■TOPに戻る■ ■ルナマリアTOPへ■

 

【テキスト】乱暴 怒りのアスラン

 

2005.11.26

 

前回までのあらすじ

破れた自由の翼――フリーダム墜ちる。

地球環境に与える影響も相当なものと思われましたが、

キラは誰もが無意識のまま目覚まし時計を止めるように、

意識を失う直前に原子炉閉鎖のボタンを押していました。

原発に勤める方には、ぜひとも見習ってもらいたい姿勢ですね。

 

「ククククク……」

 

よもやフリーダムのパイロットが生きているとも知らず、

シンは高笑いを浮かべて勝利の余韻に浸っています。

ついに主役交代の時がきた。元からオレが主役のはずだけど。

 

「キラ……」

 

呆然と立ちつくすアスラン。

眼前の光景を未だに信じることができません。

キラならきっと大丈夫。そうに違いない。

あいつは殺しても死なないような奴だから。

オレがイージスで自爆した時も大丈夫だったし、

今回も何か補正がかかって生き延びているはずだ。

偶然開いた大穴にすっぽりと入っていて助かったとか、

休暇でサーフィンに来ていたイザークたちに救助されたとか。

 

「大丈夫……」

 

直後、アスランの希望を打ち砕くような大爆発。

舞い上がった水しぶきがフリーダムの撃墜を告げます。

 

「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ……」

「ア、アスラン!?」

 

ついに壊れてしまったアスラン。

ルナマリアさんが必死に呼びかけますが、

精神崩壊してしまったかのように笑うばかり。

2年前のシンちゃん状態です。

 

「シン、やったな!」

 

帰艦したシンはスタッフたちの拍手と歓声に迎えられます。

いつものようにシンに駆け寄って抱きつくヴィーノ。

このままキスでもしちゃいそうな体勢です。

 

「シン!すごかった!あんな戦い方、びっくりしちゃったわよ」

 

シンの快挙にルナマリアさんも興奮を抑えきれません。

戦い方次第でどんな強敵にも勝つことができるんだね。

私のザクも今度は上下に分かれて戦ってみようっと。

 

「よくやったなシン、見事だった」

「ありがとう、レイのおかげだよ」

「今度は私にも教えてね」

 

レイとがっちり握手を交わすシン。

2人の熱い友情にルナマリアさんも感動します。

シンもレイも私が知らない間に大人になったんだね。

 

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう」

「ありがとう」

 

早くも最終回を迎えるシン。

その輪を離れたところから見つめる寂しそうな背中。

親友を部下に殺されて、途方に暮れるアスランです。

 

「み〜つけた」

 

おやおや、そこにいらっしゃるのは伝説のエースさん。

シンは黙って立ち去ろうとしているアスランを見つけると、

ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながら近づいていきます。

 

「シン……そっとしておいてあげて……」

 

心配そうに見守るルナマリアさん。

今のアスランはまるで迷子のキツネリスのように、

ちょっとでも触れてしまったら壊れてしまう状態です。

 

「仇は取りましたよ。あなたのもね」

 

痛みを知らない子供に慈しみの気持ちなどあるはずもなく、

シンはむかつく笑顔とはこういうものだとばかりに、

アスランに向かって勝ち誇った笑みを浮かべます。

 

「気をつけ!歯を食いしばれ!」

「なにするんですか!」

 

こんなアホな奴にキラが殺されたのか。

そう思うと悲しみよりも怒りが先にきます。

瞬間湯沸し機のようにカッとなったアスラン。

シンの襟をつかむと、今にも殴らんばかりに拳を握り締めます。

 

「コラ〜ッ!ケンカはやめなさ〜い!」

 

慌てて止めに入る委員長気質のルナマリアさん。

すぐにケンカしちゃうんだから、シンにも困ったものね。

……って、あれ?暴れているのアスランだ。

 

「キラは殺そうとはしていなかった!」

 

シンの襟首をつかんで詰め寄るアスラン。

キラのフリーダムは不殺を貫いているのだから、

せいぜい斬り刻まれてバラバラにされる程度だった。

なのにどうして、お前はバラバラにされてやらなかったんだ。

 

「なに、訳の分かんないこと言ってるんです!?」

「あいつを討てたのがそんなに嬉しいか!?」

「ア……アスラン!シン!」

 

意味不明な言いがかりをつけられ怒鳴り返すシン。

反抗するシンにますます怒りを募らせるアスラン。

どさくさまぎれにアスランに胸を押し付けるルナマリアさん。

しかし残念ながら、アスランは無反応です。

 

「嬉しかったら悪いんですか!?」

 

強敵をやっと倒せて喜んじゃいけないんですか!?

「お前が討たれればよかった」とでも言いたげなアスランに、

シンは声を荒げて反論します。泣いて悲しめとでも言うのか?

オレが敵を倒すたびに泣いていたら、その方が気持ち悪いだろう。

 

「そうよね……」

 

シンの言っていることも間違ってはいない。

私なんか一機撃墜しただけで嬉しいんだから、

伝説のフリーダムを倒した喜びは計り知れない。

私にもそんな日は来るのかな。たぶん来ないな。

 

「これはキラの分!」

 

シンの分際で生意気なことを言うな!

怒りに駆られたアスランの右ストレートがシンの頬に炸裂。

普段は温厚なアスランの突然の暴力に周囲は唖然とします。

 

「この野郎!何しやがる!」

「オレをキレさせたらたいしたものだ!」

「やめて、アスラン!」

 

サンライズをBGMに始まる乱闘。

殴りかかろうとする2人を周囲が体を張って制止します。

どさくさまぎれにアスランに抱きつこうとするルナマリアさんですが、

ヴィーノが邪魔で抱きつけません。なんなのよこいつは。

 

「やめてください、アスラン!」

 

シンの態度に問題があったことは認めるが、

いかに上官と言えど、今の叱責は理不尽ではないか。

レイがいつものように冷静な口調でアスランに詰め寄ります。

 

「なんだと……」

「私の目を見て……」

 

それでもアスランの怒りは収まりません。

興奮している彼をどうにかして落ち着かせようと、

じっとアスランの瞳を見つめるルナマリアさんですが、

残念ながら、アスランの視界に彼女は入っていません。

 

「フリーダムを討てと言うのは、本国からの命令です」

 

シンはそれを見事に果たした。

賞賛されても叱責されることではない。

レイは淡々とした口調で言葉を続けます。

 

(レイの言うとおりだ……)

 

レイの意見にルナマリアさんも頷きます。

私たちは軍人だから、上層部からの命令は絶対。

アスランもこれには反論しようがないだろう。

彼は議長から信任されているフェイスだもんね。

 

うるさい!あいつに討たれなきゃならない理由などない!」

「ええっ!?」

 

なおも反論するアスランにルナマリアさんもびっくり。

どんな正論を言っても今のアスランには通じません。

議長がどれだけ偉かろうと、アスランの中では、

キラ>>>>越えられない壁>>>>議長です。

 

「キラは敵やない……敵やないんや」

 

酒でも入っているのでしょうか、

ついには泣き出してしまったアスラン。

それでも彼は涙ながらにキラの無実を訴えます。

あんないい奴を殺すなんて……お前らは鬼の子か。

 

「はぁ〜?」

 

バッカじゃねえの?

シンは呆れかえったように声を上げます。

オレがステラを助けた時は偉そうに説教したくせに、

いざ自分が似たような立場になると泣き言を言うのか。

 

「敵です」

 

泣いて言葉にならないアスランに向かって、

レイは無表情のまま血も涙もない事実を告げます。

我々はザフトであり、議長と最高評議会に従うもの。

特にギルが決めたことに逆らう奴は何人たりとも許しません。

 

「うるさい!うんこ!うんこ!」

「もういじめないで」

 

完全に冷静さを失ってしまっているアスラン。

駄々っ子のように暴れる彼に周囲もドン引きです。

このままでは放送禁止用語を叫ぶのも時間の問題。

ルナマリアさんも泣きそうな表情でレイにやめるよう訴えます。

 

「あなたの言っていることは個人的な感傷だ。正直困ります」

 

レイはかわいそうな人を見るような目でそう言うと、

シンの手を引いて、その場から立ち去ってしまいました。

以前から亀裂が生じていた彼らの関係ですが、

もはや修復が不可能なまでに悪化してしまいました。

こうなってしまうと、困ったのはルナマリアさん。

昔からの仲間を取るのか、好きな男を取るのか。

どっちからも相手にされてないのが気になるところですが。

 

「ドラえもんの新しい声優陣もようやく馴染んできたな」

「……そうだな」

 

一方、ケンカとは無縁の仲良しコンビ。

議長の演説の興奮も冷めやらぬザフト軍艦の通路を、

ボケとツッコミの立ち位置をキープしながら歩いています。

 

「議長は具体的に何をするつもりなんでしょうね?」

「名を上げた企業製品の不買運動かな?」

「見ろよ、あの髪型……」

「艦内ではヘルメットを脱いでほしいよな」

「……………」

 

そんな彼らの耳に聞こえてくるのは、

この事態にも、まるで緊張感のない軍人たちの言葉。

それを聞いたイザークの表情がたちまち険しくなっていきます。

 

「笑い事ではないわ!」

 

ヘラヘラしている軍人たちをイザークが怒鳴りつけます。

ロゴスを討つというのがどれぐらい大変なことなのか、

こいつらは何もわかっていない!視聴者も全然わかってない!

お前らが思っている何十倍も大変なことなんだぞ。

 

「イザーク……」

「少しは自分でも考えろ!その頭はただの飾りか!」

 

やれやれ、また始まったか。

説教を始めたイザークをディアッカが諌めます。

お前の言いたいこともわかるが、

飾りみたいな髪型のお前が言っても説得力ないぞ。

 

「お前の頭は今に爆発するぜ?」

「うるさい!」

「爆発したらアフロだぜ、アフロ」

「うるさい!」

 

これから議長は何をなさるつもりなのだろうか。

何にせよジュール隊の出番が多くなることは間違いなく、

ディアッカと2人で正月に旅行する計画も白紙になりそうです。

 

「ロード・ジブリール!」

「ブルーコスモスの親玉だ!引きずり出せ!」

 

しかし、議長が動くよりも早く世界は動いていました。

彼の演説に感銘を受けた人々が各地でゲリラ行為を開始。

ロゴスのメンバーの建物が次々と襲撃されていきます。

「ロゴス御殿」と近所で評判のジブリールの屋敷も襲われます。

 

「くそっ、デュランダルめ!」

 

元より奴はこれが狙いだったのだろう。

苦々しい表情を浮かべながら逃走するジブリール。

こうなったら屋敷を捨て、地球連合の本拠地である

ヘブンズベースへ逃げ込むしかありません。

 

「あ……タマを置いてきちゃった」

 

逃走の途中、部屋に飼い猫を置いてきてしまったことに気付きました。

人間嫌いの彼が心を許す唯一の友達。かわいくてたまりません。

 

「タマ〜!」

 

急いで飼い猫の元に引き返すジブリール。

この後、銃弾飛び交う屋敷の中で腕に猫を抱きながら、

襲い掛かるゲリラを千切っては投げ千切っては投げの

大活躍を見せるのですが、それはまた別の話――

 

「くっ……」

 

アークエンジェルの医務室。

あの後、カガリに救出され、ここまで運び込まれたキラ。

あれだけ派手な爆発に巻き込まれたというのに、

顔と手にわずかな傷を負っただけで済みました。

どうやら彼を殺すには生身の時を狙うしかなさそうです。

 

「キラの寝顔♪寝顔♪」

 

そこに食事を持って入ってきたカガリとミリアリア。

キラがケガをしているのに、なぜか嬉しそうなカガリ。

いつもいつも、あいつには偉そうにされているから、

たまには、私もお姉さんらしいところを見せてやらないとな。

 

「なんだ、起きちゃったのか」

「残念ね〜」

 

寝ているキラをいじって遊ぼうと思っていたのに。

せっかくの復讐の機会を逃がして残念そうなカガリ。

寝顔を撮影する予定だったミリアリアもがっかり。

アスランに一枚千円で売りつける計画が台無しです。

 

「フリーダム壊れちゃった……」

「そんなのまた買ってやるから」

 

今作になって初めて情けない表情で弱音を吐くキラ。

インパルスにやられてしまったということよりも、

フリーダムを失ったことが相当ショックなようです。

彼がいくら最強のコーディネーターとはいえ、

フリーダムがなければただの偏屈な無職の少年。

四次元ポケットを失ったドラえもんのようなものです。

 

「艦長、基地司令部から、シンとアスランさんに出頭命令です」

 

ジブラルタル基地に入港したミネルバ。

入港してすぐに基地司令部から通信が入ります。

いつものように内容を艦長にお知らせするメイリンちゃん。

その後ろでアーサーが同じポーズをとっている理由は謎です。

 

「さてと……これが最後のカードとなるか否か……」

 

邪悪な笑みを浮かべて2人を待つ議長。

キラとフリーダムという最大の障害を討った今、

彼のおもしろ地球大改造計画は進行を早めていきます。

 

「……お久しぶりです、議長」

「先日のメッセージ、感動しました!」

 

2人が呼び出されたのは薄暗い格納庫。

ディオキア基地以来の対面となりましたが、

すっかり議長に心酔しきっているシンとは対照的に、

アスランの表情は彼に対する嫌疑で曇っています。

 

「議長、お話が……」

「アスラ〜ン!」

 

どうしてキラとアークエンジェルを討ったのか。

アスランが議長に問いただそうとすると、

なぜか同席していたミーアが抱きついてきました。

 

「お元気でした?会いたかったですわ〜」

「ああ、うん、あとでね……」

 

柔らかな苺ましまろの感触は名残惜しいですが、

今はミーアと世間話をしている場合ではありません。

アスランは適当にあしらって話を終わらせます。

それよりも議長に言わなければならないことがあります。

 

「さあ、お待ちかねのプレゼントタ〜イム!」

「議長!」

 

アスランを無視して勝手に話を進める議長。

彼の合図と共に薄暗い格納庫にライトが点きます。

 

「ZGMFX42S、デスティニー」

 

そこに現れたのは2機のモビルスーツ。

向かって右に位置するのは、運命の名を冠した機体。

火力、防御力、機動力、信頼性、どっかで見たことある武装。

その全てにおいてインパルスを凌ぐ最強のモビルスーツです。

 

「ZGMFX666S、レジェンド」

 

左に位置するのは、ザフトの新たな伝説を創るべく開発された機体。

この機体の最大の特徴は量子インターフェースの改良により、

誰でも操作できるようになった新世代のドラグーンシステムを搭載。

お子様からお年寄りまで、安心してご使用いただけます。

 

「どちらも従来機を遥かに上回る性能を持った最新鋭の機体だ」

「うわあ……」

 

どちらも工廠が不休で造り上げた自信作。

まだ座席にビニールカバーがかかった新品。

発売前の新型機を前にシンちゃんも大興奮です。

 

「議長……」

「君たちの、新しい機体だよ」

 

どうしてこんなものを造っているんですか。

アスランは議長に抗議の視線を向けますが、

議長は目をそらして説明を続けます。

 

「すっげえ!すっげえ!」

 

目を輝かせて無邪気に喜ぶシンちゃん(16さい)。

お子さんのクリスマスプレゼントに悩んでいる全国のお父さん、

今年のクリスマスはデスティニーのガンプラで決まりです。

 

 

続く。

 

 


ホームページ制作