倫理上の問題から画像を載せることができません。

彼のとろけるような表情から察してください。

 

「その日のために、君たちにも今を頑張ってもらいたい」

「はい!」

 

議長の激励に元気よく返事をするシン。

その表情は完全に議長を信頼しきっています。

一方、怒りの収まらないアスランはミーアを睨みつけますが、

ミーアはわざとらしく視線を外して知らないふりです。

 

「すごいですね!こんなに連合側の軍が参集してくるとは……」

「ええ……でも、なんかこう、落ち着かないわね」

「そうですね。もうあれは敵と刷り込まれている感じで……」

 

ジブラルタルに停泊中のミネルバ。

ブリッジにいる艦長たちの視界に映るのは、

議長の演説に感銘を受けて参集してきた地球連合の戦艦。

ロゴスを討つべくザフトに協力してくれるようですが、

見慣れない光景に艦長たちは戸惑いを覚えているようです。

 

「ホント、これでいっせいに裏切られたら、

ジブラルタルはおしまいですね。ハハハ……」

 

艦長たちの緊張を感じ取ったアーサー。

お得意のユーモアでこの場を和ませようとします。

 

「あれ?」

 

しかしアーサーの思惑とは裏腹に、

ブリッジはとても寒い空気に包まれます。

連合との戦いも終わっていない今、

それはちょっとギャグになっていません。

 

(いけない、いけない……)

 

ちょっとブラックユーモアが過ぎたか、

もうちょっとわかりやすい笑いの方が良かったな。

では、気を取り直して次のギャグいってみよう。

 

「いや〜、こんなに人が多いと誰が誰だかわかりませんね。

さっきも知らないおっさんが艦内をうろついてましたよ。ハハハ……」

 

どや、今度こそ大爆笑間違いなし。

噴き出したコーヒーの掃除は自分でやってくださいね。

 

「あれ?」

 

アーサー渾身のギャグにも艦長たちは無反応。

ブリッジはベルリン以上の厳しい寒さに包まれます。

 

(ま、まずい……このままでは……)

 

嫌な汗を掻いてきたアーサー。

ジブラルタルにはデュランダル議長も来ているはず、

もし艦長からこの件を報告されたら自分の首が飛んでしまう。

ここは何としてでも笑いを取っておかなければ!

 

「降りてきてくれ、笑いの神!」

 

一枚絵だけで笑わせられる彼らが羨ましい。

しかも彼ら自身には笑わせている自覚がないときた。

私には無理なのか。やはり天然には叶わないのか。

 

「なんかキター!」

 

絶体絶命のピンチにアーサーの種が弾けた。

頭の中が鮮明になり、思いついた会心のギャグ。

これはイケる。ワイは笑いのコーディネーターや。

 

「まあ、仮にスパイが紛れ込んでいても失敗に終わるでしょう。

スパイだけに失敗。なんちゃって……」

 

 

「あれ?」

 

 

「ディアッカの痔悪化。リアルで」

 

 

「あれ?」

 

 

「学生の頃、私は毎朝電車通学でした。アーサー・トレイン。なんちゃって……」

 

 

「あれ?」

 

 

「シンとレイの部屋には幽霊が出るらしいですよ。シンレイ現象。なんちゃって……」

 

 

「あれ?」

 

 

「いっぱいの「い」を「お」に変えて、おっぱい!おっぱい!」

 

 

「あれ?」

 

 

「ぎる

「レイ。元気だったかい?」

 

基地に戻った議長の部屋をレイが訪れます。

前回のようにすぐにでも抱きつきたいところですが、

議長に報告しなければならないことがあるので、

まずはそれから。イチャイチャするのはその後です。

 

(何の話をしているのかしら?)

 

そんな二人の会話を陰から盗み聞きするミーア。

本人としてはしっかりと隠れているつもりなのですが、

頭隠して胸隠さず。この胸は隠れるのには不向きなようです。

 

 

「何か飲み物は?」

「おっと……」

 

議長が直々に飲み物を運ぶなんて、

この2人は一体どういう関係なのかしら?

議長と美少年との怪しい関係に興味津々のミーアですが、

ふと視線を下ろした先に一枚の写真が落ちていることに気づきます。

 

「これは……?」

 

落ちていた写真を拾い上げるミーア。

そこに写っていたのは見知らぬ男女の集団。

しかしその中に見覚えのある人物の姿を発見します。

 

「ふぅ……」

 

いつものように自室で塞ぎこんでいるアスラン。

傍から見るとちょっと物憂げなだけ見えますが、

彼の頭の中ではキラと議長の言葉が交互に浮かび、

それはもうえらいことになっています。

 

「やっぱりいた。ダメよ、こんなことしてちゃ!」

「ミーア?」

 

アスランがキラの名前を寂しそうにつぶやいていると、

突然ドアが開き、部屋の電気がつけられます。

入ってきたのはミーア。何やら焦った様子です。

 

「こんなことしてたら、本当に疑われちゃう!」

「疑うって……何をだ?」

 

突然、部屋に入って来て疑われていると言われても、

アスランは何のことかわからずに困惑するばかり。

ネット上でヅラ疑惑でも持ち上がっているのか?

 

「あなたはダメだって!」

「ふん、ダメで悪かったな……」

 

真正面からのダメ出しにむくれるアスラン。

今の自分がダメなのは自分が一番よくわかっている。

頼むから放っておいてくれないか。今は一人になりたいんだ。

 

「ほら、これ……」

「なっ……!?」

 

胸元から一枚の写真を取り出すミーア。

それを見て、アスランも顔面蒼白になります。

そこには先日キラたちに会ったときの様子が写っていました。

議長が敵と見なしたアークエンジェルのクルーたち。

この写真は自分と彼らとの関係をどのようにでも解釈できます。

一体誰がこんな写真を?ミリアリアが金のために売ったのか?

 

「お腹すいたな〜」

 

犯人はこの人、ルナマリアさん。

そんな写真を撮ったことはすっかり忘却の彼方です。

 

「議長、さっきレイって子と話していて……」

 

レイの報告。それはアスランの不審を伝えるものでした。

さきほどの格納庫でのシンに対するアスランの言動から、

レイは彼が未だにアークエンジェルに対する思いが強く、

今後も議長の命令に服従することはないだろうと判断しました。

議長もついにアスランを見限ったようで、その意見に賛同。

ルナマリアさんが半ば趣味で撮影した写真を物象に、

アスランをスパイ容疑で逮捕するという決断を下しました。

 

「ねっ、だからマズイの。ヤバイの!」

 

未来の夫を犯罪者にするわけにはいかない。

ミーアは議長の命令に従うようアスランに訴えます。

上司なんて表面上だけでも従っている振りをしていればいいんだから、

今からでも真面目に働いて、マメに接待もして、お歳暮とかも送らなきゃ。

 

「ミネルバ所属、特務隊アスラン・ザラ、保安部の者です。

ちょっとお話をお聞きしたいことがあるのですが……」

 

そんなミーアの訴えをノックの音が掻き消します。

保安要員たちがアスランの身柄を拘束しに来たようです。

 

「ど、どうしよう……」

「さすが……議長は頭がいいな……」

 

なるほど、これが議長のやり方か。

アスランは全てを悟ったように力なく笑います。

オレがどれほどの決意を持って復隊したかも知らないで、

使えなくなったらすぐにポイとは。全くひどい球団もあったものだ。

 

「確かにオレは、彼の言うとおりの戦う人形になんかなれない」

 

やはり議長は信用できない。

抱いていた不信が確信に変わりました。

アスランは椅子を掴んで窓ガラスを叩き割ります。

 

「ったく、悪あがきを!」

 

ドアを打ち破って突入してきた保安要員たち、

しかしアスランはすでに窓から逃走した後でした。

捕り逃したら議長に大目玉を食らう。急いで追いかけます。

 

「とおっ!」

「うおおっ!」

 

窓の上に身を潜めていたアスラン。

最後尾の保安要員に飛び乗り気絶させると、

あっという間に保安要員たちをのしていきます。

先日もシンとレイにあっさりとやられたことといい、

ザフトの保安要員は本当に使えません。

 

「ア、アスラン、どうして?」

「議長は自分の役割を果たす者にしか用はない!」

 

アスランはミーアを連れ出して逃走しますが、

ミーアは未だに状況がわからず混乱しています。

どうしてこんなことをしちゃったの?

これでは本当に取り返しがつかなくなってしまう。

 

「彼に都合のいいラクス!

モビルスーツパイロットとしてのオレ!

単純で使いやすいシン!

萌え要員としてのルナマリアとメイリン!

いやし系としてのディアッカとイザーク!」

 

それぞれに決められた役割がある。

そう言われれば聞こえがいいかもしれないが、

全ては議長に都合がいいように決められた役割。

議長によるジャイアニズムの究極系みたいな世界です。

 

「だが君だって、ずっとそんなことをしていられるわけないだろう!」

 

アイドルに向かって言ってはならない一言。

いつまでもピンクザクの上で歌っていられるわけはなく、

もしも落ち目になったら脱げとか言われるかもしれません。

 

「そうなれば、いずれ君だって殺される!だから一緒に!」

 

――その末路がオレだ。

アスランはミーアに議長の元から離れるよう必死に訴えます。

オレと一緒にキラたちのいるアークエンジェルへ行こう。

そこには本物のラクスもいるけど大丈夫、殺されはしないさ。たぶん。

 

「わ、私はラクスよ!」

「ミーア!」

 

しかし、ミーアはアスランの手を振りほどき、

あくまでも自分はラクスだと言い張って聞きません。

今はそんなごっこ遊びをしている場合ではない。

アスランは苛立ったように強く彼女の名を呼びます。

君はラクス・クラインではく、ミーア・キャンベルだろう。

 

「私はラクス!ラクスなの!」

 

しかしミーア・キャンベルに戻ることをミーアは拒絶します。

今となっては彼女をその名前で呼ぶのはアスランしかいません。

 

「ラクスがいい!」

 

ミーアの脳裏に浮かぶのは整形前の自分。

アイドルを夢見て田舎から上京してきたものの、

貰える仕事は深夜番組の一山いくらの水着要員のみ。

誰にも必要とされていなかったあの頃に戻るぐらいなら、

たとえ決められた役割だとわかっていても彼女は今を選びます。

 

「ミーア……」

 

その悲痛な叫びにアスランも言葉を失います。

初めて会ったときはあんなに無垢な少女だったのに、

こんな短期間でどうしてここまで変わってしまったのか。

やはり芸能界という世界はオレの想像以上の伏魔殿なのか。

 

「だから、アスランも……ねっ? 大丈夫よ……」

 

すがりつくような声でアスランに訴えかけるミーア。

私から議長にお願いしてあなたのことを許してもらうから。

今の使えない関西弁のマネージャーはクビにして、

あなたを私の新しいマネージャーにしてあげるから。

 

「ミーア……」

 

完全にすれ違ってしまった二人。

アスランはわずかな望みをかけて手を差し出しますが、

ミーアがその手を掴むことは最後までありませんでした。

 

「いくじなし!」

 

いつまでもこうしているわけにはいかない。

アスランは説得を諦め、一人で階段を下りていきます。

その場に取り残されたミーアは雨に打たれながら、

全身を震わせていつまでも泣き続けていました。

 

「何があったの?」

「スパイが逃走したらしいわよ」

 

アスランの脱走に警戒態勢が取られる基地内。

友達とお喋りしていたメイリンちゃんも、

その物々しい雰囲気を感じて部屋に戻ります。

万が一にでもスパイと鉢合わせしたら大変ですからね。

 

「物騒な世の中だなあ〜」

 

いくら基地内とはいえ、かわいい女の子の一人部屋。

危険な目に会わないように戸締りをしっかりして、

怪しい人は部屋の中に入れないようにしないとね。

 

「アスラン・ザラ、入る!」

「あ、はい、どうぞ」

 

お仕事はオペレーターのメイリンちゃん。

うっかりいつもの癖で簡単にドアを開けてしまいました。

 

「アスランさん!?」

 

意外な人物の姿にメイリンちゃんびっくり。

部屋に入ってきたのは、ずぶ濡れのアスラン。

手には銃を持ち、ただならぬ雰囲気です。

 

「ごめん……」

「ほええっ!?」

 

いったいどうしたんですか?

メイリンちゃんが訊こうとするよりも早く、

アスランは彼女に近づくと、手のひらで口を塞ぎます。

普通の人が同じことをやったら完全に犯罪ですが、

アスランの場合は何をやっても許されるのです。

 

 

「外に出たいだけなんだ……頼む……」

「もごもごもご」(私でよければ……)

 

眼前に迫るアスランの顔にドキドキのメイリンちゃん。

これは何なの?キスなの?キスしちゃうの?

いきなりそんなことを言われても心の準備が。

それに外に出すって?何を出すの?アスランさんって強引。

 

「保安部だ!室内を検分したい。ドアを開けろ!」

「追われてるの……あなた?」

 

そんなピンク色の妄想をノックの音が吹き飛ばします。

誰かを探している保安部。追われているアスラン。

のんびり屋さんのメイリンちゃんも状況を察しました。

これは……かくれんぼだな。

しかも鬼が複数の。バラエティでよく見るやつだ。

 

「こっち!」

「お、おいっ!?」

 

再び窓から出て行こうとするアスランですが、

メイリンちゃんは決意したようにアスランの手を引くと、

入り口横にあるバスルームに向かって駆け出します。

まさか脱出用の秘密の抜け道でも用意しているのか。

 

「バカ!無理だ!」

 

もちろん秘密の抜け道などなく、そこは普通のバスルーム。

すっかりやる気のメイリンちゃんをアスランは慌てて止めます。

女の子の部屋だからと言って遠慮するような奴らではない。

逆に大喜びで下着とか漁るような変態の集まりなんだぞ。

 

「大丈夫です!」

「なにを!?」

 

しかしアスランの制止の声も聞かず、

メイリンちゃんはいきなり軍服を脱ぎ始めます。

無骨な軍服の下から現れたのは、淡いブルーのシャツ。

大き目のシャツ一枚の女の子。いいですよね。

 

「お、おい!」

 

シャツも豪快に脱いで、ブラ一枚になるメイリンちゃん。

普段はタイトな軍服に隠れてわかりませんでしたが、

姉のルナマリアさんに負けず劣らずのナイスバディ。

もう一枚行くか?僕たちは今世紀最大の感動を目にするのか?

 

「よいしょ、よいしょ」

「いや、あの、その、オレにはカガリとキラが……」

 

残念ながら、もう一枚脱ぐことはありませんでした。

メイリンちゃんは下着姿のまま頭からシャワーを浴び始めます。

「今日はお仕事お休みですか?」とでも聞かれそうな展開に、

アスランも慌てふためきます。さすがに18時台でそれはマズイ。

 

「やります!」

「やるのか……」

 

まっすぐな瞳でアスランを見つめるメイリンちゃん。

彼女の勢いにアスランも完全に飲まれてしまっています。

ほとんど会話すらしたことがない女の子といきなりそんな……

しかし女の子にここまでさせて何もしないのは逆に失礼ではないか。

据え膳食わぬは男の恥。ならやるしかないじゃないか!

 

「おい、いないのか!?」

「何? 何の騒ぎ?」

 

いつまで立っても出てこないメイリンちゃん。

不審に思った保安要員たちが部屋の前に集まります。

そこに偶然通りかかったルナマリアさん。

妹の部屋の前に集まる保安要員たちを見て何事かと近づきます。

 

「あぁん……あたし、火照っちゃって……」

 

保安要員がドアを打ち破ろうとしたとき、中からドアが開けられます。

部屋の中から現れたのは、バスタオル姿のメイリンちゃん。

実際はバスタオルの下に下着を着けていますが、

いきなりバスタオル姿の女の子が目の前に現れたら、

健全な男子なら誰しもがその下は全裸だと思うでしょう。

 

「おっぱいだ……」

「おっぱいだ……」

「生脚だ……」

 

突然現れた裸の美少女。保安要員たちは目を大きく見開いて、

細いけど出ているところは出ている身体を舐めるように凝視します。

この仕事やってて良かった……。感動に涙を流す保安要員たち。

コーディネーター反対を叫んでいるナチュラルたちは、

この光景を目の前にしても同じことが言えるのだろうか。

 

「ちょっとメイリン!やだ、何て格好よ、あんた!」

「あっ、お姉ちゃん……」

 

そんな妹のあられもない姿に激怒するルナマリアさん。

嫁入り前の娘が何ですか、はしたない。お姉ちゃんは恥ずかしいよ。

 

「だって……この人たちが……裸を見せろって……」

「この変態!」

「いや……そんなことは……」

 

ウチの妹に何をするつもりだったの!

保安要員たちをキッと睨みつけるルナマリアさん。

そのあまりの迫力に保安要員たちもたじろぐばかり。

メイリンちゃんの部屋の前から慌てて立ち去って行きます。

それにしても画面左上の保安要員、見すぎです。

 

「ふぅ……」

 

どうにかやり過ごせたようだ。

アスランは安堵したように深く息を吐きます。

何よりもルナマリアが部屋に入って来なくて助かった。

妹の部屋、それもバスルームにいることがバレたら、

ミーアのとき以上の修羅場になるのは間違いなかった。

嫉妬の末に刺されてゲームオーバーになるのだけは避けたい。

 

「ううっ……ぐすっ……」

 

大胆な行動に出たメイリンちゃんですが、

恐怖と恥ずかしさで崩れ落ちてしまいました。

保安要員の一人がいやらしい目で見てた。気持ち悪い。

今頃、あんなことやこんなことを想像してる違いない。

それにアスランさんにも下着姿を見られた。

どうせ彼に見られるのがわかっていたら、

もっとかわいい勝負下着を着けていたのに。

ディオキアで買った通常の3倍ブラが無駄になった。

 

「ありがとう……」

「ぽっ……」

 

そんなメイリンちゃんの気持ちを知ってか知らずか、

アスランは震える彼女にバスローブをかけると、

肩を抱いて優しく微笑みながら甘い声でささやきます。

画面上ではわかりませんが、息もすごく爽やかです。

 

「でも助かった……すまない」

「ま、待って!」

 

改めて窓から出て行こうとするアスラン。

メイリンちゃんは思わずその足を掴みます。

ここでアスランを行かせてしまったら、

もう二度と会えなくなってしまうかもしれません。

 

「か、格納庫!」

 

メイリンちゃんの思わぬ行動に驚くアスラン。

急いで部屋から出て行かなければなりませんが、

こんな格好の女の子にすがり付かれては不可能です。

わかった。行かないから早く服を着てくれ。谷間が。谷間がね。

 

「基地のホストに侵入して、どこかで警報を出せれば……」

 

アスランの逃走を手伝うために、

パソコンをいじり始めるメイリンちゃん。

マサチューセッツ工科大学をわずか10歳で卒業した

スーパーハッカーの彼女の手に掛かれば、

どんな厳重なセキュリティも容易く進入できます。

たとえば、アーサーの部屋から警報を鳴らして、

全ての容疑を彼になすりつけることも可能です。

 

「追っ手はほとんどが港です。今なら……」

 

メイリンちゃんは港から警報を出して注意を港に向けさせると、

港とは逆方向にある格納庫に向かって車を走らせます。

作戦は見事成功。車は無事に格納庫まで到着しました。

普段のおっとりとした少女の顔から一転、

緊急時には峰不二子ばりの使える女に大変身。

ストップ高で上がり続けるメイリンちゃんの株に、

全国のルナマリアファンは大変肩身の狭い思いです。

 

「行ってください!」

「でも、君……」

 

格納庫にはちょうど搬入されたばかりのグフが。

メイリンちゃんはそれに乗って脱出するように促します。

そんな彼女にアスランは感謝と同時に疑問が浮かびます。

どうしてオレのためにどうしてここまでしてくたんだ?

君とはほとんど話したこともなかったのに。

 

「ずっと……見てました」

「あっ、そうだったのか?」

「気付いてなかったんだ……」

 

ずっと遠くからアスランのことを見つめていたメイリンちゃん。

その一途な思いにアスランはこれっぽっちも気付いていませんでした。

鈍感な彼を落とすためには遠くから見ているだけでなく、

姉のように積極的に行かなければならないのです。

その積極的に行った姉も先日玉砕したのですが。

 

「殺されるぐらいなら、行った方がいいです」

 

悲痛な想いでアスランを送り出すメイリンちゃん。

本当は行って欲しくない。でも行かなきゃ殺されちゃう。

それにアスランさんが死んだら全国の女性ファンが悲しむ。

もしかしたら後追い自殺者とか出ちゃうかもしれない。

 

「あぶない!」

「えっ!?」

 

アスランがメイリンちゃんに感謝の言葉を告げようとした時、

背後からの気配に気づいて、とっさに彼女をかばいます。

鳴り響く銃声と共に入口から現れたのはレイ。

彼は車を運転するメイリンちゃんを偶然目撃していました。

 

「やっぱり逃げるんですか!また!」

「レイ!」

「オレは許しませんよ!ギルを裏切るなんてこと!」

 

激しい口調でアスランに詰め寄るレイ。

メイリンちゃんがいるのにもかかわらず、

アスランに向かって遠慮なく銃を連射します。

「ギルを裏切る」ってちょっとダジャレになっていますが、

そんなことを突っ込むことのできないぐらい鬼気迫る表情です。

 

「きゃあ!」

「やめろレイ!メイリンは!」

 

メイリンまで巻き込むわけにはいかない。

アスランはレイに攻撃を止めるように訴えます。

ほら、彼女はこんなに怖がっているじゃないか。

 

「はうはうはう、はうはうはう」

「意外に大丈夫そうだけど、やめろ!」

 

怯える様子もかわいいメイリンちゃん。

むしろもっと泣かせてみたいところですが、

さすがにそれはちょっとかわいそう。

アスランは覚悟を決めてライフルを手に取ります。

 

「このっ!」

「クッ!」

 

白兵戦では最強を誇るアスラン。

物陰から飛び出してライフルを放つと、

弾丸はレイの銃のグリップに正確に命中。

レイは吹き飛ばされた銃を拾おうと後退します。

 

「じゃあ、オレは行くけど、君は……」

 

逃げるなら今しかない。

最後にメイリンちゃんの方に向き直るアスラン。

今から自分はザフトを脱走して母国の裏切り者となる。

無関係な彼女をこれ以上巻き込むわけにはいきませんが……

 

「くぅ〜ん」

 

捨てられた子犬のような潤んだ瞳で見つめるメイリンちゃん。

ずぶ濡れの美少女にこんな瞳で見つめられたら、

消費者金融で金を借りてでも連れて帰りたくなりますね。

 

「おいで」

 

この子を一人残していくわけにはいかない。

アスランはメイリンちゃんに手を差し伸べます。

彼女を連れて行っても邪魔になるだけかもしれませんが、

このかわいさの前にはそんな憂慮もすぐに霧散します。

いいんです。かわいいはジャスティスなのです。

 

「ごめん……でも、このままじゃ君まで……」

 

アスランはメイリンちゃんを乗せグフを発進させます。

たった10分前までは部屋でのんびりしていたのに、

今は好きな人と一緒に軍を脱走して逃避行の真っ最中。

あまりに唐突な展開に泣き出すメイリンちゃんですが、

今はアスランを信じて付いて行くしかありません。

 

「シン、デスティニーとレジェンドの発進準備をさせろ」

「えっ? なんで?」

 

このまま彼らを逃がすわけにはいかない。

レイはデスティニーを整備中のシンに通信を入れると、

脱走したアスランたちを追跡するために、

議長から託された二機のモビルスーツの発進準備をさせます。

どさくさまぎれにレジェンドも自分の物にしちゃいます。

 

「でもどうする?」

「アークエンジェルを探す」

「えっ、でもあの艦は?」

「沈んじゃいない。きっとキラも……」

「でも……派手に爆発してたよ」

「沈んでないの!大丈夫なの!」

 

オーブを追われ、たった今ザフトを脱走したアスラン。

彼が身を寄せられる先はアークエンジェルしかありません。

しかし未だに消息不明の艦を探すのは幽霊船を見つけるようなもの。

アスランを頼りにしていたメイリンちゃんも一気に不安になります。

 

「けど、何でまたスパイなんか……」

「油断するなよ……追うのは、アスラン・ザラだ」

 

デスティニーとレジェンドに乗り込んだシンとレイ。

わざわざオレたちが新型機で出なくてもと、

不満を口にするシンにレイが冷たい声で告げます。

自分たちが今から追うスパイ――それはアスラン・ザラ。

 

「アスラン?」

 

もしかしてオレがいじめちゃったから?

根は良い子のシンちゃんは思いっきり動揺します。

どうしよう。また艦長に怒られちゃうよ。

だいたい主人公の新しい機体が登場するときって、

仲間のピンチに颯爽と駆けつけるのがデフォなのに、

どうして仲間を討つために出て行かなきゃならないんだ。

 

 

続く。

 

 


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